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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

[出典] Nachmanson D, ~ Kennedy SR, Risques RA. “CRISPR-DS: an efficient, low DNA input method for ultra-accurate sequencing” bioRxiv Posted October 21, 2017.

CRISPR-DSとは
  • 今回の責任著者の一人でもあるScott R. Kennedyらワシントン大学の研究チームは先行研究(PNAS, 2012)で、次世代シーケンシング(NGS)の一法としてPCRやシーケンシングに由来するエラーを排除して極めて稀な変異を検出可能とする”Duplex Sequencing(DS)”法を開発していた。DSは超高感度であるが、大量のDNAを必要とする弱点があったところ、今回、DSにCRISPR/Cas9を組み合わせて、その弱点を解消し、癌病理解析や法医学解析などに多い微量なDNAからの高感度・高精度なDNA変異判定を可能とした。
CRISPR-DSの手法と従来DSとの比較(下図参照)
  • DSの変異検出は極めて高感度であるが、アンプリコンシーケンシングと異なり(*)標的ゲノム領域とプローブとのハイブリダイゼーションにより標的をキャプチャー(ハイブリッドキャプチャー)するプロセスを介することからオンターゲット・リードの比率が5-10%に止まり、大量のDNAサンプルを必要とする。(*) Target Capture for Next Generation Sequencing (NGS)クリニカルシーケンシングの技術開発と実運用を目指して(かずさDNA研究所技術開発部ヒトDNA解析グループ)参照
  • 今回、CRISPR/Cas9 による切断とSPRIビーズによる切断されなかったDNAを排除するサイズ選択を経ることで、標的の効率良い濃縮を実現し、DNAサンプルの超音波破砕から始まるDSに対して、時間とコストを大幅に低減した。CRISPR-DS
CRISPR-DSの実証実験
  • TP53のコーディング領域とイントロン領域(上図 a参照) を標的として;DNAフラグメントのサイズを〜500 bpに設定;10-250 ngのDNA量で従来DSと性能比較
  • 正常な膀胱組織由来DNA解析:オンターゲットリード率が~5%から>90%へと大きく改善;DNA25ngの解析がDNA250ngの従来DSに相当;短いフラグメントへの偏りが無い・バンド/ピークが明瞭でシーケンシング前にライブラリーの品質判定可能・フラグメントが標的全領域を一様にカバー
  • 卵巣癌患者由来腹水由来DNA解析:DNA 100ng(従来DSで必要であったDNA量の30-100分の1)から、従来DSで同定したTP53変異全てを同定
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