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 CRISPR-Cas13d RNAヌクレアーゼは、プログラム可能なRNAターゲティングのための強力なツールです。さらに、時空間的制御を可能にすることでCas13dシステムは、細胞内でのRNAの動態を把握し操作するための強力なツールになります。また、活性なCas13dの濃度をより精密に制御することで、コラテラル切断活性ひいては細胞毒性を抑制できる可能性があります。それは、Cas13dもトランス切断活性、すなわち目的の転写産物以外のRNAを切断する活性(コラテラス切断活性)、を示すことが、最近、明らかにされたからです [crisp_bio 2025-02-19]
 光で制御するRNAヌクレアーゼは、細胞や組織内の目的の位置、あるいは関心のある時点で、転写産物を選択的にノックダウンすることを可能にすることで、画期的な進歩をもたらす可能性があります。プリンストン大学を主とする研究チームは今回、光による制御に加えて、低分子化合物の添加による制御も実現し、マルチモード制御可能なRfxCas13dツール群を開発しました。
 研究チームは、DIP-seq(domain-insertion profiling with DNA sequencing)と呼ばれる手法を介して [DIP-seqの詳細を補足の項で詳述]、RfxCas13dにおいて、光応答ドメインまたは低分子応答ドメインドを挿入することで、RfxCas13dの活性を光および低分子によってアロステリックに制御することが可能になる単一の部位(アロステリック・ホットスポット)を同定しました。
 その上で、AsLOV2挿入によるOptoCas13d-off(暗所で活性、光照射下で不活性)、LightR挿入による光活性化型変異体OptoCas13d-on(青色光照射下で活性、暗所で不活性)、およびUniRapR挿入によるラパマイシン誘導型変異体ChemoCas13d(を開発するに至りました [Figure 3引用下図参照]。
Multimodal control of Cas13d Figure 3
 さらに、Cas13dのコラテラル活性による細胞毒性を十分に抑制するRfxCas13dの発現レベルを特定し、いずれのCas13d変異体も安定した細胞株環境で、高品質な刺激応答性制御を示すことが、確認されました。なお、ChemoCas13と比較して、OptoCas13d-onを用いた場合の方が、内因性遺伝子のノックダウンがより再現性が高く、強力であったことから、ラパマイシン制御システムにはさらなる改善の余地があることが示唆されました。
 研究チームは、OptoCas13のスイッチ機構を解明するために、in vitroでの生化学的アッセイを実施したところ、光遺伝学的刺激がOptoCas13、crRNA、および標的RNAの三元複合体形成に僅かではあるが再現性のある変化が生じすることが示唆される結果が得られました。これは、光遺伝学的刺激が、三元複合体形成に加えてRNAヌクレアーゼ活性にも影響を与えた可能性が高いことを示唆しています。
 光遺伝学的および化学的に誘導可能なCas13dタンパク質のアイデアは、他の研究者によっても検討されてきました [#1〜3]  。注目すべきは、これらのシステムは誘導性二量体化に基づいており、スプリットされたPspCas13bまたはRfxCas13dタンパク質を再構成して活性を回復させるものでしたが、いずれも、全長Cas13d酵素で達成されるような光制御によるRNA分解は、報告されていませんでした。また、スプリット・システムには、誘導性二量体化がない場合にはリーキー活性が生じ、再構成後の酵素活性も低くなる可能性があります。アロステリック制御のためのドメイン挿入部位を特定・利用する今回のアプローチは、光または薬剤誘導性の酵素活性を示す変異体を生成するのに極めて効果的であり、この汎用性により、エンドユーザーは、複数の刺激様式の有無にかかわらず、目的のRNAをノックダウンすることが可能になります。
 将来、OptoCas13dを用いて、細胞周期の進行、軸索RNA輸送、発生遺伝子発現など、必須または厳密に制御された細胞プロセスを、高い空間的・時間的精度で制御・操作することが期待されます。また、ウイルスと宿主の相互作用における感染細胞のサブポピュレーションの調査など、生物学的プロセスを研究するためにも利用できるでしょう。scRNA-seqをベースにした遺伝子制御ネットワーク研究における時空間分解能を向上させることにも適用できるでしょう。
[補足] RfxCas13d-AsLOV2ランダム挿入ライブラリーからのアロステリックホットスポット同定 [Figure 1引用右下図参照]
Multimodal control of Cas13d Figure 1 研究チームはまず、RfxCas13dタンパク質骨格へのAsLOV2挿入の包括的なライブラリーを構築し、哺乳類細胞におけるRNAノックダウンに対するこのライブラリーの有効性を試験するための細胞株を確立しました[Figure 1引用右図 a, b 参照]。
