(構造生命科学ニュースウオッチ2016/03/31から転載)
- [出典] 梅田知宙 (Umeda, T.) et al. "Rifampicin is a candidate preventive medicine against amyloid β and tau oligomer." Blood. Published online 2016 Mar 28.
- 富山貴美ら大阪市立大学、金沢大学、富山大学、ならびにノースウエスタン大学の研究チームは今回、アルツハイマー病(AD)モデルマウスにおいて、ハンセン病や結核の治療に用いられたきた抗生物質リファンピシン(リファジン®)に認知症予防効果があることを見出した。富山らはこれまでに、Aβオリゴマーを蓄積するが老人斑を形成しないアルツハイマー病(AD)モデルマウス(2010年)、タウの変異なしに神経原線維変化を形成するADモデルマウス(2014年)、過剰にリン酸化されたタウのp413Serを標的とするモノクローナル抗体(2015年)など開発してきている.
- アミロイド(Aβ)、タウおよびαシヌクレインの可溶性オリゴマーはそれぞれ、AD、タウオパチーおよびシヌクレイノパチーの病因タンパク質であるが、互いに関連し病理変化を加速する.Aβを標的とする療法は病理変化が起きてからはほとんど効果を示さないことから、これらのオリゴマーの形成を予防的に阻害する安全な経口薬を探索
- リファンピシン, クルクミン, 没食子酸エピガロカテキン, ミリセチンおよびシロイノシトールの5種類の低分子化合物を、Aβのオリゴマー形成を亢進させるE693Δ変異を持つアミロイド前駆体タンパク質 (APP) を発現している細胞によって評価したところ、リファンピシンが細胞内のAβオリゴマーの蓄積と毒性に対する最も効果的に抑制し、また、無細胞系で、アミロイド(Aβ)、タウおよびαシヌクレインのオリゴマー形成を阻害した.
- リファンピシンの経口投与(0.5/1.0g/日)の効果を、Aβオリゴマー形成モデルAPPOSKマウス、ADモデルTg2576マウスおよびタウオパチーモデルTAU609マウスにおいて検証した.リファンピシンは、いずれのモデルマウスにおいても、Aβオリゴマーの蓄積、タウの過剰なリン酸化、シナプス欠損ならびにミクログリア活性化を抑制した.その他にも、記憶力の回復(モーリス水迷路法による測定)やTAU609マウスにおけるタウの過剰なリン酸化抑制などが観察された.
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