ルーヴェン・カトリック大学(ベルギー)植物遺伝学・作物改良研究室のNico De Storme教授のNature 誌刊行論説と同時期に、フライブルグ大学生物学研究所IIのグループリーダーElke Barbez博士が率いる研究チームがNature Plants 誌にて、ゲノム編集作物に対する規制見直しを念頭におきながら、Ursula Martius Franklinの技術哲学に準拠して、バイオテクノロジー分野における技術開発に、特許、倫理、ガバナンス、社会受容性の観点も含めた持続可能なイノベーションシステムのあり方を論じました。ここでは、その中から特許に関する考察を紹介します。
EUにおけるゲノム編集作物の生物学的定義(NGT-1とNGT-2)について概ね合意がなされると、議論の焦点はガバナンスへと移り、中でも、特許の扱いが最も激しい議論を呼ぶ論点の一つとなりました。既知の遺伝的変異や従来の育種によって得られた遺伝的変異については、新たな特許保護の対象とはなりません。しかし、NGTに関連する新規の発明については、特許の対象となり得ます。
推進派は、特許がイノベーションに対する重要なインセンティブになると主張する一方、反対派は、特許が小規模な育種家や農家による技術利用を制限する恐れがあると懸念を示しています。また、農家が種子を自家採種し、再播種できるかどうかという点についても疑問が投げかけられています。
こうした懸念に対し、EUの新たな枠組みでは、透明性の向上や、公正なライセンス供与に向けた自主的な取り組みによって対応を図っています。
特許は、ゲノム編集が可能かどうかを決定するものではなく、他者がそれを利用する際の条件を定めるものです。EUは、透明性の向上とより公正なアクセスを確保することで、これらの懸念に対処しようとしてきました。これらの措置が十分なものとなるか、そして新たな枠組みが最終的に、より持続可能で強靭(レジリエント)な農業システムの実現に寄与するかどうかは、現時点では未知数です。
出 典
"CRISPR beyond biology: building a sustainable innovation system" Elke Barbez(1,2,4), Joachim Boldt(2,3), Jürgen Kleine-Vehn(1,2). Nat Plants. 2026-09-14. https://doi.org/10.1038/s41477-026-02410-9
- 1 Institute of Biology II, Molecular Plant Physiology (MoPP), University of Freiburg, Freiburg, Germany.
- Center for Integrative Biological Signalling Studies (CIBSS), University of Freiburg, Freiburg, Germany.
- Department of Medical Ethics and the History of Medicine, University of Freiburg, Freiburg, Germany.
- Corresponding author.
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