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~ ソース・シンク・バランスをとる育種設計が求められることを再認識

背 景


イネの収量を持続的に向上させるには、複数の農業形質を協調的に改変する必要があります。収量向上には、光合成によって炭水化物を生成・送出する葉や茎などの「ソース」器官と、その炭水化物を蓄積・利用する種子などの「シンク」器官の性能を協調的に高めつつシンク・ソース・バランスを保つ必要があるからです。しかし、多重ゲノム編集による農業形質への影響を予測することは、依然として困難でした。

多重ゲノム編集に有利なCas12aによるアプローチ

Cas12aは、Cas9と異なり、単一の転写産物(プレcrRNAアレイ)から自らのRNase活性でガイドRNA(crRNA)を生成できること、また、tracrRNAを必要とせず、ガイドRNAのサイズがコンパクトになることから、Cas12aシステムは多重編集のベースとして優れています。

タイのメージョー大学 とカセサート大学の研究チームは今回、CRISPR-Cas12aシステムをベースに、アグロバクテリウムを介した単一のコンストラクトを用いて、インディカ種イネ品種Kasalath(カサラス)において、Gn1a、TAD1、ROC5、GS3、GW2、LARGE2という6つの収量関連遺伝子を標的とする多重編集を試みました。

Cas12a多重編集の結果
  • 28個体のT0植物についてサンガーシーケンシングを行った結果、Gn1a(3.57%)、ROC5(7.14%)、GS3(35.71%)、GW2(10.71%)において編集が検出されましたが、TAD1とLARGE2では編集は検出されませんでした。
  • その上で単一、二重、および三重の編集個体を取得し、4種類の単一変異体、2種類の二重変異体、および2種類の三重変異体についてホモ接合体系統を確立するに至りました。
  • 分子解析の結果、取得されたGW2対立遺伝子変異はイントロン領域に生じており、GW2のコード配列には変化を及ぼしていないことが示されました。
多重編集の効果
  • 13種類の農業形質に関する表現型評価から、農業形質への影響は単純な相加効果ではなく、対立遺伝子のタイプと遺伝子座の組み合わせによって決定される複雑な事象であることが明らかになりました。
  • フレームシフト変異を伴う対立遺伝子 gs3-13d は、分げつ数や穂数の増加、一方で粒長や収量の減少といった、強力な多面発現効果を示しました。[* 3塩基欠失]
  • 三重変異体 roc5-7d gw2-8d gs3-3i**は、野生型と同等の収量性能を維持しましたが、葉の形が変化しました。[** 3塩基挿入]
  • 別の三重変異体、"gw2-8d gs3-3i large2-10d"では、粒幅、粒厚、千粒重の増加が見られたものの、草丈、分げつ数、結実率、穂当たり収量、個体当たり収量が著しく低下し、ソース・シンク・バランスが崩壊しました。
まとめ
  • こうして、KasalathにおいてCRISPR/Cas12aによる多重編集が可能なことが実証されました。
  • 同時に、多重なゲノム編集は全体的な生産性において形質間のトレードオフを招く可能性があるため、戦略的な対立遺伝子(アレル)の組み合わせを通じてソース(葉の構造や光合成能)とシンク(粒の大きさや数)の形質のバランスを最適化することが極めて重要になることが、明らかになりました。
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出 典
"Multiplex CRISPR/Cas12a editing of ROC5, GS3, GW2, and LARGE2 reveals effects on yield-related traits in rice cultivar Kasalath" Teerapong Janthabut(1) [..] Supachai Vuttipongchaikij(2,3,4), Chotipa Sakulsingharoj(1,4). Transgenic Res. 2026-09-21. https://doi.org/10.1007/s11248-026-00511-x
  1. Program in Genetics, Faculty of Science, Maejo University, San Sai District, Chiang Mai, 50290, Thailand.
  2. Department of Genetics, Faculty of Science, Kasetsart University, 50 Ngam Wong Wan Road, Chatuchak, Bangkok, 10900, Thailand.
  3. National Center for Agricultural Biotechnology, Kasetsart University Institute for Advanced Studies, Kasetsart University, Chatuchak, Bangkok, 10900, Thailand. 
  4. Corresponding authors
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