 ライブラリー構築には、ランダムドメイン挿入ライブラリーを作成するための広く用いられている手法、DIP-seq [Figure 1 c 参照;Nadler DC et al., Nat Commun 2016] が採用されました。オリジナルのDIP-seqでは、Muトランスポザーゼを用いて、クロラムフェニコール耐性(CmR)遺伝子を目的のタンパク質をコードする標的遺伝子にランダムに挿入します。クロラムフェニコール耐性ライブラリーは、発現ベクターに挿入され、その後、CmRが目的のドメインに置き換えられます。研究チームは、元のDIP-Seqプロトコルを改変し、小さなドメインを大きな標的タンパク質に挿入する場合や、デスティネーションベクターにBsaI部位が存在する場合に対応するように最適化しました。 
 AsLOV2が挿入されたRfxCas13d変異体のライブラリーを最終的なランディングパッド組換えベクターに組み込んだ後、次世代DNAシーケンシングを行ったところ、ライブラリーは可能な挿入部位の少なくとも91%をカバーしていました [Figure 1 d参照]。こうして得られたライブラリーを、二次スクリーニングのためにレポーター細胞株に組み込ました。
 次に、HEK293Tランディングパッドレポーター細胞株を作製し、EGFPノックダウンによってRfxCas13dの活性を評価できるようにしました。これにより、蛍光活性化セルソーティング(FACS)を用いてRfxCas13dライブラリー変異体の測定とスクリーニングが可能になりました [Figure 1 e 参照]。レポーター細胞株は、恒常的に発現する不安定化EGFPレポーター(EGFP-PEST)とEGFP mRNAを標的とするCRISPR RNA(crGFP)の両方を含むように構築されており、機能的なRfxCas13d変異体を導入することで、EGFP mRNAを切断し、細胞全体のEGFP発現を抑制できるように設定されています。
 このランディングパッド細胞株を用いることで、RfxCas13d挿入変異体のプール型ライブラリーを作製することが可能となり、各細胞は細胞内の特定のゲノム領域から単一の変異体を発現します。
 トランスフェクション後にmCherry陽性かつBFP陰性の細胞を選別することで、
ランディングパッドの組み込みに成功した細胞のみを濃縮することができました。RfxCas13dを発現するレポーター細胞では、非標的crRNAを発現する類似細胞株と比較して、EGFPの発現量が約100分の1に減少することが観察されました。これは、この細胞株においてRfxCas13d/crRNAによるEGFPの強力な分解が起こっていたことと整合します [Figure 1 f 参照]。
   [#] 引用crisp_bio記事
[出典] "Multimodal control of Cas13d activity through domain insertion at an allosteric hotspot" Liyuan Zhu (1,7), Long T. Nguyen (2,7) [..] Cameron Myhrvold (1,2,3,6,8), Jared E. Toettcher (2,3,8). Nat Commun. 2026-06-03. https://doi.org/10.1038/s41467-026-73645-5
  1. Department of Chemistry, Princeton University, Princeton NJ, USA
  2. Omenn-Darling Bioengineering Institute, Princeton University, Princeton NJ, USA
  3. Department of Molecular Biology, Princeton University, Princeton NJ, USA
  4. Photobiochemistry Group, Department of Chemistry, University of Bayreuth, Bayreuth, Germany
  5. Lewis Sigler Institute for Integrative Genomics, Princeton University, Princeton, NJ, USA
  6. Department of Chemical and Biological Engineering, Princeton University, Princeton NJ, USA
  7. These authors contributed equally.
  8. Co-corresponding authors.
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