出典
- Sagiv-Barfi I, Czerwinski DK, Levy S, Alam IS, Mayer AT, Gambhir SS, Levy R. "Eradication of spontaneous malignancy by local immunotherapy" Sci Transl Med. 2018 Jan 31;10(426). pii: eaan4488.
In situ vaccinationの新手法:腫瘍局所への注入により全身の腫瘍退縮を促す薬剤をスクリーン
実証実験1(腫瘍移植マウスにおける全身効果)
- リンパ腫腫瘍を2箇所に移植したモデルマウス一方の腫瘍への注入が2箇所の腫瘍を縮小:90匹のマウスのうち87匹で腫瘍消滅;3匹で腫瘍が再発したが、再度注入することで腫瘍が退縮
- 乳癌、大腸癌、およびメラノーマについても同様の結果を得、in situ vaccinationは免疫システムが浸潤可能な腫瘍全てに有効なことを示唆
実証実験2(腫瘍移植マウスにおける腫瘍特異性)
- リンパ腫腫瘍を2箇所に移植したマウスの第3の部位に大腸癌細胞株注入;1箇所のリンパ腫に2剤を注入し、実証実験1と同様に2箇所のリンパ腫腫瘍がいずれも退縮した一方で、大腸癌の増殖には影響を与えないことを確認
実証実験3(腫瘍自然発生マウスにおける効果)
- 肺への転移が高頻度に起こる高度浸潤性乳管癌モデルマウス(FVB/N-Tg(MMTV-PyVT)634Mul/J)は、6~7週齢で最初の腫瘍が発生しいずれ10個の乳腺脂肪体全てに腫瘍が発生する。最初に発生した腫瘍に2剤を注入することで、腫瘍の新たな発生および肺への転移が抑制され、さらに、この癌モデルマウスの寿命も伸びた。2剤の投与後に、脾臓においてCD8陽性キラーT細胞が増殖することも確認した。
ヒトへの展開
まとめ
- 抗OX4抗体の制御性T細胞とエフェクターT細胞に対する作用機序の詳細な解析から、in situ vaccination(抗OX40抗体とTLRリガンド2剤を腫瘍局所に注入)が、局所的なNK細胞活性化、制御性T細胞阻害および腫瘍浸潤性エフェクターT細胞の活性化を介して全身での抗腫瘍免疫応答を誘導することを示唆。
- この新たなin situ vaccinationは、CAR-T療法や免疫チェックポイント阻害療法などの癌免疫療法に対して、標的タンパク質を予め特定する必要が無く、患者細胞をex situで改変・培養・増殖後に患者に注入する必要もなく、また、過剰な免疫応答を誘導する可能性が低いことから、より扱いやすく、より低コストで、副作用が最小限に止まる癌免疫療法として有望である。
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