# 2018-02-23 初回投稿日
# 2019-12-22 改訂: DETECTRとSHERLOCKの模式図として、Addgeneの関連ブログの図を編集し下図に追加
比較図
DETECTR (DNA endonuclease targeted CRISPR trans reporter)
  • Chen JS, Ma E, Harrington LB, Da Costa M, Tian X, Palefsky JM, Doudna JA. "CRISPR-Cas12a target binding unleashes indiscriminate single-stranded DNase activity" Science. 2018 Apr 27;360(6387):436-439. Published online2018 Feb 15.(以下の2項は、crisp_bio記事CRISPRメモ_2018/02/19冒頭のDETECTR紹介テキストに準拠)
  • Cas12a(旧 Cpf1)は、CRISPR-Cas9と同様に、RNAにガイドされて標的dsDNAに結合し切断する。
  • Doudnaチームは今回、Lachnospiraceae bacterium由来Cas12a(LbCas12a)が標的dsDNA切断に加えて、同時に、ssDNAを非選択的に完全に分解する (コラテラル切断)ssDNase活性を発揮することを明らかにした。このssDNaseはヒト細胞内のDNAはほとんど二重螺旋構造をとっていることから、ヒトゲノム編集に与える影響は限定的である。
  • 研究チームは、消光状態の蛍光ssDNAレポータをLbCas12aのコラテラル切断の対象とすることで、標的を増幅する仕組みを工夫した。さらに、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅 (RPA)を介した標的DNA増幅を組み合わせることで、超高感度なDNA検出法"DNA Endonuclease Targeted CRISPR Trans Reporter (DETECTR)"を開発し、パピローマウイルス(HPV)非感染者、子宮頸癌の病因であるHPVのタイプ16とHPVタイプ18のどちらか、あるいは双方に感染している患者由来のサンプルを対象とした実証実験において、HPV L1遺伝子超可変ループVを標的とするLbCas12a-crRNAにより、それぞれのタイプをアトモル濃度の感度で同定可能なことを示した。
SHERLOCK (Specific High Sensitivity Enzymatic Reporter UnLOCKing)
紹介ビデオ SHERLOCK: A CRISPR Tool to Detect Disease (3m20s) - YouTube

[先行論文] Gootenberg JS, ~ Collins JJ, Zhang F. "Nucleic acid detection with CRISPR-Cas13a/C2c2" Science. 2017 Apr 28;356(6336):438-442. Published online 2017 Apr 13.
  • RNAにガイドされRNAを標的とするCRISPRエフェクターCas13a(旧 C2c2)は、標的認識時に、無差別にリボヌークレアーゼ(RNase)活性 (RNAのコラテラル切断/collateral effect)を発揮するするという特徴を備えている。
  • SHERLOCKでは、消光状態の蛍光ssRNAレポータをCas13aのコラテラル切断の対象とする。検出標的であるdsDNAまたはRNAを、それぞれ、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)、またはRT-RPAでcDNAに変換した後に、いずれもT7 RNAポリメラーゼでRNAに転写し、Cas13aによるコラテラル切断により発生するレポータssRNAからの蛍光を検出する。
[SHERLOCKv2 論文] Gootenberg JS, Abudayyeh OO, Kellner MJ, Joung J, Collins JJ, Zhang F. "Multiplexed and portable nucleic acid detection platform with Cas13, Cas12a, and Csm6" Science. 2018 Apr 27;360(6387):439-444. Published online 2018 Feb 15.
  • オリジナルのSHERLOCKからの強化点:1) ジヌクレオチド切断スクリーンから選別した互いに直交するCRISPRエフェクター4種類(LwaCas13a, PsmCas13b, CcaCas13b, AsCas12a (Cas...のプレフィックスは由来微生物種の略号))を組み合わせ、それぞれに対応する4種類のジヌクレオチド・レポーター(AU/UC/AC/GA)を利用することで、4チャネル(FAM/TEX/Cys/HEX)同時検出へと多重化 (3種類のssRNAと1種類のdsDNAの同時検出が可能);2) 2アトモル濃度までの検出可能に;3) Cas13にCsm6を組み合わせてシグナル感度を3.5倍に;4) ラテラルフローアッセイを実現(サンプル中にストリップを漬け、バンド着色の有無で判定可能に)。
  • 実証実験:混合サンプルにおいてジカウイルスとデングウイルスのssRNAを高感度で検出;病原菌検出(S. auresus由来サーモヌクレアーゼ とP. aeruginosa アシルトランスフェラーゼ);肺癌患者のリキッドバイオプシーにおける癌変異を蛍光法およびラテラルフロー法で検出;家族性大腸腺腫症(FAP)変異を導入したHEK293FT細胞において、その正確なジェノタイピングに加えて、Feng Zhangらが開発していたREPAIRシステムによる変異修復の結果確認
  • Point-of-care testing(POCT)として実用になるCRISPR-based diagnostic(CRISPR-dx)実現へ。