1.Xanthomonas albilineans タイプI-F CRISPR-CasシステムのCsy1-Csy2ヘテロ二量体とcrRNAおよび抗-CRISPRタンパク質 AcrF2との相互作用
- [出典] Hong S, Ka D, Yoon SJ, Suh N, Jeong M, Suh JY, Bae E. "CRISPR RNA and anti-CRISPR protein binding to the Xanthomonas albilineans Csy1-Csy2 heterodimer in the type I-F CRISPR-Cas system" J Biol Chem. 2018 Jan 18.
- X. albilineansのタイプI-F CRISPR-Casシステムには4種類のCasタンパク質(Cys1-4)が、crRNAとサーベイランス複合体を形成する。ソウル大学、順天郷大学校、信州大学の研究チームは今回、Csy1とCsy2のサブ複合体、crRNAとの相互作用、 およびPseudomonas aeruginosaに感染するファージ由来のAcrF2との相互作用を生化学的に解析し、AcrF2の結晶構造解析も行なった(PDB ID 5YHR (1.34 Å分解能))。
- AcrF2は、単独のCsy1あるいはCsy2と安定な複合体を形成しないが、ヘテロ二量体とは安定な複合体を形成して、I-F CRISPR-Casシステムを不活性化する。
2.デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)治療用エクソンスキッピング核酸医薬の評価に有用な細胞モデル作出
- [出典] Shimo T, Hosoki K, Nakatsuji Y, Yokota T, Obika S. "A novel human muscle cell model of Duchenne muscular dystrophy created by CRISPR/Cas9 and evaluation of antisense-mediated exon skipping" J Hum Genet. 2018 Jan 16.
- 米国FDAは2016年にデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)治療薬として初となるアンチセンス核酸医薬eteplirsenを承認した。Eteplirsen はスプライス-スイッチング-オリゴヌクレオチド(SSO)でありDMD遺伝子のエクソン51のスキップによる効用を示す。
- 大阪大学とアルバータ大学の研究チームは今回、マイナーなDMD病因欠損に対して効果的なSSOの探索も可能とするプラットフォームとして、CRISPR/Cas9によって、ヒト横紋筋肉種細胞株においてDMD遺伝子のエクソン51〜57(〜0.3 Mb)を除去した細胞モデルを開発した。
- このプラットフォームにより既報のSSOsのエクソン50スキッピング活性を、mRNAとタンパク質レベルで評価可能なことを示した。
- 本手法は、他の変異にも展開可能である。
3.脂質カプセルに収めた金ナノ粒子からのCRISPR-Cas9システム放出をレーザ照射で調節する癌療法
- [出典] Wang P, Zhang L, Zheng W, Cong L, Guo Z, Xie Y, Wang L, Tang R, Feng Q, Hamada Y, Gonda K, Hu Z, Wu X, Jiang X. ”Thermo-triggered Release of CRISPR-Cas9 System by Lipid-Encapsulated Gold Nanoparticles for Tumor Therapy” Angew Chem Int Ed Engl. 2017 Dec 28.
- CRISPR-Cas9システムの送達効率向上を目指した中国のNational Center for NanoScience and Technologyや東北大学などの研究チームの成果
- 膜融合TATペプチドで修飾した金ナノ粒子に、ヒト・メラノーマの治療標的遺伝子であるポロ様キナーゼ(Plk-1)を標的とするCas9システム(Cas9-sgPlk-1)のプラスミド(CP)を静電相互作用で凝縮させ(AuNPs/CP: ACP)し、脂質(DOTAP、DOPE、コレステロールそしてPEG2000-DSPE)での被覆(LACP)を、適切な重量比を選択することで、実現(LACPには、AuNPsが4-15個内包される)。
- LACPは腫瘍細胞に侵入し、レーザー照射により金ナノ粒子が熱源となることで温度上昇によりCP(Cas9-sgPlk-1)を細胞質内へ放出、CPはTATペプチドにより細胞核へ移動し細胞核内でTATからCas9-sgPlk-1が遊離し、Plk-1を破壊。
- ヒトメラノーマ細胞株A375とマウスメラノーマモデルにおいて、LCAPおよびLACPとレーザー照射によるPlk-1タンパク質と腫瘍量の低減を確認。A375細胞では、LACPの動態も観察。
4.[特許] 複数sgRNAを単一ベクターで送達し、3~50種類の変異を帯びた癌モデルを作出する技術に関する特許
- [出典] DELIVERY, USE AND THERAPEUTIC APPLICATIONS OF THE CRISPR-CAS SYSTEMS AND COMPOSITIONS FOR MODELING COMPETITION FO MULTIPLE CANCER MUTATIONS IN VIVO. UA2018/0010134 A1. PubDate 01/11/2018.
- Inventors: Sharp, Phillip A; Zhang, Feng; Platt, Randall Jeffrey; Chen, Sidi
- Assignee: Broad Inst; MIT
5.[特許] PAMの選択など酵母ゲノム編集用CRISPR-Casシステムに関する特許
- [出典] A CRISPR-CAS SYSTEM FOR A YEAST HOST CELL. UA 2018/0010151 A1. PubDate: 01/11/2018
- Inventor: Verwaal R, Meijrink B, Wiessenhaan N, Vonk B, Roubos JA (Echt, NL)
- Assignee: DSM IP ASSETS B.V. (Heerlen, NL)
6.初代ヒトT細胞において、KEAP1をCRISPR/Cas9で欠損させることでNRF2を活性化
- [出典] Noel S, Lee SA, Sadasivam M, Hamad ARA, HRabb. "KEAP1 Editing Using CRISPR/Cas9 for Therapeutic NRF2 Activation in Primary Human T Lymphocytes" J Immunol. 2018 Jan 19.
- 急性腎不全モデルにおいて、KEAP1欠損が酸化ストレス耐性を高めることが知られていた。JHUの研究チームは今回、ヒトT細胞(Jurkat)において、KEAP1の第2エクソンを標的とするCas9-sgRNAによって70%の効率でKEAP1を欠損させることで、NRF2転写因子の標的遺伝子(NADPH脱水素酵素キノン1(NQQ1);ヘム酸素添加酵素1(HOP1);グルタミン酸システインリガーゼ(GCLM))の発現が亢進することを見出した。
- 初代T細胞では編集効率は〜40%であったが、Jurkat細胞株と同様に、NQQ1、HOP1、GCLMの発現がそれぞれ16倍、9倍および2倍になった。また、KEAP1欠損細胞集団においてCD69陽性とIL-10陽性の細胞が増加した。
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