[注] SCZ: schizophrenia
ミクログリアは、神経回路形成の重要な制御因子として、また統合失調症(SCZ)などの神経精神疾患の病態生理に関与する可能性のある細胞として、その重要性がますます認識されています。しかし、ミクログリアにおけるSCZ関連遺伝子の機能的影響については、依然として十分に解明されていません。
今回、マサチューセッツ総合病院ゲノム医療センター・精神科のバイオインフォマティシャンを含む研究者達にタフツ大学のデータサイエンティストが加わった研究チームは、ヒト・ミクログリア様細胞(PBMC-derived human microglia-like cells: piMGLCs)において発現変動が予測される30種類のSCZ関連遺伝子を対象に、アレイ型CRISPR-Cas9標的スクリーニングを実施しました。
標的遺伝子の選定にあたっては、死後脳におけるトランスクリプトーム解析との関連性や、オントロジー解析に基づく食作用経路での役割予測を考慮した優先順位付けがされました。遺伝子標的化後の貪食能および形態変化については、ハイコンテント共焦点イメージングを用いて定量的に評価されました。
その結果、CYFIP1、MSR1、TREM2、SYK、ITGB2、ITGAM、IRF8 などの主要な標的遺伝子が、ミクログリアにおいて、食作用を制御するとともに、細胞の活性化状態に伴う形態変化を誘発する役割を担っていることが、実証されました。
さらに、転写への影響を明らかにするため、標的遺伝子群を対象としたDrug-seq(マルチプレックスRNAシーケンシング解析)を行いました。その結果、遺伝子ごとに特異的な転写プロファイルが明らかになり、食作用、活性化、細胞骨格、リソソーム機能に関連する多様な経路の関与が示唆されました。
近年のゲノムワイド関連解析(GWAS)によって、免疫系の遺伝子が精神疾患である統合失調症に関与していることが明らかにされてきましたが、この研究の成果は、脳における免疫細胞の遺伝子を標的にした創薬を後押しするものと考えられます。
この研究はまた、ミクログリアの機能を解析し、SCZの病態生理への関与に関わる新たな標的遺伝子やメカニズムを特定する上で、CRISPRを用いた機能ゲノミクス手法が有用であることも示しました。
[出典] "Functional genomic profiling of schizophrenia-associated genes reveals key microglial regulators" Joy E Horng (1,2,6), Liam T McCrea (1,6), Rebecca E Batorsky(3,6) [..] Roy H Perlis (1,4,5,7) , Steven D Sheridan (1,4,5,7) [+3]. Neuropsychopharmacology. 2026-04-16. https://doi.org/10.1038/s41386-026-02406-1
- Center for Genomic Medicine and Department of Psychiatry, Massachusetts General Hospital, Boston, MA, USA.
- Department of Molecular Biology, Massachusetts GeneralHospital, Boston, MA, USA.
- Tufts Institute for Articial Intelligence, Tufts University, Medford, MA, USA.
- Department of Psychiatry, Harvard Medical School, Boston, MA, USA.
- Harvard Stem Cell Institute, Cambridge, MA, USA.
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- Corresponding authors
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