crisp_bio

論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

[出典] Zheng Q. et al. “Reconstitution of UCP1 using CRISPR/Cas9 in the white adipose tissue of pigs decreases fat deposition and improves thermogenic capacityProc Natl Acad Sci U S A. Published online before print October 23, 2017;[NEWS] ]Service K. “These gene-edited pigs are hardy and lean—but how will they taste?Science. Oct. 23, 2017 , 3:00 PM.
  • ミトコンドリア脱共役蛋白質(uncoupling protein;UCP)のUCP1(サーモゲニン)は褐色脂肪組織における熱発生をもたらし、寒冷からの生体の保護やエネルギー恒常性の維持の必須因子である。
  • 家畜ブタの祖先は2,000万年前に機能的UCP1遺伝子を欠損したとされているが、それゆえ寒冷に弱くまた脂肪沈着しやすく、新生仔死亡率が高い。また、寒冷地での飼育には保温設備が必要になり、脂肪沈着(肥満)ブタは成長が遅いため、飼料の経費もかかることもあり、UCP1遺伝子欠損は、生産効率を下げる要因になっている。
  • 今回、幹細胞生殖生物学国家重点実験室Jianguo Zhaoらの中国の研究グループは、CIRPS/Cas9技術を利用してUCP1を補うことを試みた。すなわち、CIRPSR/Cas9を使用するが相同組換え修復を介さず(*)、マウス由来のアディポネクチン-UCP1を、ブタの内在UCP1遺伝子座に効率的に組込み、UCPノックイン(UCP KI)ブタを作出した。ブタUCP1の第2エクソン内のCas9標的部位の配列(ベイト配列)に脂肪組織特異的アデポネクチン・プロモーター、マウスUCP1のcDNA及び3’UTRを融合したターゲッティング・ベクターを構築し、Cas9-gRNAプラスミドとともに、ブタ胚由来線維芽細胞に導入する。ターゲッティング・ベクターの5’末端がCas9により切断された二本鎖DNAの3’末端へと結合することで、ブタUCP1遺伝子座へのマウスUCP1が挿入される。
  • (*) [参考文献] “Intron targeting-mediated and endogenous gene integrity-maintaining knockin in zebrafish using the CRISPR/Cas9 system” Cell Res. 2015 May; 25(5): 634–637.;
  • UCP KIブタは、寒冷暴露4時間体温維持機能を維持する能力を獲得し、脂肪沈着が低減し、及び枝肉リーンの割合が増加することを見出した。身体活動レベルや日々の総消費カロリーには変わりなかった。
  • さらに、白色脂肪組織(WAT)におけるUCPの異所発現により、脂肪分解の亢進を介して、脂肪沈着が劇的に減少し、枝肉における赤身の比率が上昇することを見出した。
  • UCP KIはブタの保護と経済的損失の圧縮に貢献する(Science NEWSの見出しは"お味は?”となっている)。

このエントリーをはてなブックマークに追加

コメント

コメントフォーム
評価する
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット