大腸菌は、腸内に広く存在する常在菌であるだけでなく、重篤な腸管感染症および腸管外感染症を引き起こす日和見病原菌でもあります。その中で、志賀毒素産生性大腸菌(Shiga toxin–producing E. coli:STEC)は、特に小児において公衆衛生上の大きな脅威となっています。
小児における感染は、血便を呈し、溶血性尿毒症症候群(hemolytic uremic syndrome:HUS)へと進行する可能性があります。HUSは、生命を脅かす状態であり、長期的な合併症を引き起こす可能性があります。
STEC感染症では、抗生物質は、志賀毒素(stx )遺伝子を持つプロファージを誘導し、毒素産生を引き起こす可能性があるために、使用を避けなければなりません。
今回、パリを拠点とするEligo Bioscience社 [*]の研究者達が、Cas12ヌクレアーゼを用いたCRISPRベースの抗菌戦略を開発しました。この戦略により、O157 STEC臨床分離株を選択的に除去し、stx 遺伝子変異体の99%以上を切断することで、毒素放出を阻止することに成功しました。
標的への送達にあたって、バクテリオファージ由来のキャプシドを設計し、非複製型DNAペイロードを大腸菌O157に特異的に転送することで、その拡散を阻止しました。
治療候補薬EB003は、マウスSTECコロニー形成モデルにおいて細菌量を減少させました。さらに、EB003は、幼若ウサギ疾患モデルにおいて、治療に有効な用量で臨床症状を緩和し、Stx媒介毒性を抑制し、上皮修復を促進しました。
これらの知見は、CRISPRベースの抗菌薬がSTEC感染症の治療に有効であることを示しており、抗生物質耐性細菌病原体に対する精密治療薬としてEB003のさらなる臨床開発を支持するものです。
[*] パリを拠点とするEligo Bioscienceは、特定の細菌に特異的であり、また、最近のDNA二本鎖を切断するCRISPR-Casシステムを送達するファージ療法を、"microbiome gene therapy"として研究開発を進めています。
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[出典] "Treatment of Shiga toxin–producing E. coli infection by CRISPR-Cas–targeted cleavage of the Shiga toxin gene in animal models" Matthieu Galtier (1), Antonina Krawczyk (1) [..] Xavier Duportet (1), David Bikard (1,2), Jesus Fernandez-Rodriguez (1). Sci Transl Med 2026-05-27. https://doi.org/10.1126/scitranslmed.adw8114
- Eligo Bioscience, 75013 Paris, France.
- Institut Pasteur, Université Paris Cité, Synthetic Biology, 75015 Paris, France.
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