一本鎖DNA切断(single-strand DNA breaks:SSBs)における複製フォーク崩壊はゲノム安定性を脅かしますが、そのようなフォークがどのように修復・解消されるのかは、明らかになっていません。今回、ヴァンダービルト大学医学部のJames M. Dewar助教授が率いる研究チームが、この課題解決を目指してアフリカツメガエル卵抽出液中で、シンプルなSSBの再現実験を行った結果を、Nature Structural & Molecular Biology 誌刊行論文で、紹介しています。
この実験系は、ヒト細胞の核プロテオームを模倣し、多くのDNA修復経路をサポートし、ヒト細胞で機能するフォーク崩壊メカニズムを再現しています。
この実験系において、リーディング鎖の崩壊またはラギング鎖の崩壊のいずれも、RAD51によって効率的に修復されますが、Dループから生じるジョイント分子や、マイクロホモロジーを含む誤った末端間融合を生成する seDSB(single-ended DNA double-strand break)が誘導されることが分かりました。しかし、単一の崩壊フォークではDNA合成の再開は検出されませんでした。崩壊した単一フォークは、広範なヌクレアーゼ分解を受けることもあり、DSB修復を伴わずに一本鎖DSBを解消する「二次崩壊」事象によって姉妹フォークを分解すると考えられました。
半同期的に2つの複製フォークがSSB部位に向かって両側から収束する(収束的崩壊/convergent fork collapse)場合は、アニーリング依存性DSB修復によってRAD51とは独立して効率的にDNA合成を完了するdeDSB(double-ended DSB)が生成され、正確な欠失とテンプレート挿入に至りました。これらのエラーを起こしやすい産物は、単一フォーク崩壊後には検出されません。
こうして、単一および収束型の崩壊フォークが異なる修復結果を引き起こす可能性があることが示されました。
Cas9ニッカーゼ(H840A nCas9)によって生成されたSSBにおいても同様の結果が得られたことから、これらの知見は、ゲノム編集に関連するCRISPR誘導切断を含む、他のSSB発生源にも当てはまることが示唆されます。
研究チームは最後に、アフリカツメガエル卵抽出液中のSSBにおける複製フォーク崩壊後の修復結果のモデルを提案しています [論文Fig. 8参照;キャプションを除いた図のみ以下に引用]
[複製フォーク動態関連crisp_bio記事]
- 2024-07-30/2026-05-31 Cas9ニッカーゼの戦略的ターゲティングによって大規模なゲノム重複を誘導する;九州大学の伊藤隆司教授が率いる研究チームが、nCas9によるニッキングを介した複製フォークの崩壊を利用して、大規模なゲノム領域の縦列反復を誘導する技術PNAmpに加えて、ゲノム内在の縦列反復構造をさらに伸長させる技術BITRExを、Cell Genomics誌刊行論文で紹介しています。
[出典] "Distinct repair outcomes from single and convergent replication fork collaps" Sara C. Conwell (1) [..] James M. Dewar (1). Nat Struct Mol Biol 2026-05-27. https://doi.org/10.1038/s41594-026-01812-9
- Department of Biochemistry, Vanderbilt University School of Medicine, Nashville, TN, USA.
- Division of Biology and Biological Engineering, California Institute of Technology, Pasadena, CA, USA.
- Department of Biochemistry and Molecular Biology, Medical University of South Carolina, Charleston, SC, USA.

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