背 景
- 遺伝的モザイシズムはCRISPR-Cas9ゲノム編集に伴う現象として広く認識されていますが、その詳細な解析、特に低頻度の構造変異を伴う場合の解析は依然として困難です。
- モザイシズムを包括的に解析するには、正確な単一分子リードを用い、標的領域を網羅的かつバイアスなくシーケンシングする必要があります。
方 法
- ゲノム編集を施したゼブラフィッシュおよびその次世代(F1)個体におけるCRISPR-Cas9の編集結果を調べるため、PacBio社が提供するPCRフリーなターゲットシーケンシング技術である「PureTarget」を実施しました。CRISPR-Cas9によるゲノム編集は、受精卵の単一細胞期におけるマイクロインジェクションによって行われました。
- ここで使用したサンプルは、「研究チームが2022年にNature Communications誌 [*] から発表したロングリード-PCRを用いてゼブラフィッシュの2世代にわたるオフターゲットゲノム編集および大規模構造変異イベントを調査した際に解析したDNAサンプル」です。したがって本研究は、CRISPR-Cas9によって誘発された遺伝的変異およびエピジェネティックな変異(5mC)を同時に検証する手法としてPureTargetを評価することになります。
結 果
- プールされた幼生および個々のゼブラフィッシュから得た30サンプルについてシーケンシングに成功し、標的領域の平均カバレッジは1100倍を超えました。
- PacBioリードは標的領域において極めて高い精度(QV39)を達成し、すべてのリードが個別のDNA分子に由来するものでした。標的領域の2つのハプロタイプはバランスの取れたカバレッジ深度を示した一方、同一サンプルを用いたロングレンジPCRでは偏ったデータが得られました。
- PureTargetデータのさらなる解析により、ファウンダー(F0)個体において広範な遺伝的モザイシズムが認められ、ある成体ファウンダー個体では、標的部位において最大18種類、オフターゲット部位において11種類の異なる編集イベントが確認されました。
- 大規模な構造変異やオフターゲット変異を含むいくつかのCRISPR-Cas9編集結果は、F1世代へと遺伝しました。
- 特筆すべき点として、単一のファウンダーペアから得られたF1世代の同胞幼魚(juvenile offspring)の間で、最大7種類の異なる編集イベントが確認され、ファウンダーゼブラフィッシュの生殖細胞に遺伝的モザイシズムが存在することが裏付けられました。
- これは、CRISPR-Cas9編集による影響の一部が、次世代(F2世代)になって初めて現れる可能性があることを示唆しています。
- また、PureTargetデータを用いてDNAメチル化シグナルの解析も行いましたが、ゲノム編集サンプルにおいて5mC CpGレベルの変化は認められませんでした。
結 論
- PureTargetが、あらかじめ設定されたゲノム領域における遺伝的モザイシズムおよびDNAメチル化のプロファイリングを、効率的、正確、かつバイアスなく行うことを可能にすることが、示されました。
- 今回の結果は、CRISPR-Cas9によって誘発されるモザイシズムが広範に存在し、ゲノム編集実験において考慮すべき重要な要因であることを示しています。
[*]
- CRISPR-Cas9は,生体内のオンターゲットおよびオフターゲット部位に構造変異を誘導し,それは,世代を超えて遺伝する. crisp_bio 2022-02-02. ;"CRISPR-Cas9 induces large structural variants at on-target and off-target sites in vivo that segregate across generations."
出 典
"Accurate characterization of CRISPR-Cas9 genome editing outcomes and mosaicism with near-perfect long reads" Ida Höijer(1,2,4) [..] Adam Ameur(1,2,4) [+6]. Genome Med. 2026-09-15. https://doi.org/10.1186/s13073-026-01772-1
- Department of Immunology, Genetics and Pathology, Uppsala University, Uppsala, Sweden
- SciLifeLab, Uppsala University, Uppsala, Sweden
- Department of Human Genetics, Leiden University Medical Center, Leiden, The Netherlands
- Corresponding authors.
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