crisp_bio

科学分野の比較的新しい論文と記事を記録しておくサイト: 主に、CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム編集, エピゲノム編集, 遺伝子治療, 分子診断/代謝工学, 合成生物学/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野) の観点から選択し、時折、タンパク質工学、情報資源・生物資源、新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症、機械学習・AIや研究公正からも選択

しかし、cGAMPやそのアナログといったSTINGアゴニストがどのようにT細胞内に取り込まれるのか、T細胞におけるSTINGの活性化や毒性を引き起こすのかは不明でした。スタンフォード大学教授でArc Institueのコア研究者でもあるLingyin LI博士が率いる研究チームは今回、活性化したマウスおよびヒトの初代T細胞を対象とするゲノムワイドなCRISPR-Cas9スクリーニングを実施し、cGAMPの主たるトランスポーターとして、SLC7A1を同定するに至りました。
 SLC7A1はT細胞にとっての栄養であるアルギニンを取り込む陽イオン性アミノ酸輸送体であり、T細胞が活性化・増殖する際には、その栄養を取り込むために、SLC7A1の発現量を約30倍に増加させます。この発現増加に伴いcGAMPもまた細胞内に取り込まれ、その結果、活性化したT細胞は静止期のT細胞よりもSTINGアゴニストの影響を受けやすくなります。ヒトおよびマウスの初代T細胞において、cGAMPによるSTINGシグナル伝達および細胞死の半分以上は、SLC7A1を介して引き起こされていました。
 こうして、STINGアゴニストが、抗腫瘍性とT細胞攻撃性を併せ持った諸刃の剣である機構が明らかになりました。
 それでは、STINGアゴニストには抗癌剤としての未来は無いのでしょうか。研究チームは、SLC7A1の中で、Activation-induced SLC7A1cGAMPおよびアルギニンの輸送に関与するアミノ酸残基が異なることを発見しました、幸にして。[グラフィカルアブストラクトから引用したモデル図の中央上部の円内を参照]
 研究チームがcGAMP結合部位を選択的に阻害したところ、過剰なアルギニンを存在させるだけでも、T細胞のSTINGアゴニストに対する感受性が約3分の1に低下したことから、SLC7A1を標的とする創薬が十分考えられます。
 例えば、SLC7A1によるcGAMP輸送を阻害する戦略で、抗腫瘍免疫を担う間質細胞や骨髄系細胞においてはSTINGの活性を維持しつつ、癌のSTING療法中や、腫瘍内にcGAMPが放出される高線量放射線照射後において、T細胞を保護できる可能性があります。

[出典] "Activation-induced SLC7A1 expression enhances T cell sensitivity to cGAMP-mediated STING signaling" Valentino Sudaryo (1,2,3) [..] Lingyin LI (2,3,7,8,9). [+7]. Cell Rep 2026-06-22. https://doi.org/10.1016/j.celrep.2026.117580
  1. Immunology, Stanford University, Stanford, CA 94305, USA
  2. ChEM-H Institute, Stanford University, Stanford, CA 94305, USA
  3. Arc Institute, Palo Alto, CA 94304, USA
  4. Department of Chemistry, Stanford University, Stanford, CA 94305, USA
  5. Department of Pathology, Stanford University, Stanford, CA 94305, USA
  6. MSTP program, Stanford University, Stanford, CA 94305, USA
  7. Department of Biochemistry, Stanford University, Stanford, CA 94305, USA
  8. Lead contact
  9. Correspondence
このエントリーをはてなブックマークに追加

コメント

コメントフォーム
評価する
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット