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 mRNAの局在化は、タンパク質が細胞内の然るべき領域で然るべき機能を発揮させる進化的に保存されているメカニズムであり、胚発生パターン形成からシナプス可塑性まで、多くの基本的生物学的プロセスを支えています。この局在化は、ZIPコードと呼ばれることもある [Chekulaeva M.,  Nat Cell Biol 2024 https://doi.org/10.1038/s41556-024-01444-5] mRNA上の「局在化シグナル (localization signals)」とRNA結合タンパク質(RBP)との相互作用によって媒介されることが示唆されています。しかし、この仮説は、限られたmRNAについての研究に基づいていて、ほとんどのmRNAにZIPコードに相当するような明確な配列モチーフや構造パターンが見当たらないことから、特定のmRNAを然るべき領域へと輸送する特異性がどのように達成されるのかは、長年、謎のままでした。
 英国MRC分子生物学研究所の研究チームは、その謎を解明することを目指して、クライオ電顕法を介して、ショウジョウバエのRBPであるEgalitarian(Egl)とそのアダプタータンパク質であるBicaudal D(BicD)が6種類の局在化RNAのTLS(transport and localization signal / 輸送および局在化シグナル)に結合した構造を解明・比較しました。[後述の「Egl–BicD–TLS 複合体の構造」の項参照]
 Egl-BicD複合体は、TLS を認識してmRNAに結合し、細胞内の輸送モーターであるダイニン・ダイナクチン複合体を活性化・連結して標的mRNAを輸送します。今回、研究チームは、クライオ電顕法による構造再構成に加えて、輸送アッセイも行って、カーゴであるmRNAの選択を制御するZIPコードの実体を明らかにしました。

[Egl–BicD–TLS 複合体の構造] Fig. 1引用下図参照
Structural basis for recognition  Fig. 1
 Eglは1,004アミノ酸からなるタンパク質で、最初の814残基が局在シグナルへの特異的結合に必須です。AlphaFold2で予測した構造では、RNA結合領域が5つの折り畳まれたドメインから構成されている [Fig. 1引用の a と b 参照]。N末端には3つのEglドメイン(ED1~ED3)があり、代表的なDNA結合ドメインの一つである翼状 (winged) ヘリックス・ターン・ヘリックス様の構造をとっています。Eglオルソログの配列比較から、ED1とED2は種間でよく保存されているのに対し、ED3は比較的多様性が高いことが明らかになりました。EDsに続いて、3'–5'エキソヌクレアーゼ相同ドメイン(ExoHD)とC末端四重らせん領域(exonuclease-adjacent domain: XAD)からなる保存モジュールが並んでいます。個々のEDとExoHD–XADモジュールは、配列保存性の低い柔軟なリンカーによって連結されています。
 Eglがどのように標的を認識するのかを解明するため、研究チームは、ショウジョウバエfs(1)K10 mRNAの44ヌクレオチドからなるTLS に結合した精製Egl–BicD複合体のクライオ電顕構造を決定しました。
 これにより、2 つの TLS ステムループ [Fig. 1引用図 c の黄色の螺旋参照] が 2 つの Egl 分子によって BicD の C 末端コイルドコイル (CC3). [Fig. 1引用図 c の二本の緑のコイル]にリクルートされることが明らかになりました。この CC3は、BicD タンパク質の中で、構造解析で解明された唯一の領域です。
 Egl の各コピーは、ED1 を介して BicD コイルドコイルの反対側の面に結合します [Fig. 1引用図の c における赤紫の部分]。ED1 はまた、ED2、ExoHD、および XAD を含む RNA 結合ポケットの一部として TLS と接触します [Fig. 1引用図 c の左右]。RNA と接触するすべての残基は、特に ED1、ED2、および XAD においてよく保存されていますが、ED3 はクライオ電顕では確認できず、TLSとは安定して接触していないことが示唆されました。驚くべきことに、各ポケット内で、TLS は異なる Egl ポリペプチドの ED1 および ED2 によって結合されています。これは、ED1とED2の間に柔軟なリンカーが存在することから可能になったことですが、EglのRNA結合には2つのEgl分子が必要であり、TLS が輸送を活性化するEglの二量体形態を安定化させていることを、示しています。

[ZIPコードの実体は]
 EgIが然るべきRNAを特異的に認識するメカニズは、特定の配列のモチーフや構造のパターンのいずれかに依存するものではありません。
 EgIのED1とED2が協働してTLS の周囲に特異的に設計されるTLS 認識ポケットを形成し、TLS は、長さや配列に大きなばらつきがあるにもかかわらず、それぞれ湾曲したステムループ構造(bent stem-loop)をとり、Eglの側鎖がステムループ構造の二本鎖部分の2箇所の塩基対を検証します。すなわち、Eglは、TLSの構造パターンと、そのパターンを形成している塩基対の化学的特徴の組み合わせという高次な「コード」を読み取って反応するという、非標準的な二本鎖RNA結合メカニズムに依存していました。
 さらに、Egl二量体が同一のmRNA転写産物内の2つの異なる構造化されたステムループ要素(bent stem-loop)を同時に検出・結合することで、(ようやく)、BicDの活性化、ダイニンのリクルート、そしてカーゴmRNAの輸送が始まります。このメカニズムにより、忠実度が劇的に向上します。
[構造情報] PDBj / EM Navigator
  • PDB 9RVY  /  EMD-54292 (Egl–BicD–TLS structure A)
  • PDB 9RVZ  /  EMD-54293 (Egl–BicD–TLS structure B)
  • PDB 9RW0  /  EMD-54294 (Egl–BicD–TLS structure C)
  • PDB 9RW1  /  EMD-54295 (Egl–BicD–TLS structure D)
  • PDB 9RW2  /  EMD-54296 (Egl–BicD–TLS structure E)
  • PDB 9RW3  /  EMD-54297 (Egl–BicD–hSL structure A)
  • PDB 9RW4  /  EMD-54298 (Egl–BicD–hSL1 structure B)
  • PDB 9RW5  /  EMD-54299 (Egl–BicD–hSL1 structure C)
  • PDB 9RWB  /  EMD-54306 (Egl–BicD–hSL1-hSL2)
  • PDB 9RW6  /  EMD-54300 (Egl–BicD–ILS structure A)
  • - - - - - - - - -  /  EMD-54301 (Egl–BicD–ILS structure B)
  • PDB 9RW7  /  EMD-54302 (Egl–BicD–bcdSLV structure A)
  • PDB 9RW8  /  EMD-54303 (Egl–BicD–bcdSLV structure B)
  • PDB 9RW9  /  EMD-54304 (Egl–BicD–bcdSLV structure C)
  • PDB 9RWA  /  EMD-54305 (Egl–BicD–GLS
[出典] 
  1. Université Côte d’Azur, CNRS, Inserm, Institut de Biologie Valrose, Nice, France
  2. Research Department of Structural and Molecular Biology, University College London, London, UK
  • 論文 "Structural basis for recognition of diverse localizing mRNAs by Egl–BicD" Kashish Singh (1,3), Sabila Chilaeva (2,3), Mark A. McClintock (2,3,4), Andrew P. Carter (1,4), Simon L. Bullock (2,4). Nat Struct Mol Biol. 2026-05-05. https://doi.org/10.1038/s41594-026-01794-8
  1. Division of Structural Studies, MRC Laboratory of Molecular Biology, Cambridge, UK. 
  2. Division of Cell Biology, MRC Laboratory of Molecular Biology,Cambridge, UK. 
  3. These authors contributed equally
  4. Co-corresponding authors
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