1.光スイッチを伴う一本鎖Cas9を開発
- 【出典】“A single-chain photoswitchable CRISPR-Cas9 architecture for light-inducible gene editing and transcription.” Zhou XX, Zou X, Chung HK, Gao Y, Liu Y, Qi LS, Lin MZ. ACS Chem Biol. 2017 Sep 22.
- 光分解する二量体蛍光タンパク質ドメインを利用して、光照射が無い状態ではDNAに結合せず、光照射によってDNAに結合可能になる光スイッチ(photoswitchable)を内蔵した一本鎖Cas9(ps-Cas9)を設計・構築。
- Ps-Cas9により、光照射によってニ量体を形成する2本のポリペプチドを利用してCas9の活性を調節する手法では実現できなかった複数種類のCas9の活性の光制御が可能になり、また、より安定な転写活性化を実現した。Ps-Cas9により同一細胞内での特定の遺伝子の転写活性化と他の遺伝子の編集の光制御を実現した。
- 【関連ブログ記事と関連特許】2017/09/17「dCas9をベースとした光刺激転写活性化システム第2世代へ:神経細胞の分化誘導も可能に」;WO 2016167300 A1「光依存的に又は薬物存在下でヌクレアーゼ活性若しくはニッカーゼ活性を示す、又は標的遺伝子の発現を抑制若しくは活性化するポリペプチドのセット」
2.[レビュー] 新たな癌療法開発の基盤データとなる遺伝子相互作用のin silico同定
- 【出典】“Computational Approaches to Identify Genetic Interactions for Cancer Therapeutics” Benstead-Hume G, Wooller SK, Pearl FMG. J Integr Bioinform. 2017 Sep 23;14(3). https://doi.org/10.1515/jib-2017-0027
- 癌療法開発に有用な遺伝子相互作用は、synthetic sensitivity lethality (SSL)とsynthetic dosage lethality (SDL)の関係である
- SSLは2つ以上の遺伝子のセットについて、個々の遺伝子が機能喪失した場合は細胞不全に至らないが、全ての遺伝子が機能喪失した場合は細胞不全に至る関系;細胞死に至る場合はSynthetic Leathal(合成致死)、細胞死までに至らない場合は‘synthetic sensitive’または‘synthetic sick’
- SDLは、遺伝子Aが過剰発現し、遺伝子Bが機能喪失した場合に細胞死に至る関係を言う。
- SSLに焦点をあてながら、ハイスループットでの遺伝子間相互作用同定を目指したウエット実験のプラットフォームと、in silicoでの遺伝子間相互作用の推定に必要なデータ資源とアルゴリズムをレビュー。また、合成致死データを入手可能なデータ資源を取りまとめ(Table2)。
3.[展望] CRISPR関連ポリメラーゼを介したオリゴヌクレオチドを二次情報伝達物質の発見が解決した謎と生み出した謎
- 【出典】”Discovery of oligonucleotide signaling mediated by CRISPR-associated polymerases solves two puzzles but leaves an enigma” Koonin EV, Makarova KS. ACS Chem Biol. September 22, 2017.
- 2017年6月に2つの研究グループがそれぞれNature誌とScience誌に発表した「タイプⅢ CRISPR-CasシステムにおけるウイルスDNAからの転写物RNA切断に、サイクリックアデニル酸が、セカンドメッセンジャーとして機能する(*)」とする論文に触発された考察
- (*) 【関連ブログ記事】CRISPRメモ_2017/08/07-3「3.バクテリアの獲得免疫機構におけるセカンドメッセンジャー発見」
- タイプⅢCRISPR-Casシステムの特徴であるCas10のPalmドメインと、タイプⅢとタイプⅠの一部に存在するCRAF (CRISPR-associated Rossmann fold)ドメインの機能がようやく明らかにされた。すなわち、Cas10が触媒合成するオリゴアデニレートがCsm6タンパク質のCRAFドメインに結合し、侵入DNAの転写物を切断するRNアーゼドメインを活性化する免疫応答パスウエーの存在が明らかにされた。一方で、このパスウエイの調節機構と進化機構という新たな謎が生まれた。
4.GuideFinder:任意のバクテリアについて、完全ゲノムまたはドラフトゲノムからCRISPRi/CRISPRa用gRNAsを同定可能とするプログラム
- 【出典】“A universal, genome-wide guide finder for CRISPR/Cas9 targeting in microbial genomes” Spoto M, Fleming E, Oh J. bioRxiv Posted September 27, 2017
- NGG PAMサイトを認識し、利用者が設定するパラメーターに応じてゲノムを検索。
- プログラム入手先:https://github.com/ohlab/Guide-Finder
5. [レビュー] 嚢胞性線維症(CF)のモデルとなる動物と細胞の構築
- 【出典】“Animal and model systems for studying cystic fibrosis” Rosen BH, Chanson M, Gawenis LR, Liu J, Sofoluwe A, Zoso A, Engelhardt JF. J Cyst Fibros. 2017 Sep 19. pii: S1569-1993(17)30880-9.
- CF疾患のモデリングと新たな療法の検証を可能にする動物モデルと細胞モデル開発の鍵となる技術を評価:CRISPR/Cas9技術により、細胞株と初代培養細胞において、CFの病因分子であるcystic fibrosis transmembrane conductance regulator(CFTR)のin vitroモデリングの可能性が広がった。また、CRISPR/Cas9技術による体性幹細胞とiPSCsにおけるCFTR変異の遺伝子編集が、CFの遺伝子治療の可能性を広げた。
6.[レビュー] アピコンプレックス門寄生虫の遺伝子操作法の進展
- 【出典】“Advances in the application of genetic manipulation methods to 5 apicomplexan parasites.” Suarez CE, Bishop RP, Alzan HF, Poole WA, Cooke BM. Int J Parasitol. 2017 Oct;47(12):701-710.
- バベシア、タイレリア、アイメリア、クリプトスポリジウム、トキソプラズマなどのアピコンプレックス門寄生性原虫の生物学的特徴、複雑な生活環、毒性因子、ゲノムと遺伝子、遺伝子操作法、トランスフェクションによる遺伝子改変、プログラム可能なヌクレアーゼ、特にCRISPR/Cas9、による遺伝子編集、遺伝子編集の応用例
7. [プロトコル] Agrobacterium rhizogenesを介した毛状根形質転換技術によるアビシニアガラシ(Brassica carinata)変異体の効率的作出
- 【出典】“Efficient generation of mutations mediated by CRISPR/Cas9 in the hairy root transformation system of Brassica carinata” Kirchner TW, Niehaus M, Debener T, Schenk MK, Herde M. PLoS One 2017 Sep 22;12(9):e0185429.
- FASCICLIN-LIKE ARABINOGALACTAN PROTEIN 1 (BcFLA1)遺伝子をモデルとして、遺伝子変異と表現型変異の誘導を実証。ポリアクリルアミドゲル電気泳動による遺伝子編集の評価も提案。
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