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 ここでは、フロリダ大学の5名の研究者(4名はスタートアップ企業CasNx社の共同設立者)によるNature Reviews Bioengineering 誌掲載の「Down to Business(実用化への道)」のカテゴリーの論文を取り上げます。
 CasNx社は、「臓器の生物学的特性を書き換える(rewriting)」を標榜し、体外にある臓器に対して精密な遺伝子改変を施すことで移植医療に革命をもたらし、患者の転帰を劇的に改善し得る個別化ソリューションの新たなパラダイムを構築するとしています。その上で、Cas1x、Cas2x並びにCas3xの3つの技術を提供するとしています。
1. Cas1x(ドナー臓器からのウイルス排除)
 これまで、ドナー臓器の10個中9個が、CMV(サイトメガロウイルス)やBKV(BKウイルス)などの危険な潜伏ウイルスに感染しています。これに対して、同社は灌流ポンプ上でドナー臓器から直接ウイルスを除去できる、初の「ex vivo(生体外)」臓器抗ウイルス治療法を開発しています。
2. Cas2x(ユニバーサル・ドナー臓器の創出)
 これまで、ドナー臓器の20%は、HLA不適合が原因で廃棄されるか、移植後に機能不全に陥っています。同社は、灌流ポンプで維持されている臓器に対し、免疫原性のあるHLA遺伝子を除去すると同時に、「ユニバーサルドナー(万能ドナー)」としてのマーカーを導入する技術を開発しています。
3. Cas3x(ドナー移植片の寿命延長)
 これまで、腎臓移植では、慢性拒絶反応や損傷により、最大40%が10年以内に機能不全に陥っています。同社は、灌流中にCRISPRカクテルを用いて、細胞保護遺伝子を活性化させると同時に、線維化を促進する因子の働きを抑制する技術を開発しています。この処理を施された臓器は、移植時のショックに対する耐性を備え、機能維持期間が2倍に延びた状態で提供されます。

 記事の共著者の中で、Santosh R. Rananaware、Rushi A. Shah、並びにPiyush K. Jainの三氏は、RNA編集をCas12aとCas12iをDNA("ψDNA/シュードRNA"と命名されています)で誘導することで標的RNAの編集を実現した技術 [crisp_bio 2026-05-21]の特許における発明者であり、また、灌流ポンプを用いた臓器改変に関する仮特許をCasNx経由で出願しています。
 論文では、ヒトドナー臓器におけるCRISPR GE技術を利用した生体外遺伝子サイレンシング手法の開発について、ヒト腎生検検体での概念実証(プルーフ・オブ・コンセプト)から、臓器全体への適用に向けた課題に至るまで論じています。
 概念実証からは、灌流条件の最適化後に生体外において標的RNAの大幅なノックダウンが達成されたことが報告されています。その上で著者らは、これを臓器全体への治療へと実用化するには、組織への浸透、ドナー間の個体差、移植後のRNAサイレンシングの持続性、オフターゲット効果の評価、そして拡張可能なGMP製造といった課題を克服する必要があると強調しています。また、臓器全体を対象とする生体外治療は、既存のCRISPR細胞療法とは異なる規制上および臨床上の検討が必要なことを指摘しています。

[出典] Down to Business "CRISPR-based ex vivo gene editing of donor organs" Santosh R. Rananaware (1), Karthik V. Narisetty (1), Rushi A. Shah (1,2,6), Piyush K. Jain (1,3,4,5,6). Nature 2026-06-29. https://doi.org/10.1038/s44222-026-00462-2
  1. CasNx, Alachua, FL, USA
  2. Department of Surgery, Division of Transplantation, University of Florida College of Medicine, Gainesville, FL, USA
  3. Department of Chemical Engineering, University of Florida, Gainesville, FL, USA
  4. Department of Molecular Genetics and Microbiology, University of Florida, Gainesville, FL, USA
  5. UF Health Cancer Center, University of Florida, Gainesville, FL, USA
  6. Corresponding authors
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