(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/03/11)
  • [出典] Clarke CJ ~ Reynolds AR (Inst. Cancer Research), Norman JC (Cancer Research UK Beatson Inst.) "The Initiator Methionine tRNA Drives Secretion of Type II Collagen from Stromal Fibroblasts to Promote Tumor Growth and Angiogenesis" Curr. Biol. 2016 Mar 21;26(6):755-65. Published online 2016 Mar 3.
  • 研究チームはこれまでに、がん間質におけるtRNAi^Met発現の異常が腫瘍の成長を支援する現象、腫瘍関連繊維芽細胞(cancer-associated fibroblasts)におけるtRNAi^Metの発現亢進、を見出していた.今回、tRNAi^Met遺伝子の遺伝子を2重に発現するモデルマウス(2+ tRNAi^Metマウス)を作出し、野生型マウスと比較対照する事から、がん間質が腫瘍成長を支援する分子機構の一端を明らかにした.
  • 2+tRNAi^Metマウスでは、皮下移植がん細胞の細胞外マトリクス(ECM)における血管内皮細胞と繊維芽細胞の遊走が亢進し、腫瘍の血管新生が亢進していた.
  • SILAC質量分析の結果は、tRNAi^Metの発現亢進が2型コラーゲンの合成と分泌の亢進をもたらすことを示した(繊維芽細胞は1型コラーゲンを産生する)、2型コラーゲンの発現を抑制するとtRNAi^Met発現亢進の影響は失われた.
  • プロリン水酸化酵素阻害剤3,4-ジヒドロキシ安息香酸エチル(DHB)を利用して、コラーゲン合成がtRNAi^Metによる腫瘍促進性を示す間質に与える影響を分析した.DHBは野生型マウスにおける腫瘍成長に影響しなかったが、2+tRNAi^Metマウスにおいて血管新生と腫瘍成長を抑制した.
  • さらに、2型コラーゲンの発現は、高悪性度漿液性卵巣がんの予後不良の指標になった.
  • したがって、tRNAi^Metの発現亢進が、腫瘍関連間質繊維芽細胞に2型コラーゲンを豊富に含むECMの合成と分泌を促し、ひいては、血管内皮細胞の遊走と血管新生を亢進すると見られる.