[注] 本稿はCRISP_SCIENCEのCRISPR関連ツイート(2017年12月9日)に準拠しています。

1.[PROGRESS]原核生物のアルゴノートタンパク質は、ゲノム編集ツール足り得るか?
  • Hegge JW, Swarts DC, van der Oost J. "Prokaryotic Argonaute proteins: novel genome-editing tools?" Nat Rev Microbiol. 2018 Jan;16(1):5-11. Published online 2017 July 24.
  • アルゴノートは真核生物においてRNAiシステムの鍵となるタンパク質(以下、eAgos)として発見され、その後、アーケアとバクテリアにおいて相同なタンパク質(以下、pAgos, prokaryotic Argonaute proteins)が発見された。今回、核酸にガイドされ外来核酸に対して宿主を保護するシステムに関与するlong pAgoに注目し、そのゲノム編集の可能性を議論する。
  • Long pAgoのドメイン構造:ドメイン構造に基づいてpAgosは、long pAgos、short pAgosおよびPIWI-RE(P-element induced wimpy testis with conserved R (Arg) and E (Glu) residues)に分類され(原論文Figure 3)、この中で、long pAgosだけが実験研究されており、そのドメインの構造はeAgosに類似している。
  • pAgosの機能:eAgoはRNAにガイドされたRNAi機能を有す;pAgoは由来微生物依存で、RNAガイドRNAiに加えて、RNAガイドDNAi(Rhodobacter sphaeroides由来RsAgo;原論文Figure 2-b 参照)、DNAガイドRNAiおよびDNAガイドDNAi(Thermus thermophilus由来TtAgo;原論文Figure 2-a 参照)と多様な機能を有す(原論文Table1とFigure 2);TtAgoとRsAgo以外のlong Agoの機能;short pAgosとPIWI-REタンパク質の機能
  • pAgoによるゲノム編集:ssDNAを切断するlong pAgosは、ゲノム編集ツールとして、CRISPRエフェクター複合体の代替ツールになる可能性を秘めている。Cas9およびCas12aと異なり、pAgosは、PAMを必要とせず、また、DNAガイドは15〜24-ntとRNAガイドよりも短く合成が容易であり、また、75-85 kDaと小型である。しかし、dsDNAの切断には、pAgo-ガイド複合体が1組必要である。この手法は、好熱性バクテリア由来のpAgoによって実証されたが、中温生物には適用が難しい。
  • Natronobacterium gregoryiから37 °Cで活性を示すNgAgoが同定され、ヒト細胞株のゲノム編集が報告されたが、第三者研究チームによる再現がなされず物議を醸していた。その後、ゼブラフィッシュにおいてNgAgoによる特定の遺伝子のノックダウンが示され、これはNgAgo-siDNA複合体のDNA結合が、転写サイレンシングを誘導すると示唆された(Cell Res, 2016)。
  • pAgos-siDNAの送達にも、CRISPR/Casシステムの送達とは異なる課題の解決が必要ではあるが、CRISPR/Casシステムのなかでゲノム編集に実用になるシステムはごく少数であり、既知のlong pAgoの機序が多様なことから、新たなlong pAgoあるいはshort pAgoやPIWI-REタンパク質が、現在知られているpAgoの限界を超えるゲノム編集システム能力を秘めている可能性がある。
2.[PROGRESS]抗-CRISPRの発見、分子機構そして機能