[注] 本稿はCRISP_SCIENCEのCRISPR関連ツイート(2017年12月10日)に準拠しています。

1.CRISPR-Cas編集のオンターゲット選択性を、sgRNAsの化学修飾によって向上
  • Ryan DE, ~ Bruhn L. "Improving CRISPR–Cas specificity with chemical modifications in single-guide RNAs" Nucleic Acids Res. 2017 Dec 4.
  • 2′-O-メチル-3′-ホスホノ酢酸(2′-O-methyl-3′-phosphonoacetateまたは‘MP’)によりsgRNAを構成するgRNAのリボース-リン酸骨格の20-ntのうち特定のサイトを修飾することで(Figure 1 A 参照)、高効率のオンターゲット編集を損なうことなくオフターゲット編集を顕著に低減する(Figure 1 B 参照)ことに成功;HBBVEGFAIL2RGおよびCLTA4遺伝子を対象として実証.
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2.Cpf1リボ核タンパク質とssDNAにより、Chlamydomonas reinhardtiiにおける効率的な標的DNAの編集・置換を実現
  • Ferenczi A, Pyott DE, Xipnitou A, Molnar A. "Efficient targeted DNA editing and replacement in Chlamydomonas reinhardtii using Cpf1 ribonucleoproteins and single-stranded DNA" Proc Natl Acad Sci U S A. 2017 Dec 5.
  • 藻類、植物および毛様体生物学の研究資源として重要でありながらこれまで標的核内遺伝子の編集が困難であったChlamydomonas reinhardtiiにおいて、 LbCpf1リボ核タンパク質(RNP)と一本鎖修復用DNAテンプレート(ssODNs)を同時に送達することにより、〜10%(従来法の500倍)の効率で精密な標的DNA置換を実現。
  • 具体的には、外来遺伝子や選択マーカを必要としない配列特異的変異導入と内在遺伝子座のエピトープ・タギングを実現。
3.Cas9によるゲノム編集におけるgRNA構造の最適化
  • Xu J, Lian W, Jia Y, Li L, Huang Z. "Optimized guide RNA structure for genome editing via Cas9" Oncotarget. 2017 Nov 7; 8(55): 94166–94171.
  • SpCas9に組み合わされているsgRNAは、短縮されたcrRNAとtracrRNAで構成されている。著者らは今回、短縮部分がループ構造を形成しgRNAの構造を安定化し、ひいてはゲノム編集効率を向上するという仮説のもとに実験を行い、もともとのcrRNAとtracrRNA全長からなるsgRNAを使用することで、編集効率が向上することを実証した。Optimized guide RNA structure for genome editing via Cas9 1 Optimized guide RNA structure for genome editing via Cas9 2
4.CRISPR/Cas9で編集し毒素で選択した細胞を体細胞核移植(SCNT)することで遺伝子改変(GM)ブタを効率的に作出
  • Sato M et al. "Efficient Generation of Somatic Cell Nuclear Transfer-Competent Porcine Cells with Mutated Alleles at Multiple Target Loci by Using CRISPR/Cas9 Combined with Targeted Toxin-Based Selection System" Int J Mol Sci. 2017 Dec 4;18(12).
  • ブタ臓器のヒト移植には、急性の血管性拒絶反応を回避するために、α-Gal エピトー プ陽性細胞を排除する必要がある。鹿児島大学、防衛医科大学校などの研究チームは今回、Cas9と、関心のある遺伝子(Genes of Interest, GoI)を標的とするsgRNAの発現プラスミド、α-Galエプトープの合成に関与するGGTA1を標的とするsgRNAの発現プラスミドをブタ細胞へ送達し、GoIとGGTA1にindelsを導入、その後、研究チームが先行研究で開発したsaporin 毒素結合 BS-I-B4 イソレクチン(IB4-SAP) との培養を介してα-Gal エピトー プ陽性細胞を選択的に細胞死へ誘導し、α-Gal エピトー プ陰性でGoI編集効率100%の細胞を獲得。24
5.AAV-CRISPR/Cas9に依るVEGFR2欠損がin vitro血管新生を阻害
  • Wu W, ~ Lei H. "AAV-CRISPR/Cas9–Mediated Depletion of VEGFR2 Blocks Angiogenesis In Vitro" Invest Ophthalmol Vis Sci. 2017 Dec 1;58(14):6082-6090.
