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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

1.RNPs用にin vitro転写(IVT)から生成されるgRNAの5'末端に存在するトリホスフェイトが、自然免疫応答を介して細胞死を誘導する
  • "CRISPR RNAs trigger innate immune responses in human cells" Kim S, ~ Kim JS. Genome Res. 2018 Feb 22.
  • ゲノム編集対象のヒトを含む動植物細胞へ、Cas9またはCpf1タンパク質とgRNAをRNPとして送達する手法が、より高効率で高精度なゲノム編集を実現する。RNPに必要な比較的長いgRNAを大量の細胞に導入するに十分な量化学合成は効率と経費の点で非現実的なため、gRNAは通常T7やSP6といったファージRNAポリメラーゼによるIVTで構築される。
  • このファージRNAポリメラーゼで生成するgRNAの5'末端には、自然免疫応答を誘導するトリホスフェート(ppp)が存在する(下図参照)。CRISPR RNAs trigger innate immune responses
    Jin-Soo Kimの研究チームは今回、細胞質内で5'-ppp gRNAsがDDX58受容体に認識され、I型インターフェロン応答を活性化し、〜80%の細胞死を誘導することを見出した。さらに、5'-pppをホスファターゼで除去して5'-OHとしたgRNAとCas9またはCpf1とのRNPによって、ヒトCD4陽性初代T細胞の突然変異誘発率95%を達成した。この結果は、5'-OHの末端を有する化学合成gRNA が、IVT gRNAsよりも編集効率が高いとするこれまでの報告と整合する。
2.CRISPR/Cas9による成長ホルモン放出促進因子受容体(growth hormone secretagogues receptor, GHSR)ノックアウト・Wistarラットの開発と特性解析
  • "Development and initial characterization of a novel ghrelin receptor CRISPR/Cas9 knockout wistar rat model" Zillar LJ, ~ Leggio L.Int J Obes (Lond). 2018 Jan 30.
  • RNAscopeによりGHSR KOを確認し、KOラットがグレリンに応答しないことに加えて、WTラットよりも食餌量が少なく、低体重で、褐色脂肪組織が多いことを見出した。
3.[レビュー]CRISPRゲノム編集
  • "A Review of CRISPR-Based Genome Editing: Survival, Evolution and Challenges" Ahmad HI, ~ Liu X, Xie S. Curr. Issues Mol. Biol. (2018) 28: 47-68.
  • 華中農業大学の Xiangdong LiuとShengsong Xieを責任著者とする15ページのレビュー;基礎、応用(ヒト疾患;家畜;エピゲノム調節;生細胞ゲノム可視化;遺伝子発現活性化と抑制;塩基編集(BE);遺伝子ドライブ;送達法)および展望。
4.USP18のCRISPR/Cas9ノックアウトにより、iPSCから誘導したマクロファージにおいて1型インターフェロン応答性が亢進し、HIV-1複製が抑制される
  • "CRISPR/Cas9 knockout of USP18 enhances type I IFN responsiveness and restricts HIV-1 infection in macrophages" Taylor JP, Cash MN, Santostefano KE, Nakanishi M, Terada N, Wallet MA. J Leukoc Biol. 2018 Feb 13.
5.ウイルス必須遺伝子UL122/123を標的とする3重CRISPR/Cas9(3種類のsgRNAs併用)によりヒトサイトメガロウイルス(HCMV)の複製を阻害
  • "Multiplex CRISPR/Cas9 system impairs HCMV replication by excising an essential viral gene" Gergen J, ~ Halary FA, Haspot F. PLoS One. 2018 Feb 15;13(2):e0192602.
  • 1sgRNAの標的へのindels誘導は50%に止まったが、3sgRNAsの併用により最初期遺伝子の90%を破壊し、タンパク質の発現も90%低減
6.Cas9によるmiRNAとlncRNA遺伝子のサイレンシング
  • "Cas9-mediated excision of proximal DNaseI/H3K4me3 signatures confers robust silencing of microRNA and long non-coding RNA genes" PLoS One. 2018 Feb 16;13(2):e0193066.
  • 著者らは先行研究で、ほとんどの遺伝子の転写開始サイトにて、H3K4me3とDNaseI が重なることを報告していた。今回、この領域を標的とするCRISPR/Cas9編集により、ヒト単球においてノンコーディングRNA(MALAT1 lincRNA; miR-146aとmi-155 )をノックアウトし、その欠損に伴う表現型を明らかにした(下図参照)。
Cas9-mediated excision of proximal DNaseI:H3K4me3

7.免疫遺伝子のCRISPR/Cas9ノックアウトにより作出した重症複合免疫不全(SCID)ウサギの肺へのバクテリアとニューモシスチス感染実験から、このSCIDhウサギがヒト重症複合免疫不全症のモデル足り得ることを示した。
8.gRNAsとcrRNAsを多重発現させる法
  • "Engineering introns to express RNA guides for Cas9-and Cpf1-mediated multiplex genome editing" Ding D, Chen K, Chen Y, Li H, Xie K. Molecular Plant. 2018 Feb 17.
  • CaS9またはCpf1遺伝子に 多シストロン性tRNA-gRNAまたはcrRNA-crRNAアレイを包含するイントロンを融合したハイブリット1遺伝子から、内在tRNAプロセシング機構またはCpf1のRNazeを利用して、gRNAsまたはcrRNAsを同時多重生成。Cpf1とイントロン性crRNAアレイからなるハイブリッド遺伝子ベクターを利用すると、通常のCpf1ベクターよりも極めて高い効率での編集実現。
9.ヘテロクロマチンは、CRISPR-Cas9変異誘発を遅らせるが、修復結果には影響を与えない
10.Hedgehogシグナル伝達を対象とするゲノムワイドCISPRスクリーンによって毛様体の機能と繊毛病を探る
  • "A CRISPR-based screen for Hedgehog signaling provides insights into ciliary function and ciliopathies" DK Breslow, ~ Chen JK, Nachury MV. Nat Genet. 2018 Feb 19.
11.ヒト癌細胞におけるHDR効率の向上
  • “Ligase IV inhibitor SCR7 enhances gene editing directed by CRISPR–Cas9 and ssODN in human cancer cells” Hu Z, ~ Chen Y, Zhu YS. Cell Biosci. 2018 Feb 19.
  • Cas9, gRNAおよびレポーターeGFPを共発現するベクター、ssODNおよび非相同末端結合(NHEJ)の阻害剤(リガーゼⅣ阻害剤)SCR7による効率向上
12.ヒトα1アンチトリプシン欠損症(AATD)モデルマウスにおいて、CRISPR/Cas9で病因変異タンパク質遺伝子を除去することで、ATDDが改善された
  • "Therapeutic Genome Editing With CRISPR/Cas9 in a Humanized Mouse Model Ameliorates α1-antitrypsin Deficiency Phenotype" Bjursell M, ~ Bohlooly-Ya M, Wiseman, J. EBioMedicine. 2018 Feb 19.
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