1. 皮膚埋め込み血糖値センサーを、上皮幹細胞のCRISPRゲノム編集により実現
- 【出典】“Development of an Intrinsic Skin Sensor for Blood Glucose Level with CRISPR-mediated Genome Editing in Epidermal Stem Cells” Yue J, Li Y, Gou X, Wu X. bioRxiv Posted September 28, 2017.
- マウス無細胞化真皮上で培養したマウス上皮幹細胞を、気相液相界面に暴露することで層化し、皮膚様のオルガノイドを生成、野生型マウスに移植することで、長期間定着。この同質遺伝子的移植プラットフォームを利用することで、挿入図にある遺伝子編集を加えたマウス上皮幹細胞を、血糖値をin vivoで測定可能とするバイオセンサーとして利用可能なことを示した。
- 挿入図にあるGGBPレポーターにさらにGLP1とマウスIgG-Fcフラグメントの発現カセットを加えることで、GLP1-Fc融合タンパク質の発現・分泌と、血中のGLP1レベル上昇を実現した。GLP1/GGBP発現細胞を移植したCD1マウスでは、高脂肪食による肥満化が有意に抑制された。
- 本手法は、糖尿病の診断・治療への応用に鍵らず、他の疾病の診断・治療へと展開可能である。
2.アレル特異的PCRアッセイに基づきゼブラフィッシュへの点変異ノックインの最適化を実現
- 【出典】“Successful optimization of CRISPR/Cas9-mediated defined point mutation knock-in using allele-specific PCR assays in zebrafish” Prykhozhij SV, 〜 Berman JN. bioRxiv Posted September 27, 2017
- ゼブラフィッシュにおける一本鎖オリゴデオキシヌクレオチド(ssODN)を修復テンプレートとするHDRを介した点変異ノックインの最適化;tp53、cdh5およびlmna遺伝子をモデルとしてアンチセンス非対称オリゴの利用をはじめとする既報の最適化法を評価;tp53では、相同アーム35-ntと90-ntを伴う126-ntテンプレートで効率が3〜10倍になり、F1世代への伝達率も20-40%に;AS-PCRにより偽陽性ノックインを検出。
3.DNAミスマッチ修復機構の影響を受けないリボソーム結合部位改変用オリゴ・ライブラリーの構築
- 【出典】“Efficient engineering of chromosomal ribosome binding site libraries in mismatch repair proficient Escherichia coli” Oesterle S, Gerngross D, Schmitt S, Roberts TM, Panke S. Sci Rep. 2017 Sep 26;7(1):12327.
- リボソーム結合部位(RBS)の編集による遺伝子発現レベル調節は、原核生物の遺伝子回路や代謝パスウエイの最適設計に有用な手法である。6-bpから8-bpの小さな領域を改変することで、遺伝子翻訳の上方あるいは下方制御が可能であり、改変のためのオリゴのライブラリー設計法も、RBS library calculator、MAGE Oligo Design Tool (MODEST)、Empiric Model and Oligos for Protein Expression Changes (EMOPEC)、Reduced Libraries (RedLibs)と数多く提案されてきている。
- しかし、ライブラリーをCRISPR/Cas9遺伝子編集技術によってホストに導入すると、ホストに内在するDNAミスマッチ修復(MMR)機能が誘導され、RBS領域の改変が起こらない場合がある。
- MMRはミスマッチのタイプと長さに依存する。今回、オフターゲット変異の頻度が高いMMR欠損株の利用や、一段階操作が増えるMMRの一時的不活性化の手段を取らず、MMRを回避可能なgenome-libraryoptimized-sequences (GLOS)をあらかじめ選択可能にするルールを整えることで(挿入図参照)この限界を突破可能なことを、E. ColiのlacZ遺伝子のRBS改変と、ビタミンB2生合成パスウエイの改変への応用で実証した。
4. dCas9が標的を探索する動態:E. coliとS. pyogenesにて
- 【出典】“Kinetics of dCas9 target search in Escherichia coli” Jones DL, Leroy P, Unoson C, Fange D, Ćurić V, Lawson MJ, Elf J. Science. 2017 Sep 29;357(6358):1420-1424.
- Ypetで標識したdCas9を、36箇所のlacO1-結合サイトが組み込まれたpSMARTプラスミドを帯びたE. coli細胞で発現、isopropyl-β-D-thiogalactopyranoside (IPTG)の添加または除去により、lacO1-結合サイトからのLacIの遊離またはlacO1-結合サイトへのLacIの結合を開始させることで、dCas9-YpetにlacO1-結合サイトへの結合可能性をオン・オフするプラットフォームを開発し、dCas9の動態を蛍光顕微鏡で単分子観察し、PCRで解析した。
- その結果、dCas9は標的発見までに6時間を要し、標的候補への結合は30ms未満と見積もられ、標的に結合後は複製完了まで結合し続けることを見出した。探索時間を短縮するためには、dCas9とsgRNAの濃度を高めることが必要である。
- 一方で、S. pyogenesでは、Cas9量がE. coli中のdCas9量のほぼ2倍にあたり、標的探索時間は1分程度と見積もられた。
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