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科学分野の比較的新しい論文と記事を記録しておくサイト: 主に、CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム編集, エピゲノム編集, 遺伝子治療, 分子診断/代謝工学, 合成生物学/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野) の観点から選択し、時折、タンパク質工学、情報資源・生物資源、新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症、機械学習・AIや研究公正からも選択

1.NLRP3インフラマソームの形成阻害
  • [出典]"NLRP3 is activated in Alzheimer´s disease and contributes to pathology in APP/PS1 mice" Heneka MT, ~ Latz E, Golenbock DT. Nature. 2013 Jan 31; 493(7434): 674–678. Epub 2012 Dec 19.
  • アルツハイマー病(AD)の特徴であるアミロイドβペプチド(Aβ)の沈着(老人斑)が、ミクログリアの活性化を介して脳に神経炎症を引き起こすことが報告されていた。事実、AβによるミクログリアにおけるNLRP3インフラマソームの活性化が、インターロイキン-1βの成熟化さらに下流の炎症応答を誘導する。
  • Michael T. Henekarらは、軽度認知障害(MCI)患者およびのAD患者の脳において、インフラマソームの構成因子である活性型カスパーゼ-1の発現が著しく亢進することを見出した。
  • また、ヒトADのマウスモデルAPP/PS1において、Nlrp3またはCasp1を欠損させると、ADの病態が軽減され、カスパーゼ-1とインターロイキン-1βの活性が抑制され、加えて、Aβクリアランスが向上することも見出した。
  • さらに、NLRP3インフラマソーム欠損によって、ミクログリアがM1型(傷害性・炎症性)からM2型(保護性・抗炎症性)に偏り、マウスモデルにおけるAβ沈着を低減することも見出し、NLRP3/カスパーゼ-1軸がADの病因の一つであり、NLRP3インフラマソーム阻害がAD療法候補であることを示唆した。
2.インフラマソーム模式図(参考)

ASC speck
  • 自然免疫は下等生物から高等生物にいたるまで共通して保存された生体防御機構であり,多数のパターン認識受容体が自然免疫応答において中心的な役割を担う.NLRP3,AIM2,NLRC4などのパターン認識受容体は,刺激となる特定の因子(アゴニスト)を認識すると構造変化を起こしてASCやカスパーゼ1などのタンパク質と会合し,インフラマソームとよばれるタンパク質複合体を形成する(CC 表示 2.1 日本
3.ASCスペックの形成阻害
  • [出典]"Microglia-derived ASC specks cross- seed amyloid-β in Alzheimer’s disease" Venegas C, ~ Heneka MT. Nature. 2017 Dec 21;552:355-361.
  • Michael T. Henekaらは今回、Aβの沈着の刺激を受けたミクログリアが、インフラマソームの構成因子の一つであるASCの複合体ASCスペックを放出し、ASCスペックがAβ凝集体と相互作用してAβの凝集・沈着を亢進することを見出した。
  • ASCスペックとAβを混合させたin vitro実験にて、ASCスペックの量に応じてAβがより急速に凝集し、ASCガAβ凝集体に包含された。
  • APP/PS1マウスモデルin vivoでASCを除去すると。脳へのAβ沈着が減少し、病態も改善した。また、老齢APP/PS1マウスの脳抽出物を若年マウスの脳へ移植すると発生するAβ沈着が、ASC欠損若年マウスの脳では発生しなかった。また、ASC欠損老齢マウス由来の脳抽出物よる移植後Aβ沈着は低レベルになった。
  • さらに、ASC結合を阻害する抗体を利用すると、in vitro実験でのASCスペックによるAβ凝集の亢進が抑制され、移植実験でのAβ沈着も抑制された。
  • 以上のことから、ASCスペックがAβの沈着を亢進する因子であることが、ADモデルマウスAPP/PS1において、確定され、ASCスペックの形成を標的とするAD療法の可能性が示唆された。
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