この記事は、ケニア出身で現在コロラド州立大学のエクステンション・プロフェッサーであるBonface Ombasa Manono博士が率いるケニアのKisii大学と海洋水産研究所の研究者達のチームによるレビューを紹介しています。
世界的な食料生産システムは、人口増加、気候変動、水不足、環境悪化といった課題に直面しており、持続可能かつ資源効率の高い食料生産戦略が求められています。この記事の標題にあるアクアポニックス・システム(Aquaponic Systems)は、栄養塩の再利用や水利用効率の向上を可能にし、CRISPR/Cas9 GE技術は、経済的に重要な養殖魚の形質を精密に改良することを可能にします。
このレビューは、具体的にナイルティラピア(Oreochromis niloticus)を重点に置いて、養殖分野におけるCRISPR/Cas9応用の現状を分析しています。
査読付き研究論文から得られた知見によれば、成長制御、耐病性、栄養代謝、飼料効率、ストレス耐性に関連する遺伝子を標的として改変することで、魚類の生産性や生理的な回復力を著しく向上させることが可能になっています。低酸素適応や窒素代謝に関与する遺伝子の改変は、アンモニア蓄積の低減や栄養利用の促進を通じて、高密度循環式システムにおける環境適合性をさらに高める可能性があります。
しかし、これまでのゲノム編集研究の多くは、実験室やアクアポニックス・システムが登場する以前からの養殖条件下で実施されており、アクアポニックス環境下におけるゲノム編集魚の長期的なパフォーマンス、生態学的相互作用、微生物動態、および生物学的安全性に関する情報は限られています。
また、オフターゲット効果、モザイク現象、導入効率、規制上の不確実性、一般社会の受容性といった技術的・社会的制約が、大規模な導入を妨げ続けています。
短期的には、CRISPR/Cas9の応用は管理された養殖システム下での実用的な形質改良に焦点が当てられると考えられますが、長期的には、栄養循環、環境への適応力、そして統合型アクアポニックスの持続可能性に特化して最適化された魚種系統の開発が進められる可能性があります。
総じて、CRISPR/Cas9を用いたゲノム編集は、持続可能な養殖およびアクアポニックスによる食料生産システムを改善するための、有望かつ発展途上の戦略であると言えます。
[注] ナイルティラピアは、世界各国で食用とされています。日本にも食用魚として導入され、スミダイとして流通したこともあったようですが、食用魚としては定着せず、店頭ではほとんど見かけられないとのことです [Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/ティラピア]。しかし、沖縄の川では繁殖しているようです [外来種「ティラピア」が食用魚にならなかった理由を食べて考える. DEE okinawa. 2019-12-06]
[出典] "CRISPR/Cas9-Mediated Genetic Optimization of Nile Tilapia (Oreochromis niloticus) for Sustainable Aquaponic Systems" Zipporah M. Gichan (1), Bonface O. Manono (2,5), Eric O. Omwenga (3), Kobingi Nyakeya (1,4). Aquacuture. 2026-06-14. https://doi.org/10.3390/aquacj6020021
- Department of Environment, Natural Resources and Aquatic Sciences, Kisii University, Kisii P.O Box 408-40200, Kenya
- Colorado State University Extension, Fort Collins, CO 80523, USA
- Department of Medical Microbiology and Parasitology, Kisii University, Kisii P.O. Box 408-40200, Kenya
- Kenya Marine and Fisheries Research Institute (KMFRI), Baringo Station, Marigat P.O Box 231, Kenya
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