1.[HIGHLIGHT] CRISPR/Cas9によるデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の遺伝子治療

  • 責任著者:Jerry R. Mendell (Nationwide Children's Hospital)
  • DMD 遺伝子のエクソン23における点突然変異を標的とするゲノム編集によるDMD治療を試みたScience 20151231日号掲載3論文をハイライト
  • [これまでのDMD療法の試み] コルチコステロイド/デフラザコート療法;アンチセンスモルフォリノの一種eteplirsenによるDMD 遺伝子のエクソン51をスキップ;SMT C1100によるユートロフィン発現の上方制御ミニ/マイクロ(4-5kb)ジストロフィン送達
  • [CRISPR/Cas9によるDMD遺伝子編集] 3論文共に、DMDモデルマウスにおいて、マーカから見ても機能的にみてもDMDからの回復が見られ、オフターゲット作用も観察されなかった.したがって、ヒト化モデルマウスでの実証を経て短期間で臨床応用に向かうであろう.変異DMD 遺伝子の1つまたはそれ以上のエクソン除去することでDMD患者のほぼ80%が恩恵を受ける.新生児スクリーニング結果に基づいて(例 血中クレアチンキナーゼが通常の10倍以上)、早期に遺伝子編集を適用することが望ましい.

2.[論文] CRISPR/Cas9で作出したシトクロムP450(CYP)2E1ノックアウト・ラットモデルの特性

  • 責任著者:Xin Wang; Yu Tang; Dali Li; Mingyao Liu (East China Normal University/Texas A&M U. Health Science Center)
  • シトクロムP450(CYP)2E1は、異物代謝と化学毒性において重要な役割を果たすだけでなく、アルコール肝障害と糖尿病のような多くの疾患に関与する.しかし、これまでCYP2E1の機能解析を行える動物モデルがほとんど存在しなかった.
  • 今回、CRISPR/Cas9技術によってCyp2e1 ノックアウト(KO)・ラットモデルの作出に成功した.オフターゲット作用は検出限界以下であった.
  • Cyp2e1 KOラットは、CYP2E1ノックアウトによってCYP2E1基質代謝は不活性になったが、生育かつ繁殖可能であり顕著な生理学的異常は見られなかった.
  • Cyp2e1 KOラットは、化学物質代謝、毒性、発がん性および薬物相互作用におけるコア因子を研究するための有力なツールである.

3.[短報] ヒト肝細胞におけるPCSK9 を標的とするin vivo 編集

  • 責任著者:Qiurong Ding (Shanghai Institute for Biological Sciences)
  • 家族性高コレステロール血症の原因遺伝子として特定されたPCSK9Proprotein Convertase Subtilisin/Kexin Type 9)のマウス・オーソログをin vivo でゲノム編集した結果は、PCSK9 遺伝子の編集を心血管疾患予防に応用できる可能性を示した.
  • しかし、臨床へと展開するには、正常なヒト細胞のヒト遺伝子を対象として、効率(標的への変異導入)と安全性(オフターゲット作用を起こさない)を検証する必要がある.
  • 今回、CRISPR/Cas9を利用して、ヒトの肝細胞を帯びたヒト化マウスのキメラ肝臓において、ヒトPCSK9を標的とする遺伝子編集を試み、効率50%を達成し、ヒトPCSKタンパク質の血中濃度の低減をみた.オフターゲット作用は最小限であった.

4.[レビュー] ヒトとウイルスの相互作用 - CRISPRRNAiと一倍体細胞をノックアウトするか?

  • 責任著者:Abraham L. Brass(U. Massachusetts Medical School)
  • この10年間で、機能喪失型機能ゲノミクスによってヒトとウイルスの相互作用の研究が大きく進展し、病原ウイルスのヒト細胞における複製機構の理解が進んだ.このゲノミクスの革命は、RNAiと一倍体細胞スクリーニング(レトロウイルスによるランダム変異導入実験)、なかでもRNAi、によってもたらされた.一方、今やCRISPR/Cas9システムが大規模機能ゲノミクスのツールとして利用され、これらに取って代わる勢いである.
  • ヒトとウイルスの相互作用研究への利用の観点から3手法を比較レビュー

【出典】

  1. [HIGHLIGHT] Mendell, J. R. & Rodino-Klapac, L. R. "CRISPR/Cas9 treatment for Duchenne muscular dystrophy." Cell Res. Published online 2016 Mar 1.
  2. [論文] Wang, X. et al. "Characterization of novel cytochrome P450 2E1 knockout rat model generated by CRISPR/Cas9." Biochem. Pharmacol. Published online 2016 Mar 3.
  3. [短報] Wang, X. et al. "CRISPR-Cas9 Targeting of PCSK9 in Human Hepatocytes In Vivo ." Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. Published online 2016 Mar 3.
  4. [レビュー] Perreira, J. M., Meraner, P. & Brass, A. L. "Functional Genomic Strategies for Elucidating HumanVirus Interactions: Will CRISPR Knockout RNAi and Haploid Cells?" Advances in Virus Research. Published online 2016 Mar 2.