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 ALSの原因として、TAR DNA結合タンパク質43(TDP-43)をコードする TARDBP 遺伝子の常染色体顕性変異が挙げられており、ほぼすべての症例において神経細胞内でTAR DNA結合タンパク質43(TDP-43)の異常な凝集が見られます。TDP-43をコードする TARDBP 遺伝子は、1-76残基のN末端ドメインと274-414残基の構造化されていないC末端ドメイン(CTD)で構成されています。このCTDはグリシンに富み、タンパク質間相互作用に関与し、家族生ALSに関係するほとんどの変異がここで起こります。
 今回、アリゾナ大学のXinglong Wang教授が率いる米国の研究チームは、CTD内の320-340番目のアミノ酸残基にわたる保存されたαヘリックス領域(conserved region:CR)が、TDP-43の神経毒性に対する治療標的となり得ることを示しました。
 Therapeutic targeting of Fig. 1マウスでこのCRを欠失させると [Fig. 1の一部引用右図参照]、TDP-43変異によって誘発される神経細胞死が著しく抑制された一方で、TDP-43としての正常な機能が維持されました。構造ベースのバーチャルスクリーニングにより、CRに結合し、TDP-43のスプライシング活性に影響を与えることなく神経保護作用を示す脳移行性の低分子化合物「XL20」が同定されましたTherapeutic targeting of FIg. 2 [Figure 2の一部引用右図参照]。特筆すべきことに、このXL20は、血液脳関門を通過することが可能でした。
 XL20は、TDP-43 p.Ala315Thr変異を有するALSモデルマウスにおいて、運動ニューロンの脱落を軽減し生存期間を延長(中央値で約一週間)させたほか、p.Gln331Lys変異を有するiPS細胞由来のヒトALS運動ニューロンにおいて神経機能を回復させました。
 XL20が薬効を示すメカニズムに関しては、CRを標的とすることでTDP-43のミトコンドリアへの局在が抑制され、ミトコンドリア機能が回復したのですが、これは、液-液相分離を介した作用であると考えられました。
 ALSは通常、最初の症状が現れてから数ヶ月から数年かけて進行するため、XL20を利用して早期治療を行うことで、病気の進行を遅らせる可能性が高まることが期待されます。
 さらに、TDP-43の変異を標的とするアプローチは、ALS以外の神経疾患への応用につながる可能性もあります。 80歳以上の約3人に1人が罹患する一般的な認知症である「LATE(Limbic-predominant age-related TDP-43 encephalopathy / 辺縁系優位型加齢性TDP-43脳症)」においても、このTDP-43病理が中心的な役割を果たしています。TDP-43病理はアルツハイマー病患者の半数以上にも認められ、認知機能低下の進行が速いことと関連しています。
 [注] 本研究におけるCRISPR/Cas9 GEの利用
  •  TDP-43遺伝子の編集にではなく、HEK293細胞において、ミトコンドリア動態に関わる遺伝子をノックアウトし、XL20がミトコンドリアの融合・分裂や全体的な構造的完全性にどのような影響を及ぼすかを個別に検証・確認するために利用されました。
[出典] 
NEWS "ALS Drug Extends Survival in Mice, Targets TDP-43 Low-Complexity Domain" 2026-05-06. https://www.genengnews.com/topics/drug-discovery/als-drug-extends-survival-in-mice-targets-tdp-43-low-complexity-domain/
論文 "Therapeutic targeting of the conserved region within the low-complexity domain of TDP-43 is neuroprotective and extends survival in amyotrophic lateral sclerosis mice" Ju Gao (1,5), Devanshi Shukla (1,5) [..]  Xinglong Wang (1,6). [+10] Nat Aging 2026-07-03. https://doi.org/10.1038/s43587-026-01166-3
  1. Department of Pharmacology and Toxicology, College of Pharmacy, University of Arizona, Tucson, AZ, USA. 
  2. Department of Psychiatry and Behavioral Sciences, Division of Neurobiology, Johns Hopkins University School of Medicine, Baltimore, MD, USA. 
  3. Department of Pharmacology, Case Western Reserve University, Cleveland, OH, USA. 
  4. Department of Pharmacy Practice and Science, College of Pharmacy, University of Arizona, Tucson, AZ, USA.
  5. These authors contributed equally
  6. Corresponding author.
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