BAG(Bcl-2-associated athanogene)ファミリーの遺伝子は、タンパク質恒常性(proteostasis)の制御、ストレス応答、およびプログラム細胞死に関与する、進化的に保存されたコシャペロンをコードしています。しかし、BAGファミリーの個々の遺伝子の機能はある程度解明が進んできましたが、植物の発生過程におけるそれらの全体的な機能については、理解が不足していました。その一因として、ファミリーメンバー間で機能が重複している可能性があります。すなわち、単一遺伝子変異体や少数の遺伝子に変異を持つ変異体では発生上の表現型が顕在化せず、結果としてファミリー全体としての機能解析が制限される可能性があります。
その中で、プロモーターのシスエレメント解析により、シロイヌナズナの BAG 遺伝子のプロモーター領域に複数のホルモン応答性エレメントが存在することが明らかになり、植物ホルモンを介した発生制御に BAG 遺伝子が関与している可能性が示唆されました。
この点を検証するため、南開大学の研究者達に青海師範大学と貴州大学からの研究者が加わったチームは標題のbag-septuple (bag-s ) 変異体を作出しました。具体的には、7重変異体は、既存の" bag4, bag5, bag6 " 3重変異体を背景とし、CRISPR/Cas9 GEによる多重変異導入によって残りの4つのBAG遺伝子(BAG1、BAG2、BAG3、BAG7 )をノックアウトすることで作製されました。
7重変異体の表現型解析の結果、7遺伝子のノックアウトは、種子発芽の遅延、種皮ムシレージ蓄積の増加、主根伸長の抑制、ロゼット径および草丈の減少、葉の老化遅延など、多岐にわたる異常が明らかになりました。これらの表現型は、限られたBAG遺伝子のノックアウトではみられないことから、BAGファミリーの遺伝子の機能が重複していることが、裏付けられました。
葉の老化遅延という表現型と整合するように、bag-s変異体では、老化関連遺伝子や老化を促進する転写因子の発現が低下していました。さらにRT-qPCR解析により、オーキシン生合成およびオーキシンシグナル伝達に関与する遺伝子の発現も、bag-s変異体において低下していることが明らかになりました。加えて、代表的なオーキシンであるIAAを外部から投与するとbag-s変異体の根の伸長不良が部分的に回復したことから、BAG遺伝子とオーキシン依存的な根の成長との間に機能的な関連があることが裏付けられました。
以上の結果は、BAG遺伝子が種子発芽、栄養成長、オーキシン関連の根の発生、および葉の老化を冗長的に制御していることを示しており、タンパク質恒常性、ホルモンシグナル伝達、および植物の発生をBAG がどのように協調させているかをさらに解明するための遺伝学的基盤を提供するものである。
[出典] "Combined T-DNA and CRISPR/Cas9 mutagenesis reveals redundant developmental roles of the Arabidopsis BAG family" Deyi Shao (1,4), Xinyu Wen (1,4), Qiong Luo (2,4), Xiuping Liu (1), Luhua Li (3), Shuzhen Men (1,5). Plant Sci. 2026-06-30. https://doi.org/10.1016/j.plantsci.2026.113305
- Tianjin Key Laboratory of Protein Sciences, Department of Plant Biology and Ecology, College of Life Sciences, Nankai University, Tianjin 300071, China.
- Key Laboratory of Biodiversity Formation Mechanism and Comprehensive Utilization of the Qinghai-Xizang Plateau in Qinghai Province, School of Life Sciences, Qinghai Normal University, Xining 810000, China.
- College of Agriculture, Guizhou University, Guiyang 550025, China.
- Contributed equally
- Corresponding author.
コメント