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(構造生命科学ニュースウオッチ2016/03/23から転載)

  1. [プレビュー] Cas9を改変して新奇なPAMを認識させる:Virginijus Šikšnys(Vilnius University,)
    • Cas9変異体が新奇なPAM配列を認識する機構解明をテーマとするMolecular Cell 3月17日号掲載の濡木研究室の平野清一等の短報と、チューリッヒ大学のC. Anders, K. BargstenならびにM. Jinek共著短報を、V. Šikšnysがプレビュー. 
      [CRISPR_BIO 注] V. Šikšnysは、2011年7月にStreptococcus thermophilus のCRISPR/Cas9システムがE. coli に獲得免疫機能をもたらすことを報告したCRISPR/Cas9の機構研究の先駆者の一人.
    • 野生型SpCas9は、そのPAM interaction (PI)ドメインのArg1333ならびにArg1335と、PAMのグアニン(G)との間のbidentate型水素結合によって、5’-NGG-3’PAMを認識・結合する.
    • 2つの短報はいずれも結晶構造解析の結果に基づいて、SpCas9の変異体が5’-NGG-3’と異なるPAMに結合する機構は、インデュースフィット(induced-fit)によることを明らかにした.
    • Cas9のアミノ酸変異は、Cas9-PAM複合体の全体構造を変えないが、DNAの骨格を僅かに歪ませることで、野生型SpCas9のPIドメインのアミノ酸残基とPAMのヌクレオチドとの間の水素結合とファンデルワールス相互作用を繋ぎ直す(rewiring).
    • 例えば、EQR(D1135E/R1335Q/T1337R)変異体とVRER(D1135V/G1218R/R1335E/T1337R)変異体は、新たにArg1337を介した相互作用が出現することで、それぞれ、5’-NGNG-3’と5’-NGCG-3’のPAMを認識可能になる.Arg1337は部分的に溶媒に露出することで、新奇なPAMの4番目のグアニンと結合可能になっている.
    • Francisella novicida Cas9においても、PIドメインを改変して、5’-YG-3’PAMを認識可能にした報告がなされている.
    • Cas9への変異導入によるPAMの拡張にあたっては、Cas9の濃度やCas9-gRNA複合体の濃度がPAM認識の特異性に与える影響の理解していく必要がある.また、1,000種類を超えるCas9オーソログの解析もPAM拡張に有効である.
  2. [Jinekらの短報] Cas9のPAM認識における構造の可塑性:Martin Jinek (U. Zurich)
    • ゲノム編集にStreptococcus pyogenes 由来Cas9(SpCas9)が活用されているが、編集可能対象が5’-NGG-3’PAMに隣接する領域に限定されている.M. Jinekらは今回、Kleinstiverらが構造情報をもとにバクテリア選択と定方向進化技術で開発したSpCas9変異体と改変PAMの組合せに注目し、その構造基盤を明らかにすることを目的として、SpCas9変異体、sgRNAとPAMを含む標的DNAとの三者複合体の結晶構造を解析した:
      • VQR(D1135V/R1335Q/T1337R)変異体 〜 5’-NGAN-3’
      • EQR(D1135E/R1335Q/T1337R)変異体 〜 5’-NGNG-3’
      • VRER(D1135V/G1218R/R1335E/T1337R)変異体 〜 5’-NGCG-3’
    • その結果、多重変異が誘導するインデュースフィットを介して、ヌクレオチドの認識とともに、DNAに結合するPAM相互作用ドメイン(PIドメイン)のコンフォメーション変化が起こり、SpCas9変異体の5’-NGG-3’以外のPAM認識が実現していることが明らかになった.
    • 今回得られた構造情報に基づいて新たな変異体QQR1(G1218R/N1286Q/I1331F/D1332K/R1333Q/R1335Q/T1337R)を作出し、TGGTまたはTAAG PAMsを含む線形のプラスミドDNAを標的とするヌクレアーゼ活性を測定した.野生型SpCas9は、TGGTを含むプラスミドを切断し、TAAGに対しては活性を示さないが、QQR1は、TAAGを含むプラスミドを切断し、TGGTに対しては活性を示さなかった.
    • PIドメインは可塑性を有しかつ安定なDNA結合プラットフォームである.

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