CRISPR-Cas9システムは、ガイドRNAとの塩基対形成およびプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の認識を通じて標的を特定します。PAMの特異性は塩基配列によって決まりますが、DNAのトポロジー(高次構造)がPAM要件を緩和し、タイプII-C Cas9である Alicyclobacillus tengchongensis 由来Cas9(AtCas9)による「PAM非依存的(near-PAMless)」な切断を可能にすることがあります [#:今回紹介論文の武漢大学のYing Zhang教授が率いる研究チームの2022年 Molecular Cell 誌刊行論文]。
研究チームは今回、AtCas9がほぼPAMレスの活性を示す構造基盤を明らかにしたことを、Nature Structural & Molecular Biology 誌から報告しています。
研究チームは今回、AtCas9がほぼPAMレスの活性を示す構造基盤を明らかにしたことを、Nature Structural & Molecular Biology 誌から報告しています。
研究チームは、細胞内で最も一般的な構造のB型DNA、あるいは野生型または変異型PAMを含む340 bpのアンダーワインド(ねじれ不足)ミニサークルDNAと結合したAtCas9のクライオ電子顕微鏡(cryo-EM)構造を再構成しました。その結果、PAM配列の違いにかかわらず、アンダーワインドDNAと結合した3つの複合体はすべて、B型DNA結合状態とは異なる、ほぼ同一の構造をとることが明らかになりました。
B型DNA上では、AtCas9は塩基特異的な水素結合と立体障害を介してPAMを認識し、N4CNNNおよびN4RNNA(R = A/G)という配列を優先的に認識します。対照的に、アンダーワインドDNAではPAM領域の主溝が広がり、配列非依存的なDNA骨格との接触が促進されます。このため、アンダーワインドDNAでは、AtCas9によるPAM非依存的な切断が可能になると考えられました。
AtCas9で見られたPI(PAM-Interacting Domain)ドメインのループがDNAの主溝にドッキングする機構はタイプII-C CRISPR Cas9オーソログ間で保存されており、DNAトポロジーに対する感受性は、多くのタイプII-C 酵素に見られるPAM要件の緩和と、アンダーワインドDNAがPAM認識をほとんど必要としない切断を可能にする傾向の両方を説明しうると考えられます。このようなPAM認識の緩和の例として、NNNVRYMというPAM配列を許容するCjCas9や、N4CNNNというPAMを認識する改変型iGeoCas9が挙げられ、これらはタイプII-Cヌクレアーゼにおいてループのドッキングがいかに多様なPAM配列に対応できるかを示しています。
今回、トポロジーに依存したPAM認識メカニズムが存在することが明らかになり、また、生体内に近いトポロジー状態で構造解析を行うための、アンダーワインド・ミニサークルDNAを用いたcryo-EM解析プラットフォームが確立されるに至りました。
[#] 引用crisp_bio記事
[構造情報] EMD https://pdbj.org/emnavi//;PDB https://pdbj.org/
- EMD-65812 /PDB 9WAD dAtCas9‒sgRNA‒B-form DNA complex
- EMD-67605 / PDB 21DZ dAtCas9‒sgRNA‒underwound DNA complex (CATA PAM)
- EMD-67606 / PDB 21EA dAtCas9‒sgRNA‒underwound DNA complex (TATA PAM)
- EMD-65811 / PDB 9WAC dAtCas9‒sgRNA‒underwound DNA complex (TTGA PAM)
[出典] "Structural basis of AtCas9 recognition of PAM mutants in underwound DNA topology" Min Duan (1,4,5), Bing Meng (2,4), Lei Zhou (1,4) [..] Ying Zhang (1,3,5) [+5]. Nat Struct Mol Biol, 2026-06-24. https://doi.org/10.1038/s41594-026-01831-6
- Department of Rheumatology and Immunology, Medical Research Institute, Frontier Science Center for Immunology and Metabolism, Zhongnan Hospital of Wuhan University, State Key Laboratory of Virology and Biosafety, Wuhan University, Wuhan, China.
- iHuman Institute, ShanghaiTech University, Shanghai, China.
- TaiKang Centre for Life and Medical Sciences, RNA Institute, Hubei Key Laboratory of Cell Homeostasis, Wuhan University, Wuhan, China.
- These authors contributed equally
- Co-corresponding authors
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