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用語解説:[crisp_bio注] 今回は、まずタイトル中の用語の解説からはじめます 
  • 拡大アクセス制度コンパッショネート使用とも言われ、重篤または生命を脅かす疾患を抱える患者が、既存の標準治療が効果を示さない場合に、例外として、未承認・適用外治験薬へアクセス可能にする制度です。
  • SNIPR001:病原性大腸菌の生存に不可欠な遺伝子にDNA切断を誘発し、細胞死に至らせるよう設計されたCRISPRシステム(Cas3とCascade)システムを搭載した4種類の改変バクテリオファージの混合製剤です  [#1,2]
  • 腎移植患者の腹部腫瘤:腎移植を受けた後に、大腸菌(E. coli)感染症を繰り返すと、マクロファージが細菌を貪食したものの、それらを殺菌・消化できなくなり、腹部に腫瘤が発生・拡大する場合あり、この症状はマラコプラキアと呼ばれています。
経 緯
  • 進行中のSNIPR001の臨床試験では、マラコプラキアは治療対象として認められていません。そのため、拡大アクセスの制度のもとで、SNIPR001を、多剤耐性大腸菌感染症が進行し続けマラコプラキアを発症していた腎移植患者に適用することが認められました。
  • この単一症例の臨床試験は、カリフォルニア大学サンディエゴ校のSaima Aslam教授らと、コペンハーゲンに拠点を置くSNIPR社の共同チームによって実施され、研究結果が2026年8月11日にClinical Infectious Diseases誌から出版されました。
SNIPR001に対する感受性の確認
  • SNIPR001投与前の臨床分離大腸菌株のゲノムを標準的な手法で解析した結果、系統型(phylotype)はB2、マルチローカス配列型(MLST)は1193、血清型はO18:H5であり、広範な薬剤耐性遺伝子を保有していることが判明しました。
  • 臨床分離大腸菌株のSNIPR001に対する感受性が、スポットアッセイおよび液体培養での動態解析を介して評価され、SNIPR001の高い抗菌活性が確認されました。
SNIPR001の投与
  • 進行中の臨床試験では経口投与されているSNIPR001を、静脈内投与、局所投与、および腹部腫瘤への直接投与という方法で使用しました。静脈内投与では、SNIPR001(2 mL、1 × 10⁹ PFU/mL)が1日2回投与されました。局所投与は目視可能な皮膚病変に対して薬剤をゆっくりと「注ぐ」ように塗布し、ドレッシング材で覆う前に少なくとも15~30分間放置して吸収させました。直接投与では、SNIPR001(6 mL、1 × 10⁹ PFU/mL)を超音波ガイド下での腹部腫瘤の数カ所への注射を8週間にわたり毎週実施されました。
  • SNIPR001の投与開始時、患者は11日前から開始されていた抗菌薬のチゲサイクリン、メロペネム、ならびにホスホマイシン、高用量アスコルビン酸、および副交感神経刺激薬ベタネコールの投与を受けており、既存の治療レジメンにSNIPR001が併用されたことになります。
臨床経過
  • SNIPR併用療法開始後1週間以内に腹部の皮膚病変は明らかに改善し、4週間後には数カ所の病変が完全に治癒しました。これに伴い、経時的な画像検査では腹部腫瘤の著しい縮小が認められました。腫瘤の体積は、ベースライン時の744.6 cm³から、8週後には373.4 cm³(50%減少)、1年後には82 cm³(89%減少)へと減少しました。尿漏れも外科的介入なしに消失しました。
  • ファージ投与開始後88日目の尿培養および161日目の腹腔内腫瘤の組織培養は、いずれも陰性になりました。
  • SNIPR001による治療期間中(ファージ療法開始から8週目まで)、血清によるファージ中和反応は認められませんでした。
考 察
  • 本症例の患者では、原因菌が多剤耐性を示し、マラコプラキアの一般的な管理法である複数の全身性抗菌薬投与は効果を発揮せず疾患が進行していました。また、腹腔内腫瘤が移植腎の遠位尿管を包み込み、かつ移植腎の血管系に近接していたため、外科的切除はリスクが極めて高いと判断されました。
  • SNIPR001を用いた補助的ファージ療法により、腹壁病変の急速な治癒や、腹腔内腫瘤の体積の大幅な減少を含む、顕著な臨床的改善が認められました。特に、腹腔内腫瘤の体積減少は、SNIPR001の投与が実施された初期段階において最も顕著でした。
  • しかし、併用療法にみられた臨床的効果は、細胞内での殺菌、細胞外細菌量の減少、バイオフィルムの破壊、および/または抗菌薬との相乗効果など、様々な要因に関連している可能性があり、今回それらが具体的に検証されたわけではありません。
  • また、約1年間に及ぶ併用療法において、SNIPR001(CRISPR-Cas改変ファージ)が特異的に影響を及ぼしたのか、あるいはファージ単独、もしくはファージ、抗菌薬、アスコルビン酸、ベタネコールの併用が臨床的反応をもたらしたのかも不明です。
crisp_bioメモ
  • 論文の考察にあるように、SNIPR001の投与と腹部腫瘤の縮小との間の因果関係は明確になりませんでした。
  • しかし、経口投与を介して腸マイクロバイオームから病原性大腸菌を選択的に消失させることが実証されていたSNIPR001が、重篤かつ免疫抑制状態にある患者に対して、静脈内、局所、あるいは病変部へ、安全に、直接投与することが可能であることが確認されたことは、SNIPR001の多用途性の可能性を示しています。
出 典
"First-in-Human Adjunctive Bacteriophage Therapy for Malakoplakia" Saima Aslam (1,8), Aleah Brubaker (2) , Mita Shah (3) et al., [+18] Clin Infect Dis. 2026-08-11. https://doi.org/10.1093/cid/ciag446
  1. Division of Infectious Diseases and Global Public Health, University of California San Diego, La Jolla, California, USA.
  2. Division of Transplantation and Hepatobiliary Surgery, University of California San Diego, La Jolla, California, USA.
  3. Division of Nephrology, University of California San Diego, La Jolla, California, USA.
  4. Infectious Diseases Section, Veterans Affairs San Diego Healthcare System, La Jolla, California, USA.
  5. Department of Radiology, University of California San Diego, La Jolla, California, USA.
  6. Division of Anatomic Pathology, Department of Pathology Division of Anatomic Pathology, University of California San Diego, La Jolla, California, USA.
  7. SNIPR Biome, Copenhagen, Denmark.
  8. Corresponding author
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