20226-09-07更新 ブログ記事タイトルを「次世代EV(VEDIC)を介して、NHP脳内ゲノム編集効率300倍超:ハンチントン病治療標的に適用」に改訂しました。(旧タイトルは「非ヒト霊長類(NHP)脳内でのハンチントン病の新たな治療標的遺伝子(MSH3)の編集を実現した次世代EV技術」)
2026-08-26 初稿
カロリンスカ研究所を主にEvox Therapeuticsなどが加わった研究チームは2025年4月29日にNature Communications誌から「EVを用いた高効率な細胞内タンパク質送達のためのVEDIC(VSV-G plus EV-Sorting Domain-Intein-Cargo)システム」 [*] を紹介しました。その際「VEDICシステムを介してCreリコンビナーゼをEVに搭載し、Cre-LoxP reporterマウスの側脳室へ単回投与(または持続注入)することで、DNA断片の切り出し(Cre組み換え)を誘導し、海馬で40%超、大脳皮質で30%超の細胞で組み換えを達成」し「中枢神経系(CNS)へ遺伝子編集ツール(CRISPR/Cas9や塩基編集酵素など)を送達するという、ハンチントン病や脊髄性筋萎縮症といったCNSの遺伝性疾患に対する治療法として期待できる」としていました。
カロリンスカ研究所を主にEvox Therapeuticsなどが加わった研究チームは2025年4月29日にNature Communications誌から「EVを用いた高効率な細胞内タンパク質送達のためのVEDIC(VSV-G plus EV-Sorting Domain-Intein-Cargo)システム」 [*] を紹介しました。その際「VEDICシステムを介してCreリコンビナーゼをEVに搭載し、Cre-LoxP reporterマウスの側脳室へ単回投与(または持続注入)することで、DNA断片の切り出し(Cre組み換え)を誘導し、海馬で40%超、大脳皮質で30%超の細胞で組み換えを達成」し「中枢神経系(CNS)へ遺伝子編集ツール(CRISPR/Cas9や塩基編集酵素など)を送達するという、ハンチントン病や脊髄性筋萎縮症といったCNSの遺伝性疾患に対する治療法として期待できる」としていました。
[*] 詳細はcrisp_bio 2025-05-05/2026-08-25更新「ゲノム・エディターを含む多様な治療薬の効率的な細胞内送達を実現する細胞外小胞工学」参照
研究チームは今回、VEDICによる送達・編集効率を約300倍以上向上させて、非ヒト霊長類(NHP)生体内の脳において、外因性レポーター遺伝子にとどまらず、ハンチントン病の原因となる遺伝子など内在性遺伝子の編集に成功したことをbioRxivプレプリントで紹介しています。
技術面における2025年論文からの改良点
1. Cas9との結合および搭載効率を高めるためのsgRNAスキャフォールドの改変
EV内へのCas9–RNP封入におけるボトルネックが「Cas9とsgRNAの結合安定性」にあることを突き止め、ガイドRNA構造を段階的に改変しました。
- FEおよびT-Lock設計の導入・融合:スキャフォールドの下部ステム(lower stem)の改変を組み合わせたM1Lスキャフォールド、さらに塩基対置換を加えたM1LRスキャフォールドを開発。
- MS2ヘアピンの挿入 (M1LR-SL1):sgRNAへMS2結合ヘアピンを挿入したM1LR-SL1により、Cas9に対する結合親和性とRNP形成効率が大幅に向上し、EVへのCas9搭載量が飛躍的に増加。
2. 切断動態を改善するためのインテインの改変
プロデューサー細胞内でEVに搭載される前にRNPが切断・放出されてしまう「フライングスタート(早期切断)」を防ぐ改良を行いました。
- 遅延切断型インテイン(Intein29系)の採用:既存インテインから、切断速度が制御されたIntein29や変異体Intein29-HQへ変更しました。
- RNP封入率の向上: EV小胞化が完了するまで融合状態を保ち、内部に閉じ込められた後に自己切断させることで、活性型RNPを保持したEVの割合(ペロード搭載率)が向上しました。
3. EVソート領域および膜結合シグナルの追加
- ミリストイル化(Myr)ペプチドの利用:トランスフェクション時にミリストイル化シグナル(Myr)を利用することで、膜への局在化を促進し、従来のTSPAN2等のEVソート領域と比較して1.4〜2倍の編集効率向上を達成しました。
4. 多様なゲノム編集モダリティへの拡張
- Cas9ヌクレアーゼだけでなく、アデニン塩基エディター(ABE8e)やシトシン塩基エディター(CBE)などの塩基エディターや、ウイルス様粒子(Nanoblades等)にも同一の改変スキャフォールド/インテイン系が適用可能であることが実証されました。
5. 浮遊培養・50Lスケール製造への適応
- 将来的なトランスレーショナルリサーチや臨床試験への供給を見据え、接着細胞由来から浮遊細胞(Suspension cells)でのcGMP互換50Lスケール製造プロセスを確立し、バッチ間の再現性と高い活性を維持した大量調製を可能にしました。
こうした多角的な改良が加えられた人工EVを介して、ハンチントン病(HD)の治療標的である「HTT遺伝子のCAGリピートの体細胞内での異常伸長を駆動する」MSH3遺伝子の編集に適用しました。その結果、改良型EVを介したCas9-sgRNA RNP送達により、NHPの脳内において臨床的に意義のあるレベルのMSH3 編集が進行したことが、確認されました。
これらの知見は、非ウイルス性送達技術を用いてNHPの脳内でDNA編集が可能であることを示していて、中枢神経系疾患に対する安全な生体内(in vivo)ゲノム編集の臨床応用への道が広がったことを意味しています。
出 典
"Efficient genome editing in the non-human primate brain using programmable extracellular vesicles" Xiuming Liang (1,2,3,9,11,13), Houze Zhou (1,2,3,11) [..] David R F Carter (4, 12), Joel Z. Nordin (1,2,5,12), Samir EL Andaloussi (1,2,3,12,13) [+34]. bioRxiv 2026-08-06. https://doi.org/10.64898/2026.08.05.741964
- Division of Biomolecular and Cellular Medicine, Department of Laboratory Medicine, Karolinska Institutet, Stockholm, Sweden.
- Karolinska ATMP Center, ANA Futura, Karolinska Institutet, Stockholm, Sweden.
- Department of Cellular Therapy and Allogeneic Stem Cell Transplantation (CAST), Karolinska University, Stockholm, Sweden.
- Evox Therapeutics Ltd, Oxford, UK.
- Department of Clinical Immunology and Transfusion Medicine (KITM), Karolinska University Hospital, Stockholm, Sweden.
- Institute of Developmental and Regenerative Medicine, University of Oxford, IMS-Tetsuya Nakamura Building, Old Road Campus, Roosevelt Dr, Headington, Oxford, OX3 7TY, UK.
- Department of Paediatrics, University of Oxford, Oxford, UK.
- State Key Laboratory of Cellular Stress Biology, School of Life Sciences, Faculty of Medicine and Life Sciences, Xiamen University, No. 4221, Xiang'an South Road, Xiamen 361102, China.
- Cancer Research Laboratory, Shandong University-Karolinska Institutet collaborative Laboratory, School of Basic Medical Science, Shandong University, Jinan, Shandong, PR China.
- Departamento de Ciencias Básicas, Universidad Industrial de Santander, Bucaramanga, Colombia.
- Contributed equally
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- Corresponding authors
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