1.[レビュー] CRISPR-Casシステムによるウイルス-宿主間相互作用の遺伝子解析
  • [出典] Gebre M, Nomburg JL, Gewurz BE. "CRISPR–Cas9 Genetic Analysis of Virus–Host Interactions" Viruses. 2018 Jan 30;10(2). pii: E55.
  • 宿主因子同定実験研究をレビュー:CRISPR基礎;NHEJを介したノックアウト;プール型スクリーン;RNAウイルス侵入・複製・拡散に関与する宿主因子スクリーン;Epstein - Barrウイルス形質転換B細胞を対象とするゲノムワイド・スクリーン(手法参考図-下図上段左 Figure 2/3;宿主因子同定例参考図-下図上段右 Figure 4);CRISPRiとCRISPRaの利用(CRISPRiによる宿主エンハンサー不活性化実験例-下図下段 Figure 7);SaCas9とSpCas9を併用する"Big Papi"による解析の特徴と難点;Cas13の利用
Virus-Host 1Virus-Host 2
Virus-Host 3

2.Streptococcus canis由来Cas9 (ScCas9)で標的可能領域を広げる
  • [出典] Chatterjee P, Jakimo N, Jacobson JM. "Divergent PAM Specificity of a Highly-Similar SpCas9 Ortholog" bioRxiv. Posted February 2, 2018.
  • UniProtを利用して、SpCas9とStreptococcus由来の全てのCas9タンパク質とのペアワイズアレイメントを行い、その中で、SpCas9と89.2%の配列類似性を有しながらも、保存性が高いREC3ドメインに正電荷を帯びた10アミノ酸が挿入されているScCas9に注目し、このアミノ酸をSpCas9三者複合体構造(PDB 4OO8)にマップし、その結果から、PAMがSpCas9と異なる配列をPAMとして認識することを期待
  • ScCas9が5’-NNGT-3’ PAMに結合し標的配列を編集することをin vitroおよびHEK293T細胞の内在遺伝子にて確認
  • ScCas9とSpCas9の構造を比較しながらScCas9に独特な構造モチーフ群とPAMとして認識する配列との関係を分析した。
  • Streptococcus属におけるCas9を探索するパイプラインSearch for PAMs by ALignment Of Targets (SPAMALOT)を開発
3.CRISPR-Cpf1 gRNA活性予測精度を、深層学習(deep learning)により向上
  • [出典] Kim HK, ~ Yoon S, Kim H. "Deep learning improves prediction of CRISPR–Cpf1 guide RNA activity" Nat Biotechnol. 2018 Jan 29.
  • Acidaminococcus sp. BV3L6由来Cpf1(AsCpf1)の活性をHEK293T細胞で測定したデータ(データポイント数:実験Aで16,292;実験Bで2,963)をもとにした深層学習により、標的配列の組成にもとづくAsCpf1の活性予測アルゴリズムSeq-deepCpf1を開発し、既存の機械学習により高精度であることを示した。また、入力とする標的配列の長さとして34-bpが適切であることを見出した。
  • さらに、HEK293T細胞とHCT116細胞の内在サイトにおけるAsCpf1活性を測定し、ENCODEデータベースからのクロマチンアクセシビリティを組み合わせてDeepCpf1を開発した。DeepCpf1の予測制度はSeq-deepCpf1よりさらに向上し(実験データとのスピアマン相関係数が0.87/0.77)、第三者の実験データにもとづく検証でも高精度が裏付けられた。
  • Webサイト:DeepCpf1: Deep learning-based prediction of CRISPR-Cpf1 activity at endogenous sites
  • [先行論文] Kim HK et al. "In vivo high-throughput profiling of CRISPR-Cpf1 activity" Nat Methods. 2017 Feb;14(2):153-159. Published online 2016 Dec 19.
4.非標準的スペーサー組込により、CRISPR遺伝子座が自然発生する
  • [出典] Nivala J, Shipman SL, Church GM. "Spontaneous CRISPR loci generation in vivo by non-canonical spacer integration" Nat Microbiol. 2018 Jan 29.
  • CRISPR-Casシステムによる獲得免疫応答のアダプテーションの段階で、Cas1-Cas2によってスペーサー(外来DNA断片)がCRISPR遺伝子座に組み込まれるが、スペーサーが標準的なCRISPRアレイ以外の領域に組み込まれる現象がin vitroでは報告されている。今回、E. Coli in vivoで、本来のCRISPR遺伝子座に似た領域にスペーサーが組み込まれる(スペーサーのオフターゲット組込)ことを見出した。
  • 続いて、CRISPRデータベースとゲノム解析から、Yersinia pestisSulfolobus islandicusにおける、スペーサーのオフターゲット組込の自然発生を見出し、CRISPR遺伝子座の生成と進化の過程について新たな知見を得た。
5.CRISPR/Cas9により、均質性、再現性、有効性、製造性およびコスト面で優れた抗体部位特異的修飾を実現
  • [出典] Khoshnejad M, Brenner JS, ~ Muzykantov VR. "Molecular engineering of antibodies for site-specific covalent conjugation using CRISPR/Cas9" Sci Rep. 2018 Jan 29;8(1):1760.
  • ラット・ハイブリドーマ細胞において、CRISPR-Cas9のHDRを介して、フレキシブルなリーダー配列、ソルターゼおよびFLAGタグからなる69-bp のコンストラクトを、免疫グロブリン重鎖定常領域(CH3)のC末端に組込み;ソルターゼを介した色素分子または放射性分子の部位特異的接合を実現;抗原結合性を損なうことなくモノクローナル抗体(mAb)を遺伝的にタグ付け;化学修飾したmAbと比べて、マウス肺の標的への選択性が2倍へと向上た一方で、肝臓と脾臓への取り込みは低減した。
6.粘液細菌Myxococcus xanthusにおけるEpothilone生合成遺伝子クラスタの転写をCRISPR/dCas9により亢進
[出典] Peng R, Wang Y, Feng WW, Yue XJ, Chen JH, Hu XZ, Li ZF, Sheng DH, Zhang YM, Li YZ. "CRISPR/dCas9-mediated transcriptional improvement of the biosynthetic gene cluster for the epothilone production in Myxococcus xanthus" Microb Cell Fact. 2018 Jan 29;17(1):15.
  • Cas9のコドン最適化と、sgRNAおよび転写活性化因子の選択、dCas9発現レベル調節を経て、CRISPRaによる異種宿主における二次代謝産物の生合成経路の転写活性化を実現
7.結核菌群マイコバクテリアのCRISPR-Cas遺伝子は、オリゴリボヌクレアーゼ(Orn)様活性を介して、バクテリア特有のシグナル伝達分子bis-(3'-5')-サイクリックグアノシン一リン酸(c-di-GMP/Rv2837c)の、調節を受ける