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  • [出典]"Spatial reconstruction of immune niches by combining photoactivatable reporters and scRNA-seq" Medaglia C, Giladi A, Stoler-Barak L, De Giovanni M, Salame TM, Biram A, David E, Li H, Iannacone M, Shulman Z, Amit I. Science. 2017 Dec 22;358(6370):1622-1626. Published online 2017 Dec 7.
  • 細胞の機能は周囲の細胞と環境因子に左右されるが、これまでの技術では、構造が不明確かつ動的な微小環境(niche)において、細胞の空間配置と固有な遺伝子発現プログラムを包括的に解析することは困難であった。
  • イタリアUniSRとイスラエルWeizmann研究所のチームは今回、光活性化蛍光レポーター、2光子励起レーザー走査 (TPLSM) 顕微鏡、および、FACSと多重並列シングルセルRNA-seq(MARS-seq, Science 2014)を組合わせることで、微小環境における細胞および分子の構成を推定可能とするNICHE-seq法を開発し、光活性化GFP(photoactivatable GFP)を発現するPA-GFPマウスで実証実験を行った。
  • はじめに、PA-GFPマウスに 2 × 107 TdTomato+T細胞と 4 × 107 CFP+B細胞 を静注し、鼡径リンパ節(以下、リンパ節)のB細胞濾胞またはT細胞領域を820 nmで光活性化し、光活性化された領域に限りPA-GFPシグナルが発生することを、920 nmでのイメージングに加えて、FACSによる  PA-GFP+細胞の頻度測定でも確認。B細胞濾胞で全細胞の1.5%が  PA-GFP+であり、92%がB細胞、8%がT細胞であった。T細胞領域では、  PA-GFP+細胞の90%がT細胞(CD4陽性 6.7%;CD8陽性 1.3%)であり、10%がB細胞であった。
  • B細胞濾胞とT細胞領域から得た光活性化細胞3,900個をMARS-seqでシーケンシングし、クラスター解析を経て、B細胞、CD4陽性細胞およびCD8陽性細胞を含む主要な細胞クラスターを5種類同定し、B細胞濾胞とT細胞領域の構成について、FACSの結果と整合する結果を得た。
  • 光活性化を加えなかった同一マウスのリンパ節との比較も行った。非活性化リンパ節由来細胞487個をMARS-seqし光活性化リンパ節由来細胞と比較した結果、光活性化によって、B細胞濾胞においてB細胞が2倍になり、CD4陽性/CD8陽性T細胞が低減し、T細胞領域ではB細胞が低減し、CD4陽性/CD8陽性T細胞が増加することを見出した。また、この比較実験から、光活性化が遺伝子発現プロファイルに影響しないことも見出した。これらの結果は、異なるマウスモデルにおいても再現された。
  • 次に、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)をフットパッドに注入し、ウイルスのチャレンジによる微小環境の変動を見た。ウイルス感染後72時間、8,100細胞から、B細胞、CD4陽性細胞、CD8陽性細胞、NK細胞および樹状細胞(DC)および炎症性単球を含む主要な細胞クラスターを7種類同定した。単球とDCは主としてT細胞領域に局在化し、そこでの炎症性単球は特異的に、抗ウイルスパスウエイに関与する遺伝子を発現していた。
  • さらに、二次リンパ組織である脾臓を対象とするNICHE-seq解析も試み、細胞クラスター16種類を同定した。この中に、B細胞とT細胞のサブセット、ミエロイド細胞、プラズマ細胞およびNK細胞を含むクラスターが存在した。これらと、脾臓全体からの3,071免疫細胞との比較を経て、多くの細胞種が特定の微小環境に極めて特異的であることを見出した。例えば、制御性T細胞(Treg)はT細胞領域に局在かつ Foxp3, Cd4, Icos およびFolr4を高発現し、辺縁帯(marginal zone:白脾髄と赤脾髄の境界層)は、辺縁帯特有の遺伝子発現プロファイルを帯びたマクロファージを含むさまざまなミエロイド細胞からなる複雑な構成をしていた。脾臓についても、LCMV静注によるウイルス感染の影響を解析し、辺縁帯、B細胞濾胞およびT細胞領域の各領域に特異的な変動が起こることを見出した。
  • メラノーマ細胞を対象とするNICHE-seq解析も行い、細胞外マトリックスの構造が互いに異なる微小環境のミエロイド細胞の構成が、それぞれに異なることも見出した。例えば、直線状のコラーゲン繊維の領域に炎症性単球が局在し、形状が崩れたコラーゲン繊維の領域に腫瘍随伴マクロファージ(Tumor-associated macrophage, TAM)が局在していた。

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