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科学分野の比較的新しい論文と記事を記録しておくサイト: 主に、CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム編集, エピゲノム編集, 遺伝子治療, 分子診断/代謝工学, 合成生物学/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野) の観点から選択し、時折、タンパク質工学、情報資源・生物資源、新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症、機械学習・AIや研究公正からも選択

出典
  • "Evolution of a designed protein assembly encapsulating its own RNA genome" Butterfield GL, ~ Baker D. Nature. 2017 Dec 13.
ウイルスを利用したドラッグデリバリー
  • トマトブッシースタントウイルスのコートタンパク質二十面体構造が2.9 Åの高分解能で解かれて以来(挿入図参照)40年近く、様々なウイルスのカブシドの構造と機能が精力的に解析されてきた。その間、ウイルスゲノムを安全に格納・運搬するこの精緻なタンパク質コンテナ(protein containers)をリエンジニアから生体高分子のデリバリーに展開可能なポリペプチドを開発する試みがなされてきた。また、超好熱性真正細菌Aquifex aeolicus由来のルマジン合成酵素をE. coli内で指向性進化させることで、E. coli中で自己組織化してHIVプロテアーゼを隔離するタンパク質コンテナが開発されている。David Bakerらは今回、自身のゲノムを内包し、細胞外の複雑な生化学的環境において進化する非ウイルスタンパクコンテナをコンピュータ設計と指向性進化方によって作出した。Tomato bushy stunt virus
合成ヌクレオペプチド
  • 研究チームは先行研究でコンピュータ設計から出発して、生体高分子を格納するのに十分な大きさの2種類のタンパク質120サブユニットからなる二十面体タンパク質を作出していた。今回、この二十面体タンパク質を、自身をコードするゲノム(二種類のタンパク質サブユニットをコードするバイシストロニックなmRNAs)を内包するように再設計した。
  • 先行研究で作出した二十面体タンパク質の中でI53-47とI53-50のmRNAに対して、内側表面に正電荷を帯びた残基を導入(以下、-v1)、あるいは、牛白血病 ウイルス(BLV)由来の正電荷を帯びたTat RNA結合ペプチドをC末端に付加(以下、-Btat)し、E. coliでの発現から精製を経て、RNaseとの培養によってカブシド様合成タンパク質に内包されていないRNAを分解した後、産物をアガロースゲルへ流した。RT-qPCRとサンガーシーケンシングから、I53-50-v1とI53-50-Btatおよび、I53-47-v1とI53-47-Btatは、自身のRNAゲノムを内包していることを確認し、このRNA-タンパク質複合体を、合成ヌクレオカプシド(synthetic nucleocapsids)と命名した。
  • 合成ヌクレオカプシドの内面の電荷分布がゲノム内包効率に与える影響を見る観点から内面を構成するアミノ酸の置換実験を行い、効率が最も高いI53-50-V2を選択し、続いて、Deep Mutational Scanningを介したセレクションで、I53-50-V3に達した。さらに、改変I53-50-V3(ウイルスのグリコシル化またはペグ化を模すことを目的とした親水性60残基のペプチドの表面提示、または、外面14箇所のアミノ酸置換)をマウスに後眼窩静注し、血中での安定性を評価し、E67K変異を帯びたI53-50-V4を得た。
まとめ - I53-50-v1からの進化
  • I53-50-v2:内面の進化を経て14カブシドあたり1RNAゲノム収納;RNaseからの保護1.0%/全血から保護1.2%
  • I53-50-v3:RNase Aから保護44%/全血から保護82%
  • I53-50-v5:血中循環期間が、-v3の5分から4.5時間へ
  • 現代のウイルスは進化の過程でミニマムなゲノムでカプシドに生活環を成立させるに必要な多重な機能を持たせる形態に到達していることから、臨床に必要な特性を選択的に改変することが困難である。コンピューターによる精密な設計と柔軟な指向性進化を組み合わせた産物である合成カプシドは、ドラッグデリバリーシステム開発により適している。
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