(構造生命科学ニュースウオッチ2016/04/03から転載)
- 北風圭介(Keisuke Kitakaze)et al. "Protease-resistant modified human β-hexosaminidase B ameliorates symptoms in GM2 gangliosidosis model." J. Clin. Invest. Published online 2016 Mar 28. Corresponding author:伊藤孝司(徳島大学)
- テイ-サックス病やサンドホッフ病(SD)を含むGM2 ガングリオシドーシスは、神経変性のリソソーム病である.その病因がαサブユニットとβサブユニットのヘテロ二量体からなる酵素β-ヘキソサミニダーゼ Aの欠損にあることが知られており、この酵素を補充する療法の研究開発が行なわれている.
- 研究チームは今回、ヒト・ヘキソサミニダーゼのβサブユニット(HexB)のGM2結合ループ近傍に、GM2 ガングリオシドを分解する活性とプロテアーゼ抵抗性を付与するαサブユニットからのアミノ酸配列を結合させたmod2Bを作出し、mod2BがGM2 ガングリオシドーシスの脳脊髄液酵素置換療法に有望であり、遺伝子治療へと展開すべきであることを示した.
- [実験方法]
- 改変酵素modBに対応するHEXBヒトcDNAをCHO細胞株で過剰発現させ、産生されたmodBと、GM2ガングリオシド活性化タンパク質(GM2A)との結合ならびにGM2分解活性をin vivo 測定.
- 基質の蛍光標識に加えて、酸性pH下でも活性化可能な蛍光プローブを採用して、組換え酵素が酸性環境の後期エンドソーム/リソソームへと輸送される過程を観察可能に.
- イメージ質量分析法を利用して、GM2、アシアロ-GM2 (GA2) ならびに脂質のビス(モノアシルグリセロ)リン酸(BMP)を同定.
- サンドホッフ病モデルマウスの脳室内に注入したHexBは脳内に広がり、視床下部、海馬ならびに小脳を含む脳内に蓄積していたGM2、GA2ならびにBMPを低減し、また、モデルマウスの運動機能障害を改善し、寿命も伸ばした.
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