これまでの構造ベースの創薬は、病原性変異タンパク質への結合親和性が、必ずしも、ヒト体内にける毒性を伴わない安全な機能調節を保証するものではないことから、臨床での失敗率が高いという課題を抱えています。毒性を伴わない創薬には、どの残基が機能または毒性を決定づけているかを理解する必要がありますが、これまでのCRISPR GE技術では十分な解像度が得られませんでした。今回、コロンビア大学アーヴィング医療センターのFalak Sher助教授が率いる研究チームは、この課題解決に向けて、機能をベースとする創薬のための「CRISPRtile」と称する新たなクラウドベースのプラットフォームをbioRxivプレプリントから紹介しています。
CRISPRtileはCRISPR-Cas9を介した飽和変異誘発を活用し、高効率で変異空間を拡大するとともに、ガイドRNAライブラリーのカバレッジの最適化とAIによるガイドRNAに依存するバイアスの補正により、CRISPRスクリーニングにおけるシグナル対ノイズ比の問題を解決しました。これによって、偽陽性などのエラーが従来の構造ベースの手法の3分の1にまで低減し、薬剤相互作用予測の基盤となる、高精度な毒性および機能マップの構築が可能になりました。
CRISPRtileによるマップは、構造ベースの創薬パイプラインにおけるエラーや桁違いに高い計算コストを回避し、毒性を伴わない機能性配列から直接に薬物相互作用のAI予測を可能にします。
研究チームは、CRISPRtileの性能を、生体の恒常性の不全に応答して悪性腫瘍や病原体と戦うIL-1βおよびIL-18のドライバーであるNLRP3で検証しました。この免疫応答はバイスタンダー細胞でDNA二本鎖切断を誘導し、エピジェネティックな乱れ(epigenetic erosion)を加速させ、組織の恒常性を損なうリスクを伴っています。このNLRP3の二面性は、神経変性疾患のリスク因子であるAPOE4多型がメラノーマに対する生存上の利点をもたらす例でよく知られています [Ostendorf BN et al., Nat Med 2020]。また、NLRP3活性の亢進によって、環境中のマイクロプラスチックなどの無菌性ストレス因子に対する炎症反応を介してアルツハイマー病の神経変性を悪化させる例も知られています [Alijagic A et al., Front Immunol. 2023]。
この2例は、特定の標的化を回避するように進化してきた可能性のある悪性腫瘍や病原体を標的とすることと、マイクロプラスチックのような非特異的な恒常性撹乱を感知できることの間で、NLRP3の活性を、状況に応じて調節する必要があることを浮き彫りにしています。ここで問題になるのが、NLRP3阻害剤が毒性のため臨床試験で失敗に終わったこと [Coss R et al., C&EN News 2020]、そして基礎活性化を回避できるNLRP3増幅剤が存在しないことです。
今回、CRISPRtileを利用することで、安全性が確立され、これまで認識されていなかった基礎活性化を誘発することなくNLRP3を阻害または増幅する能力を持つFDA承認薬を特定するに至り、CRISPRtileによって、創薬における安全性のボトルネックを克服で可能なことが示され、同時に、機能をベースとする創薬におけるCRISPRtileの可能性が示されるに至りました。
[出典] "AI platform for CRISPR functional mapping and function-based drug design" Jason C. Ngo (1,2,3), Vivien A.C. Schoonenberg (6), Renu Nandakumar (5), Xuebing Wu (4), and Falak Sher (1,2,3). bioRxiv. 2026-05-11. (preprint) https://doi.org/10.64898/2026.05.06.722817
この2例は、特定の標的化を回避するように進化してきた可能性のある悪性腫瘍や病原体を標的とすることと、マイクロプラスチックのような非特異的な恒常性撹乱を感知できることの間で、NLRP3の活性を、状況に応じて調節する必要があることを浮き彫りにしています。ここで問題になるのが、NLRP3阻害剤が毒性のため臨床試験で失敗に終わったこと [Coss R et al., C&EN News 2020]、そして基礎活性化を回避できるNLRP3増幅剤が存在しないことです。
今回、CRISPRtileを利用することで、安全性が確立され、これまで認識されていなかった基礎活性化を誘発することなくNLRP3を阻害または増幅する能力を持つFDA承認薬を特定するに至り、CRISPRtileによって、創薬における安全性のボトルネックを克服で可能なことが示され、同時に、機能をベースとする創薬におけるCRISPRtileの可能性が示されるに至りました。
[出典] "AI platform for CRISPR functional mapping and function-based drug design" Jason C. Ngo (1,2,3), Vivien A.C. Schoonenberg (6), Renu Nandakumar (5), Xuebing Wu (4), and Falak Sher (1,2,3). bioRxiv. 2026-05-11. (preprint) https://doi.org/10.64898/2026.05.06.722817
- Center for Translational and Computational Neuroimmunology, Columbia University Irving Medical Center, New York, NY USA
- Taub Institute for Research on Alzheimer’s Disease and Aging Brain, Columbia University Irving Medical Center, New York, NY USA
- Department of Neurology, Columbia University Irving Medical Center, New York, NY USA
- Department of Medicine and Department of Systems Biology, Columbia University Irving Medical Center, New York, NY 10032, USA
- Biomarkers Core, Irving Institute for Clinical and Translational Research, Columbia University Irving Medical Center, New York, NY USA
- Division of Hematology/Oncology, Boston Children's Hospital, Harvard Medical School, Boston, MA 02115, USA
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