(構造生命科学ニュースウオッチ2016/04/03から転載)

  • [出典] "UCSF Research Suggests New Model for Cancer Metastasis." Nicholas Weiler UCSF News. 2016 Mar 16. ; "Visualization of immediate immune responses to pioneer metastatic cells in the lung." Mark B. Headley et al. Nature. 2016 Mar 24;531(7595):513-7. Published online 20156 Mar 16.
  • Matthew F. Krummel (UCSF)らは今回、蛍光タンパク質ZsGreenで標識したマウスメラノーマ細胞B16F10(B16ZsGreen)を血中循環腫瘍細胞(circulating tumour cells: CTC)としてマウス血中に注入し、肺組織が呼吸により数mm変位するにもかかわらず、改良型2光子顕微鏡によって、CTCと免疫細胞の動態をリアルタイムで観察することに成功した.その報告が10本のビデオとともにNature 3月24日号に掲載された(YouTube公開ビデオ(BGM付)はこちら).
  • CTCは血中を循環し肺毛細血管に到達後数秒肺毛細血管に止まり、数分で微小な粒子(microparticles)を放出し始めた.微粒子の大きさは直径0.5〜25μm(平均直径5μm)とこれまでに報告されていた原発腫瘍由来のエクソームよりもはるかに大きかった.微粒子放出はB16ZsGreenを注入後8時間に渡り繰り返された.
  • ミエロイド細胞については、CTCからの微粒子を取り込む異なるサブセットの波(wave)が観察された.
    • 早期に応答した単球やマクロファージは、微粒子を取り込むと表現型が変化し、腫瘍細胞とともに肺毛細血管から肺間質に移動・蓄積し、腫瘍細胞が生存・増殖する環境を用意するに至る.
    • 一方で、少数ではあるが比較的遅く応答した樹状細胞は、微粒子を取り込んだ後、リンパ節に移行し、リンパ節において肺に移行して転移コロニーを攻撃する免疫細胞を活性化した.
  • 樹状細胞を活性化し、腫瘍に対する応答のバランスを抗腫瘍性へと大きく傾けることが、原発腫瘍に対しても転移癌に対しても有効な療法となると考えられる.
  • [注] 今回観察に利用された顕微鏡は、Nature Methods 論文 "Stabilized imaging of immune surveillance in the mouse lung"で発表していたlung intravital microscopyLIVM)改良型