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科学分野の比較的新しい論文と記事を記録しておくサイト: 主に、CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム編集, エピゲノム編集, 遺伝子治療, 分子診断/代謝工学, 合成生物学/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野) の観点から選択し、時折、タンパク質工学、情報資源・生物資源、新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症、機械学習・AIや研究公正からも選択

1.ALSマウスモデルの遺伝子治療
  • [出典]"In vivo genome editing improves motor function and extends survival in a mouse model of ALS" GAJ T,  Ojala DS, Ekman FK, Byrne LC, Limsirichai P, Schaffer DV. Sci Adv. 2017 Dec 20;3(12):eaar3952.
  • 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、脊髄と脳の運動ニューロンが徐々に失われていく不治で致死性の疾患であり、家族性ALSの~20%の病因が、スーパーオキシドディスムターゼ1(SOD1)遺伝子の常染色体優性遺伝性の変異である。こうした常染色体優性遺伝疾患に対して、変異遺伝子の機能を阻害するフレームシフト導入による遺伝子治療の可能性が、CRISPR-Cas9ゲノム編集システムによってもたらされた。
  • David V. SchafferらUC Berkeleyの研究チームは今回、ALSモデマウス新生仔に、G93A変異SOD1遺伝子を標的とするCRISPR-SaCas9システムをアデノ随伴ウイルス(AAV9)によって顔面静脈から注入し、血液脳関門を越えて脊髄へ送達することで、病因変異遺伝子の破壊を実現した(下図 Fig. 1)。
Fig 1 Fig 2
  • ゲノム編集の効果(コントロールと対比):腰髄と胸髄でSOD1変異遺伝子が大きく減少;運動機能改善;筋萎縮の低減;発症時期37%遅れ(Fig.2-A,B);寿命の伸び〜25%(上図 Fig.2-C,D );コリンアセチルトランスフェラーゼ陽性(ChAT+)の運動ニューロン〜50%増加(下図 Fig. 3).
Fig 3
  • 今回のCRISPR-SaCas9-AAV9システムのアストロサイトへの送達は運動ニューロンに対して低効率であり、アストロサイトにおける変異SOD1の破壊も不十分であることが示唆された。今後、SaCas9より小型のCasエフェクターを利用するなどの改良により、運動ニューロン以外の細胞においても変異SOD1の効率的破壊を目指す必要がある。
  • CRISPR-SaCas9によるゲノム編集は、C9ORF72遺伝子のGGGGCCリピート配列伸長を病因とする前頭側頭葉変性症(FTD)とALSの治療にも展開可能
  • AAV9によるCRISPR-Casシステム送達論文:"Adeno-Associated Virus-Mediated Delivery of CRISPR-Cas Systems for Genome Engineering in Mammalian Cells" Gaj T, Schaffer DV. Cold Spring Harb Protoc. 2016 Nov 1;2016(11):pdb.prot086868.
2.家族性パーキンソン病に関わるPARKINの調節因子をCRISPR-Casノックアウトスクリーンで同定し、ミトコンドリア品質管理機構の一端を明らかに
  • [出典]"Genome-wide CRISPR screen for PARKIN regulators reveals transcriptional repression as a determinant of mitophagy" Potting C, ~ Helliwella SB. PNAS. 2017 Dec 21.
  • ミトコンドリアの機能不全は、パーキンソン病含む疾患や老化の病因と見られている。パーキンソン病では、ミトコンドリアの多段階な品質管理機構を統合するE3-ユビキチンリガーゼでありPARK2遺伝子にコードされているPARKINに変異が見られる。PARKIN変異により損傷ミトコンドリアを分解・除去するマイトファジー活性が低下し、損傷ミトコンドリアが蓄積する機序により、パーキンソン病が発症することが示唆されている。
  • 酵素PINK1によりリン酸化されたユビキチン(以下、pUb)がPARKINを活性化する(下図参照)とされているが、PARKINの量の調節機構とそれがpUb蓄積に与える影響はこれまで不明であった。
Parkin
  • ノバルティス バイオメディカル研究所の研究チームは今回、 内在PARK2プロモーターによりPARKINレポータータンパク質を発現し、定常状態のPARKINのレベルがpUb蓄積の動態を支配している細胞を対象として、プール型CRISPR-Cas9ゲノムワイドノックアウトスクリーンを行い、PARKINレベルを上方制御あるいは下方制御する因子53種類を同定した。
  • また、THAP11(別名 Ronin)を含む因子の転写抑制によって内在PARKINのレベルが下方制御され、pUb蓄積が亢進することが明らかになった。
  • さらに、iNGN2を帯び1段階で機能性ニューロンに分化するヒトiPSCから、THAP11を標的とするCRSIRP/Cas9によって作出した単アレル変異型iNGN2 THAP11+/ニューロンにおいて、PARK2 mRNAとPARKINタンパク質のレベルがいずれも有意に上昇することを見出した。
3.[レビュー]CRISPR/Casシステムによる作物遺伝子改変の動向
  • [出典]"Crop genes modified using the CRISPR/Cas system" Korotkova, A.M., Gerasimova, S.V., Shumny, V.K. et al. Russ J Genet Appl Res (2017) 7: 822
  • ScopusデータベースをCRISPRと作物名で検索;88論文からイネを代表とする15種類の作物の145標的遺伝子の研究成果を集約し、品質改良研究の対象となった37遺伝子をカタログ
4.[レビュー] 出芽酵母ゲノム編集の歴史
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