1.[レビュー] ゲノム工学:神経筋疾患の遺伝子治療の新展開
- 【出典】“Genome engineering: a new approach to gene therapy for neuromuscular disorders” Nelson CE, Robinson-Hamm JN, Gersbach CA. Nat Rev Neurol. 2017 Sep 29.
- デュシェンヌ型筋ジストロフィ、脊髄性筋萎縮症および筋緊張性ジストロフィを含む多くの神経筋疾患について、病因遺伝子変異が明らかになってきたところ、近年のメガヌクレアーゼ、ZFNs、TALENsおよびCRISPR-Cas9のゲノム編集技術の進展によって、ゲノム工学により一遺伝子性疾患の遺伝子治療が現実になりつつある。
- 遺伝子治療の臨床展開における最大の課題が、ゲノム編集用ツールの標的細胞・組織への送達技術である。前臨床モデルでは、遺伝子改変細胞、ウイルスベクター、またはウイルスベクター以外のキャリアによる送達が試みられてきた。本稿は、遺伝子治療の臨床展開が期待できる技術を中心に、前臨床試験研究が進行中の戦略をレビュー。
2.CRISPR-Cas9技術によるミオシリン遺伝子変異を原因とする緑内障の治療
- 【出典】“CRISPR-Cas9–based treatment of myocilin-associated glaucoma” Jain A, Zode G ~ Sheffielda VC. PNAS Published online before print October 2, 2017.
- ミオシリン遺伝子変異は、原発開放隅角緑内障(primary open-angle glaucoma, POAG)患者に最も共通に見られる機能獲得変異であり、線維柱帯( trabecular meshwork, TM)に影響を与え、眼圧を高める。今回、ヒト線維柱帯細胞in vitro、マウスモデルin vivo、およびヒトの灌流培養目ex vivoにおいてCRISPR-Cas9で遺伝子編集を行い、変異ミオシリン遺伝子とその機能をCRISPR-Cas9で喪失させることで、小胞体ストレスと眼圧の低減と、マウスの目における緑内障進行の抑制、を実現した。
3.CRISPR/Cas9による酵母の大規模変異体ライブラリー構築と機能スクリーニング
- 【出典】“High-throughput creation and functional profiling of eukaryotic DNA sequence variant libraries using CRISPR/Cas9” Guo X, Chavez A, Tung A, Chan Y, Cecchi R, Garnier SL, Kaas C, Kelsic E, Schubert M, DiCarlo J, Collins J, Church G. bioRxiv. Posted September 29, 2017.
- 膨大な有形無形のコストを要すること、および、オフターゲット変異を排除する技術が成熟していなかったことから、これまで、真核生物のゲノムワイド変異体ライブラリーの整備が進んでいなかった。今回、SpCas9とHDRテンプレート用ドナーDNAによる変異体ライブラリーのハイスループット構築法を設計
- DNAヘリカーゼ遺伝子SGS1を標的とするタイリング・ライブラリー(標的領域の欠失と置換)と、100アミノ酸より短いORFs(smORFs)を標的とするゲノムワイド・ライブラリーを構築し、機能スクリーニングまで可能なことを実証した。
4.Cas9 RNPとドナーDNAのキャリアとして金ナノ粒子を利用することで、相同組み換えによる修復(HDR)を誘導
- 【出典】“Nanoparticle delivery of Cas9 ribonucleoprotein and donor DNA in vivo induces homology-directed DNA repair” Lee K, ~ Conboy I, Murthy N. Nat Biomed Eng. Published online 02 October 2017.
- DNAとエンドソーム膜を破壊する陽イオン性ポリマーを帯びた金粒子をキャリアとして、Cas9 RNPとドナーDNAを種々の細胞型に送達し、さらに、モデルマウスにおいて、局所注射によりオフターゲット編集を最小限に留めつつデュシェンヌ型筋ジストロフィの病因変異遺伝子の効率的修復を実現。
コメント