crisp_bio

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 ハーバード大学幹細胞・再生生物学部門(HSCRB)のFernando D. Camargo教授(ボストンこども病院兼任)とFei Chen准教授(ブロード研究所兼任)が共同責任著者となっている Cell Stem Cell 誌刊行論文を紹介します。

[SPACE-seq開発の経緯]
 SPACE-seqは、「spatial tracing enabled by CRISPR-based barcodes and slide-seq(CRISPRベースのバーコードとSlide-seqによる空間的追跡)」に由来する命名です。
 Camargo教授が率いる研究チームはこれまでに、細胞系譜研究分野において、CRISPR-Cas9 GEを利用して生体内での細胞系譜の追跡を可能にしたマウスモデルであるCALIN(CRISPR Array Repair Lineage Intracing)[crisp_bio 2019-05-16/2020-05-16]と、その拡張版であるDARLIN(Dynamic And Robust Lineage Tracing [crisp_bio 2013-11-12] を樹立してきました。SPACE-seqはそのDARLINのバーコーディングを採用しています。
 SPACE-seqの由来に含まれているslide-seqは、Fei Chen准教授がブロード研究所・マサチューセッツ総合病院兼任のEvan Z. Macosko教授との共同責任著者として Science 誌刊行論文 [crisp_bio 2019-06-25/2021-04-01] で報告した生体内での位置と全遺伝子の発現プロファイル/細胞型とを紐づける空間トランスクリプトミクスのツールですが、SPACE-seqでは、オリジナルのSlide-seqの高性能版Slide-seqV2 [crisp_bio 2019-06-25/2021-04-01が使われています。
 SPACE-seqは、こうして、DALIN由来の各細胞が継承可能な細胞系譜バーコードと共にSlideSeq由来の生体組織内での空間座標とトランスクリプトームプロファイルを読み出しとして、空間位置、細胞状態(トランスクリプトーム)、および細胞系譜の統合的解析を実現しました [グラフィカルアブストラクト左側参照]

[SPACE-seqで実現されたこと] - 
グラフィカルアブストラクト右側参照
  • 腫瘍内の多様化:SPACE-seqによって、10μmの解像度で全トランスクリプトームと空間座標の双方を捉えられるようになったことで、NRAS/p53駆動型の肝内胆管がん(intrahepatic Cholangiocarcinoma: iCCA)モデルを追跡することで、全く同じ系譜クローン由来の腫瘍細胞が、微小環境に応じて異なるトランスクリプトーム状態へと多様化することが明らかになりました。 これは、腫瘍の不均一性を生み出す要因が、異なる起源細胞の存在ではなく、細胞の可塑性にあることを裏付けています。
  • 腫瘍と間質のクロストーク:クローン性腫瘍細胞が活性化肝星細胞(HSC)と相互作用する双方向のフィードバックループが特定されました。腫瘍由来の局所シグナルが間質の拡大を制御する一方で、間質もまた腫瘍の悪性挙動を相互的に形成します。その中で、腫瘍由来のセレノプロテインP(SELENOP)が線維化抑制因子として機能することが明らかになりました。このSELEOP-HSC相互作用軸はマウスモデルで機能的に検証され、ヒトの胆管癌およびNAFLD(非アルコール性脂肪肝疾患)のデータセットとの関連も示されました。
  • 肝臓のパターン形成における発生時期:肝芽細胞が広範囲に拡散し、肝葉構造の原型となる空間ドメインを確立する特定の発生時期(マウスではE12.0以前)が明らかになりました。これは、肝葉形成に関する従来の仮説に異議を唱えるものです。
  • 3D系譜再構築:連続する組織切片を統合して3D系譜マップを再構築する手法を実証しました。マウス大脳皮質の各層において、高度に組織化された明確なクローン構造および空間的クラスター形成パターンが明らかになりました。
 こうして、SPACE-seqによって、生物学における長年の課題、すなわち生体内(in situ)の組織内で細胞系譜、転写状態、空間的位置を同時に追跡することが、可能になりました。
 [Camargoチームの関連先行研究紹介crisp_bio記事]
[出典] "SPACE-seq integrates spatial transcriptomics and lineage tracing in native tissues" Yuemeng Jia(1,2,5), Dawei Sun (2,3,5) [..] Fei Chen (2,3,6), Fernando D. Camargo (1,2,6) [+7]. Cell Stem Cell. 2026-06-09. https://doi.org/10.1016/j.stem.2026.05.017
  1. Stem Cell Program, Boston Children’s Hospital, Boston, MA, USA
  2. Department of Stem Cell and Regenerative Biology, Harvard University, Cambridge, MA, USA
  3. Broad Institute of Harvard and MIT, Cambridge, MA, USA
  4. Biological and Biomedical Sciences Program, Harvard University, Cambridge, MA, USA
  5. These authors contributed equally
  6. Co-corresponding authors
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