crisp_bio

科学分野の比較的新しい論文と記事を記録しておくサイト: 主に、CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム編集, エピゲノム編集, 遺伝子治療, 分子診断/代謝工学, 合成生物学/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野) の観点から選択し、時折、タンパク質工学、情報資源・生物資源、新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症、機械学習・AIや研究公正からも選択

多発性硬化症(MS)患者の腸内バクテリアは、ヒトT細胞を調節し、マウスモデルの症状を悪化する
Cekanaviciute E 〜 Baranzini SE. “Gut bacteria from multiple sclerosis patients modulate human T cells and exacerbate symptoms in mouse models” Proc Natl Acad Sci U S A. 2017 Oct 3;114(40):10713-10718.  Published online before print September 11, 2017
  • 腸内菌叢が人の全身においてT細胞の機能を調節する。UCSFの Sergio E. Baranziniらは、腸内菌叢が中枢神経系の自己免疫疾患である多発性硬化症(MS)に影響を与えるという仮説のもとに、治療を受けているMS患者71名と健常者71名のマイクロバイオームを解析した。
  • 腸内菌叢の全体構造に大きな差異は見られなかったが、MSに有意に相関する特定のバクテリア群が存在することを見出した。
  • MS患者において、Akkermansia muciniphilaAcinetobacter calcoaceticusが共に増加しており、ヒトの末梢血単核球に炎症反応を誘導する一方で、Parabacteroides distasonisが減少していた。P. distasonisは、マウスにおいて、抗炎症性IL-10を発現するヒト CD+CD25+T細胞と IL-1O+FOXP3+制御性T細胞を活性化した。
  • MS患者からの便を移植した無菌マウスでは、重篤な実験的自己免疫性脳脊髄炎が発症し、健常者の便を移植した無菌マウスと比べて、L-10+制御性T細胞が低減していた。
  • 本研究により、自己免疫応答を調節するヒト腸内バクテリアが同定され、腸内菌叢がMSの治療標的足り得ることが示唆された。
多発性硬化症(MS)患者の腸内菌叢が、モデルマウスに自己免疫性脳脊髄炎を誘導する
Berer K 〜 Krishnamoorthy G, Wekerle H. “Gut microbiota from multiple sclerosis patients enables spontaneous autoimmune encephalomyelitis in mice” Proc Natl Acad Sci U S A. 2017 Oct 3;114(40):10719-10724. Published online before print September 11, 2017.

[背景]
  • 多発性硬化症(MS)の発症リスクと関連する遺伝的変異がゲノムワイド関連解析(GWAS)から200以上同定され、また、環境リスクとして喫煙、太陽光不足、エプスタイン・バール・ウイルス(EBウイルス)感染が挙げられていたところ、近年、MSのリスク要因として腸内菌叢が浮かび上がってきた。
  • マウスでは、実験的自己免疫性脳脊髄炎(experimental autoimmune encephalomyelitis, EAE)を自然発症する再発寛解(relapsing-remitting, RR)型トランスジェニックマウスモデルにおいて、腸内常在菌と脳内自己免疫との因果関係が報告されていた。このモデルでは、SPF(Sprecific Pathogen Free)環境で飼育したマウスがほぼ全て、1月齢までに再発寛解型(relapsing–remitting、RR)MSを発症した。一方で、無菌環境で飼育したマウスは発症しないが、SPF環境飼育マウスの便の成分に暴露するとすぐに、RR型MSを発症した。こうして、脳炎惹起性免疫応答が腸内菌叢によって媒介されることが示唆された。
  • ヒトの腸内菌叢は、遺伝的多様性、食事などのライフスタイル、年齢、療法、神経系の状態など複雑な要因に影響されることから、腸内菌叢と疾患に関するマウスでの実験結果をヒトに展開することは容易ではない。
[実験と成果]
  • MPIのGurumoorthy KrishnamoorthyaとHartmut Wekerleaらの研究チームは今回、遺伝的変異と環境の差異を最小限に止めるため、白人でドイツにおいて健常な双子と一緒に成人したMLを発症した双子、34組、を被験者として、腸内菌叢とMSの相関を解析した。
  • はじめに、MS双子と健常双子の腸内菌叢を、16SrRNAアンプリコン解析とメタゲノム・ショットガン・シーケンシングで比較し、健常双子に対してMS双子において顕著に増加しているAkkermansiaをはじめとするいくつかの分類群を同定した。
  • 続いて、被験者由来の便を無菌モデルマウスに移植し、MS双子由来の便移植が、健常双子由来の便移植よりも高頻度で自己免疫応答を引き起こした。両者の腸内菌叢プロファイルの違いで注目すべきは、前者ではSutterellaが後者より減少していることであった。Sutterellaについては、炎症性腸疾患を和らげモデルマウスでのEAEを抑制することが報告されている。また、MS双子由来便移植を受けたマウスではまた、IL-10の産生が低下していた。IL-10は、免疫反応に対する抑制性サイトカインである。
  • MS双子の腸内菌叢には、マウスモデルにおいてMS様自己免疫疾患を亢進するファクターが含まれていることが示唆された。
[腸内菌叢とMS 関連論文] Cosorich I 〜 Falcone M. “High frequency of intestinal TH17 cells correlates with microbiota alterations and disease activity in multiple sclerosis” Sci Adv. 2017 Jul 12;3(7):e1700492.

このエントリーをはてなブックマークに追加

コメント

コメントフォーム
評価する
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット