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 H3K27acとH3K4me3はいずれもヒストン化学修飾であり遺伝子の転写を活性化させるマーカーとして知られています。Fu-Sen Liang教授が率いるケース・ウェスタン・リザーブ大学の研究チームは、先行研究で、H3K27acが、アセチル化ヒストン認識タンパク質であるBRD2を介してH3K4me3の増加を促進する(逆方向の作用ではない)上流のエピジェネティックな修飾であり、転写活性化の引き金となることを示唆する結果を得ていました  [crisp_bio 2021-08-14 参照]。その際に、dCas-p300 (CD) とdCas9-SET(CD)の2種類のエピゲノム・エディター [*1] を構築・利用しました。今回、研究チームは先行研究でのエピゲノムエディターの使い方を「ダイナミック」に改変することで、この階層的クロストークのメカニズムを深掘りした結果を、Nature Communiations 誌刊行論文で紹介しています。
[*1] 論文では"epigenome editing method"という表記が使われていて"epigenome editor"という用語は使われていませんでした。
 転写が進行する過程におけるH3K27acとH3K4me3の機能的かつ時間的な相互作用を解析するため、エピゲノム・エディターに、直交する化学誘導近接(CIP)モジュールを組み込んだ、二重の化学誘導型CRISPR/dCas9エピゲノム編集システム [*2] を開発しました。
[*2] dCas9-KDM5b(CD), dCas9-SET(CD)とdCas9-P300 (CD) に、Rap誘導FRB+FKBPとABA誘導ABI+PYLを組み合わせています。
 このシステムにより、特定のゲノム領域におけるH3K27acとH3K4me3を、分単位の時間分解能で、迅速かつ可逆的に、そして、転写の段階特異的かつ独立して制御することが可能になり、転写活性化におけるH3K27acとH3K4me3のそれぞれ異なる、かつ協調的な役割を明らかにするに至りました。
 H3K27acは転写の開始と維持に不可欠であり、一方、H3K4me3は効率的な伸長を促進しmRNAの安定性を高めることで、転写産物量を最大レベルに維持する役割を担っていました。
 H3K4me3を段階特異的に除去すると、RNAポリメラーゼIIのリクルートが阻害され、プロモーター近傍でのポーズ(一時停止)が増加し、生産的な伸長反応が低下するとともに、m⁶A修飾の増加を介したmRNA分解が促進されます。
 H3K27acとH3K4me3の両方を消失させると転写活性は急速に消失しますが、H3K27acを欠きH3K4me3を保持した状態では、転写が部分的に維持されます。
 こうして、解析対象とした遺伝子座において、転写の各段階におけるH3K27acとH3K4me3の機能的な階層性と相互依存性が見えてきました。
 この汎用性の高いツールは今後、遺伝子制御におけるクロマチン修飾の時間的動態の機能的解明に貢献するでしょう

[出典] "Hierarchical interplay between H3K27ac and H3K4me3 in transcriptional regulation" Chenwei Zhou (1),  Chanjuan Dong (1), Weiye Zhao (1), Fu-Sen Liang (1,2). Nat Commun. 2026-06-22. https://doi.org/10.1038/s41467-026-74693-7
  1. Department of Chemistry, Case Western Reserve University, 2080 Adelbert Road, Cleveland, OH 44106, USA
  2. Corresponding author
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