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 経済的に重要な多くの双子葉植物種の機能ゲノミクスや精密育種に利用するには、通常のCRISPR-Cas9 GEは編集効率が低すぎるという課題に対して、Cas9に強力な3'→5'エキソヌクレアーゼ活性を有しているヒト由来TREX2タンパク質を融合させ、イントロンを介したポリシストロニックtRNA-sgRNA(the intron-mediated polycistronic tRNA-sgRNA:inPTG)システムと組み合わせるアプローチが解決策になるようです。
 今回取り上げた中国農業大学、北京大学先端農業科学研究所ならびに中国農業科学院 生物技術研究所の研究チームも、先行研究に続いてそのアプローチを採用し [#1, 2]、また、他の研究チームも近年同様の手法の成果を発表 [#3,4]しています。
 著者らは今回、Cas9のC末端にTREX2を融合させたpZHA712ベクターを構築しました。二倍体のレタス ( Lactuca sativa )、トマト ( Solanum lycopersicum )、ダイズ (Glycine max  )、四倍体のナタネ (Brassica napus )、および六倍体(サツマイモ Ipomoea batatas )を含む多様な双子葉植物種において、2つの対照ベクター(pHSE401およびpZHA702)と比較しながら、その性能を系統的に評価しました。アグロバクテリウムを介した植物体内(in planta)形質転換法を用い、形質転換毛状根または貯蔵根を作出しました。レタスとトマトについては、無菌条件下で傷をつけた実生から根を誘導しました。サツマイモについては、茎の節を含む切片を用いた土壌栽培法により、形質転換貯蔵根を再生させました。
 その結果、最適化されたinPTG発現システムにおけるCas9-TREX2融合タンパク質が、倍数体を含む試験したほとんどの種および標的部位において、変異導入効率を著しく高め、より大きな欠失(10 bp超)を促進することを実証しました。この相乗的な組み合わせは、スコアの低いsgRNAを用いても強力な変異導入を可能にすることで、応用ゲノム編集における主要な制約を克服し、それによって育種における標的可能なゲノム領域を拡大します。
 研究チームは、TREX2の3'→5'エキソヌクレアーゼ活性がCas9によって生じた二本鎖切断末端に作用し、末端を段階的に削り取ることで、より複雑かつ不均一な末端構造を形成すると推測しています[#2]。その結果、この作用は単なるヌクレアーゼによる切断よりも効果的にエラープローンなNHEJ(非相同末端結合)経路を刺激し、大規模な欠失の頻度を高めることになります。
 今回の研究の限界として、Cas9-TREX2融合タンパク質と従来のsgRNAを含む対照ベクターを用いていない点が挙げられ、そのためTREX2融合とinPTGシステムそれぞれの独立した寄与を厳密に区別することができませんでした。さらに、今回の検証は主に少数の双子葉植物種に限られており、他の重要な双子葉作物への本システムの適用可能性については、さらなる実験的検証が必要です。
 しかしながら、異なる倍数体の双子葉植物種にわたり実証された堅牢な性能に基づけば、このプラットフォームは単子葉作物にも拡張可能であり、機能ゲノミクスや精密育種における可能性を大きく広げるものと考えられます。今後の研究で、その正確な分子メカニズムの解明や、適用範囲をさらに広げるためのCas12aなど他のヌクレアーゼとの融合に関する検証がなされることが望まれます。
 [#] 引用論文と関連crisp_bio記事
  1. "Efficient gene disruption in polyploid genome by Cas9-Trex2 fusion protein" Pan W, Gao C, Liu D. et al. J Integr Plant Biol. 2024-10-25/2025 Jan. 
  2. "Establishment of an efficient genome editing system in lettuce without sacrificing specificity" Pan W, Liu X, Li D. et al. Front Plant Sci. 2022-06-22.  
  3. 2026-05-27 TREX2-SpCas9融合と最適化されたtRNA-gRNAアレイシステムを組み合わせることで, 植物における高効率な多重ゲノム編集が実現;TREX2-Cas9融合を利用したGE関連crisp_bio記事のリストあり
  4. CRISPRメモ_2018/12/30 [第2項] 特許:Cas9とTREX2の共発現による標的変異誘発法. 
[出典] "Robust genome editing in multiple dicot crops via a Cas9-TREX2 fusion
with intron-mediated polycistronic tRNA-sgRNA system" Ya Wang (1,2,4), Yirang Jiao (2,4), Huawei Zhang (2,3,5), Shaopei Gao (1,5) Hortic Res 2026-06-30. https://doi.org/10.1093/hr/uhag264
  1. Key Laboratory of Sweet Potato Biology and Biotechnology of Ministry of Agriculture and Rural Affairs, College of Agronomy & Biotechnology, China Agricultural University, Beijing, China
  2. State Key Laboratory of Wheat Improvement, Peking University Institute of Advanced Agricultural Sciences, Shandong Laboratory of Advanced Agricultural Sciences in Weifang, Shandong China
  3. Biotechnology Research Institute, Chinese Academy of Agricultural Sciences, Beijing, China
  4. Contributed equally 
  5. Corresponding authors
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