[出典]
  • "Multifunctional biohybrid magnetite microrobots for imaging-guided therapy" Yan X, ~ Zhang L. Science Robots. 2017 Nov 22;2(12): eaaq1155
  • 香港中文大学とエディバラ大学およびマンチェスター大学の研究チームは今回、バイオハイブリッド磁化ロボット(biohybrid magnetic robot; BMR)を開発し、BMRがラット体内での操作と追跡が可能なことを実証し、また、癌細胞選択的細胞毒性も発揮することを見出した。
微細藻類BMR作製法
  • マグネタイトのナノ粒子(NP)懸濁液に螺旋状のスピルリナ Spirulina platensisを浸すことで、機能化のプロセスを経ることの無い1段階の操作で、磁気を帯びた微細藻類からなるマイクロロボット(magnetized S. platensis; MSP)を大量生産した。スピルリナの表面にマグネタイトNPは強固に結合し磁気を帯びた被覆を形成する。また、この被覆層の厚さを浸漬時間で調節可能である。
  • こうして、BMRsの磁気特性の制御が可能になり、また、自家発光といったスピルリナの特性を活かすことができる。また、マグネタイトNPを介した機能の付加も期待できる。さらに、同じ手法で、楕円状のTetraselmis subcordiformisのBMR化(MTS)や球状のChlamydomonas reinhardtiiのBMR化(MCR)が可能である。
磁気による運動操作
  • 三軸のヘルムホルツコイルシステムを利用して磁場を適切に設定することで、 MSPMCRおよびMTSの運動を操作することが可能であったが、BMRの開発に向けて回転運動と共役した推進運動が可能なマイクロスイマーとして MSPに絞り込んだ。
  •  MSPはイオン交換水から始まり、希釈血液、胃液、尿、そして粘性が高いピーナッツ油の中で優れた運動性を示し、また、超常磁性で残留磁化が存在しないことからBMR自身が凝集しないことが特長である。
 MSPの蛍光特性
  • 自家蛍光のピーク強度は浸漬時間(-0/-6/-24/-27時間)と負に相関し、被覆層が厚くなるにしたがってピークの波長がレッドシフトし、半値幅が広がった。また、蛍光強度の安定性や、pH依存性も確認した。したがって、浸漬時間による蛍光特性の調節や、体液環境の変化の遠隔センシングへの利用が可能である。
蛍光によるin vivoイメージング
  • 皮下組織切片とヌードマウスの腹腔(壁側腹膜と内臓腹膜の間の空間)にて、蛍光マーカーを加えることなく、緑色光励起による強い赤色光放射を確認;蛍光強度はサンプル濃度と共に一様に上昇し、注入後15時間で減少し始めた。
磁気共鳴(MR)in vivoイメージングと運動制御
  • 蛍光によるイメージングは表皮から数cmの深さまでに限定されるが、マグネタイトNPsはMRイメージング剤として広く利用されていることから、 MSPによるMR in vivoイメージングで体内深部の観察を期待できる。
  • ブタ皮膚ゼラチンにて、明確なMRイメージング・コントラストを観察し、また、それがサンプル濃度と被覆層の厚さに依存することを同定;さらに、ラット個体の皮下組織と胃における MSP群のイメージングを確認し、さらに、回転磁場を加えることで胃の中での MSP群の運動制御も実現した。
MSPの分解
  • DPBS溶液での分解実験から、浸潤時間が長いほど安定であることを確認した。例えば、24時間/72時間浸潤 MSPは、それぞれ、72時間/168時間インキュベーション後に断片化した。また、分解に応じて蛍光特性が変化することも確認した。
細胞毒性
  • MTT試験により、3T3繊維芽細胞、SiHa子宮頚癌細胞およびHep G2肝臓癌細胞に対する細胞毒性を評価し、MSTが癌細胞特異的(特に、SiHaに対して)に細胞毒性を発揮することを同定;マグネタイトだけのMTT 試験などから、この細胞毒性はスピルリナ由来の生物活性化合物によるものと推定。
マイクロロボット/ナノロボット関連記事
  • [News and Views] "Nanotechnology: A molecular assembler" Kelly TR, Snapper ML. Nature. 20 Sept 2017.