新潟薬科大学の髙久洋暁教授をはじめとする同大学、, 長岡技術科学大学, 並びに不二製油の研究チームが、FEBS Yeast Research 誌刊行論文において、SpyCas9をベースにしたLipomyces starkeyi のGEプラットフォームを確立したことが紹介されています。
L. starkeyi は、菌体内に乾燥重量の約 60 〜 80 %という高濃度の油脂を蓄積する能力を帯びている油性酵母でありバイオ燃料の微生物工場として期待されています。その中で、髙久洋暁教授の研究チームは、日清食品と共同で、環境負荷の高いパーム油に変えて L. starkeyi 由来の油を使った湯揚げ麺を2022年の農芸化学会で発表しています [日清食品ホールディングスお知らせ 2022-03-14]。これには、紫外線照射により突然変異を誘発する育種によって樹立した油脂高蓄積変異株が利用されました [第25回日本生物工学会大会 Topics of 2023]。
研究チームは今回、SV40 核局在シグナルに融合させたコドン最適化 SpyCas9 を発現させることにより、L. starkeyi 用の CRISPR/Cas9 ゲノム編集プラットフォームを確立し、UV照射では不可能であったプログラムされた変異誘発を可能にしました。これまで L. starkeyi のゲノム編集は、遺伝子ターゲティング効率の低さと長い相同領域の必要性によって制約されていました。
このプラットフォームでは、in vitro 転写されたsgRNAを L. starkeyi に直接導入することで、内因性 RNA ポリメラーゼ III 依存性 sgRNA 発現の必要性を排除したことも特徴になっています。PolIIプロモーターはモデル酵母では定番ですが、非モデル酵母一般では検証されていません。
CRISPR/Cas9 活性は、コドン最適化GFP レポーターを用いて検証しました。その結果、フレームシフト変異の生成を介してGFP が破壊され、蛍光が消失することで確認されました。
LsURA3 遺伝子座での遺伝子置換は、ドナー・テンプレートの相同領域のサイズを50~3000 bp の範囲で変えながら比較評価しました。 Cas9を発現する野生型株では、正確な遺伝子置換は相同アームの長さに依存し、50 bpのアームでは36%であったのに対し、3000 bpのアームでは80%に増加しました。特筆すべきことに、非相同末端結合(NHEJ)が抑制されたCas9発現Δlslig4株では、CRISPR/Cas9依存条件下で50 bpの相同アームを用いて100%の精度で正確な遺伝子置換が達成されました。
こうして、Pol III非依存のCRISPR/Cas9システムとNHEJ抑制を組み合わせることで、L. starkeyi における正確なゲノム編集が可能となり、機能ゲノミクスおよび代謝工学の基盤となることが示されました。
[参考]
[参考]
- 微生物あれこれ(13)油脂生産酵母 Lipomyces. 山崎敦史. NBRCニュース No. 16(2012.8.1)https://www.nite.go.jp/nbrc/cultures/others/nbrcnews/news_vol16.htmlc
[出典] "A CRISPR/Cas9-based genome-editing platform enabling efficient and precise gene replacement in Lipomyces starkeyi" Rikako Sato (1) [..] Hiroaki Takaku (1,4) [+6]. FEMS Yeast Res. 2026-01-05. https://doi.org/10.1093/femsyr/foag014
- Department of Applied Life Sciences, Niigata University of Pharmacy and Medical and Life Sciences, Akiha-ku, Niigata 956-8603, Japan
- Research Institute for Creating the Future, FUJI OIL Co., Ltd, Tsukubamirai-shi, Ibaraki 300-2497, Japan
- Department of Bioengineering, Nagaoka University of Technology, Nagaoka, Niigata 940-2188, Japan
- Corresponding author
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