2026-07-02 ブログ記事タイトルを改訂しました。旧タイトルは「単一ラウンドのハイスループット実験からのデータを機械学習の学習用に利用するという戦略を取ることで, よりコンパクトでより高精度な塩基エディターを創出しました」でした。
2026-06-30 初稿
- ヨハネス・ケプラー大学のGünter Klambauer教授とUCB社米国拠点のTyson Bowen主任研究員が共同責任者となっているNucleic Acids Research 誌刊行論文から
- ヨハネス・ケプラー大学のGünter Klambauer教授とUCB社米国拠点のTyson Bowen主任研究員が共同責任者となっているNucleic Acids Research 誌刊行論文から
[背 景]
DNA二本鎖を切断することなく正確な一塩基置換を可能にした塩基エディターは、触媒不活性型のdCas9またはニッカーゼ型のCas9n、脱アミノ化酵素(デアミナーゼ)、そしてガイドRNA(sgRNA)で組み立てられています。このため、ガイドRNAに依存するオフターゲット編集に加えて、デアミナーゼに由来するガイドRNAに依存しないオフターゲット編集、目指す塩基以外の塩基への置換(オフベース編集)、および、編集可能ウィンドウ内の標的塩基近傍の意図しない塩基への編集(バイスタンダー編集)といった望ましくない編集を伴うことが課題になっています。
現在利用されているデアミナーゼは、DNA標的化活性は高いがサイズの大きな真核生物由来デアミナーゼか、あるいは、コンパクトですがオフベース編集が生じやすい大腸菌(Escherichia coli )由来TadAタンパク質(ecTadA)を改変した(進化させた)バリアントが利用されています。
バリアント生成に利用されてきた指向性進化法には、ランダム変異導入と選別のラウンドを何度も繰り返す必要があり莫大な時間とコストがかかることや、導入可能な変異に偏りがあるなど、多様性に限界があるなどの弱点がありました。
[成 果]
研究チームはまず、E. coli由来のecTadAだけでなく、他の7種類の最近由来のTadAの配列を相同配列検索と解析を経て同定した新たなTadAオーソログ95種類を出発点として、改変型デアミナーゼであるABE8eまたはTadA-CDdにおいて有効性が実証された変異と相同な変異を導入する合理的改変を施した後、単一ラウンドのDNAシャフリングを施し、数百万のユニークな配列を獲得しました。 [グラフィカルアブストラクト引用した下図の左端のボックス左上参照]。
次に、膨大な候補配列を対象にして、正確な濃縮度(選択スクリーニング後の配列の存在比率/選択前の配列の存在比率)と適応度を算出するために、ベースラインとなるデアミナーゼ活性のスクリーニングが行われました。このスクリーニングにあたっては、8種類のTadAsから出発したことと合わせて、偏りを排除するために、dSpyCas9だけではなく、HoCas9と今回新たにin silicoで同定したCas12fの不活性化版をエースとするエディターも対象とされました。
次に、膨大な候補配列を対象にして、正確な濃縮度(選択スクリーニング後の配列の存在比率/選択前の配列の存在比率)と適応度を算出するために、ベースラインとなるデアミナーゼ活性のスクリーニングが行われました。このスクリーニングにあたっては、8種類のTadAsから出発したことと合わせて、偏りを排除するために、dSpyCas9だけではなく、HoCas9と今回新たにin silicoで同定したCas12fの不活性化版をエースとするエディターも対象とされました。
この戦略により、ランダム変異導入法と比較してより広範な配列空間を対象とした改変体の作成・試験が可能になると同時に、活性を維持する可能性が高いタンパク質配列領域を豊富に含む変異体群を生成することができました。
このスクリーニングから得られたデータを利用して、新たなタンパク質やタンパク質の変異を提案する生成深層学習モデルを訓練し、与えられたタンパク質配列に基づいて活性や適応度を予測するスコアリング関数を計算し、スコアリング関数による予測の信頼性に関する情報を提供する不確実性推定アルゴリズムを適用し、計算機上でのバーチャルスクリーニングが実施されました [グラフィカルアブストラクト引用した上図の中央のボックス参照]。
このスクリーニングから得られたデータを利用して、新たなタンパク質やタンパク質の変異を提案する生成深層学習モデルを訓練し、与えられたタンパク質配列に基づいて活性や適応度を予測するスコアリング関数を計算し、スコアリング関数による予測の信頼性に関する情報を提供する不確実性推定アルゴリズムを適用し、計算機上でのバーチャルスクリーニングが実施されました [グラフィカルアブストラクト引用した上図の中央のボックス参照]。
バーチャルスクリーニングの結果、アデノシンおよびシトシンの脱アミノ化反応において予測活性が最も高い28種類の多様な配列が選出され、それらについて塩基編集能、特にオンターゲット活性およびオフターゲット活性に関するさらなる試験と特性解析が行われました。
こうして得られたデアミナーゼは、これまでに報告されたでは、あるいは従来の手法で進化・改変されてきたあらゆる遺伝子編集酵素とは異なる配列特性を持ちつつ、同等のオンターゲット活性を示し、オフベース編集やCas非依存的なオフターゲット編集の活性が著しく低減していました。[グラフィカルアブストラクト引用した上図右端参照]
加えて、今回得られた新たなシトシンデアミナーゼは、単一のアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターで容易に送達可能にほどコンパクトになっています。構造解析の結果、生成モデルが酵素の末端αヘリックスにおける機能的な短縮部位を見出したことが明らかになりました。
[出典] "Machine learning-driven optimization of specific, compact, and efficient base editors via single-round diversification" Mykyta Ielanskyi (1,4), Meng Wang (2,4) [..] Günter Klambauer (1,5), Tyson Bowen (3,5) [+8] Nucleic Acids Res. 2026-06-24. https://doi.org/10.1093/nar/gkag545
- ELLIS Unit Linz and LIT AI Lab, Institute for Machine Learning, Johannes Kepler University Linz, 4040 Linz, Austria.
- UCB, Cambridge, MA 02140, United States.
- UCB, Durham, NC 27709, United States.
- Joint First Authors.
- Co-corresponding authors/Joint Last Authors

コメント