  • ヒト網膜毛細血管内皮由来初代細胞(以下、HRECs)に、VEGFR2を標的とするsgRNAとレポーターEGPFのAAV-SpGuideとAAV-SpCas9を送達;プロモータとしてはいずれにもICAM2を使用。
  • rAAV5-CRISPR/Cas9が HRECsのVEGFR2を80%欠損させ、VEGFを介したAkt活性およびHRECsでの血管形成を阻害。
6.CRISPR/Cas9による卵巣高悪性度漿液性腺癌(ovarian high grade serous carcinoma、HGSC)モデルの作出とプラチナ感受性との相関
  • Walton JB, ~ McNeish IA. "CRISPR/Cas9-derived models of ovarian high grade serous carcinoma targeting Brca1, Pten and Nf1, and correlation with platinum sensitivity" Sci Rep. 2017 Dec 4;7(1):16827
  • 著者らは先行研究で、マウス卵巣癌細胞株ID8がHGSCで頻繁に見られる変異を帯びていなかったことから、ID8からTrp53Brca2ノックアウトした細胞株を樹立した。今回は、ID8 Trp53 -/-    に対して、HGSCにおいて高頻度で変異または欠損しているBrca1PtenおよびNf1へのCRISPR/Cas9による変異導入実験を行なった。また、Trp53, Brca2およびPtenの三重ノックアウト実験も行なった。
  • ID8 Trp53 -/-;Brca1 -/-Trp53 -/-;Brca2 -/-細胞は相同組み換え不全で、 プラチナ製剤とPARP阻害剤の双方に対する感受性がTrp53-/-よりも高まった。
  • PtenまたはNf1の欠損は、in vivoでの成長速度を増し、シスプラチン処方後の生存期間が短くなった。
7.マウス甲状腺ホルモン受容体遺伝子Thraを標的とするCRISPR/Cas9編集により、甲状腺ホルモンに対する耐性が可変のモデルマウスを作出
  • Markossian S, ~ Flamant F. "CRISPR/Cas9 editing of the mouse Thra gene produces models with variable resistance to thyroid hormone" Thyroid. 2017 Dec 5.
  • THRA変異(RTHα)に起因する甲状腺ホルモン抵抗性は遺伝子疾患である。CRISPR/Cas9ゲノム編集により、甲状腺機能低下症の表現型を示すRTHαモデルマウス5種類を作出。
8.CRISPR/Cas9によるPlasmodium falciparumの内在遺伝子タギング
  • Kuang D, ~ Dai J, Fang Q, Dai X. "Tagging to endogenous genes of Plasmodium falciparum using CRISPR/Cas9" Parasit Vectors. 2017 Dec 2;10(1):595.
  • これまでCIRSPR/Cas9を介したHDRにより、Plasmodium falciparumにおいて遺伝子ノックアウト、部位特異的変異導入およびGFPレポーター細胞株作出が実現されていた。今回、三種類の遺伝子(ck2β1, ck2αおよびstk)のC末端に市販のタグ(HAまたはHA-TY1)を付加することに成功。
9.CRISPR-Cas9による機能喪失スクリーニングからMYCN増幅神経芽細胞腫のEZH2依存性を同定
  • Chen L, ~ Stegmaier K. "CRISPR-Cas9 screen reveals a MYCN-amplified neuroblastoma dependency on EZH2" J Clin Invest. 2017 Dec 4.
  • MYCN増幅神経芽細胞腫細胞9種類とMYCN非増幅神経芽細胞腫細胞二種類を含む341種類の癌細胞株を対象に、ゲノムスケールでのCRISPR-Cas9スクリーニングを行い、神経芽細胞腫細胞に特有な必須遺伝子の同定を試み、MYCN増幅神経芽細胞腫細胞のEZH2依存性を同定。
  • MYCNはEZH2発現を直接活性化し、その結果、腫瘍抑制プログラムが不活性化され、EZH2を遺伝的あるいは薬理的に阻害すると細胞増殖が抑制される。
10.[研究資源]CRISPR/Cas9によるヒトES細胞株WA01 (H1)の遺伝子編集により、SMO遺伝子の第2エクソンにおいて40bpのホモ型欠損ヒトES細胞株(WAe001-A-16)を樹立
  • Wu E, ~ Li Y. "Generation of SMO homozygous knockout human embryonic stem cell line WAe001-A-12 using CRISPR/Cas9" Stem Cell Res. 2017 Dec 5.
11.[レビュー]癌研究におけるmiRNAs編集へのCRISPR/Cas9技術の展開
  • Aquino-Jarquin G. "Emerging Role of CRISPR/Cas9 Technology for MicroRNAs Editing in Cancer Research" Cancer Res. 2017 Dec 5
  • ゲノムワイドでのmiRNAsの機能解析とmiRNAに基づいた療法研究の戦略として、CRISPR/Cas9によるmiRNAs編集技術の特徴をレビュー;また、ウイルス以外の媒体によるCRISPR/Cas9の送達法も批評。
12.[レビュー]急展開しつつあるCRISPR技術の活用ガイド
  • Doench JG. "Am I ready for CRISPR? A user's guide to genetic screens" Nat Rev Genet. 2017 Dec 4.
  • プール型スクリーンによるゲノムワイドでの遺伝子機能解析をテーマとして、sgRNAsライブラリーに加えて、モデルとアッセイ法の最適化、および、スクリーニング実験に着手する前に行うべき思考実験を解説
13.[レビュー]タイプII-C CRISPR-Cas9の生物学、分子機構および応用
14.[コメント]CRISPR/Cas9遺伝子技術については、バイオセキュリティーからの議論も必要