1.TβRIIIを低発現するT細胞白血病/リンパ腫を標的とする低分子TJ191
  • "2-Amino-3-methylcarboxy-5-heptyl-thiophene (TJ191) is a selective anti-cancer small molecule that targets low TβRIII-expressing malignant T-cell leukemia/lymphoma cells" El-Gazzar A, ~  Sandra Liekens S (KU Leuven). Oncotarget. 2018 Jan 19; 9(5): 6259–6269.
  • 著者らは先行研究で特定の癌に作用し、他の癌や正常な繊維芽細胞と免疫細胞には影響を与えない選択的低分子TJ191(2-Amino-3-methylcarboxy-5-heptyl-thiophene)を合成していた(600倍の選択性)。今回、10種類のヒトT細胞白血病/リンパ腫と末梢血単球のパネルで、TJ191の選択性がTβRIIIの発現と逆相関することを見出し、TβRIIIのCRISPR/Cas9ノックアウトにより、TJ191耐性の細胞がTJ191に感受性を部分的に回復することを示した。
2. スペーサのオフターゲット組み込みによってin vivoでもCRISPR座位が自然発生する
  • "[News & Views]CRISPRs from scratch" Edraki A & Sontheimer EJ. Nat. Microbiol;"Spontaneous CRISPR loci generation in vivo by non-canonical spacer integration" Nivala J, Shipman SL, Church GM. Nat. Microbiol. 2018 Jan 29.
  • これまでin vitroでは、標準的CRISPRアレイの外の領域に(オフターゲット)にスペーサが挿入されることが報告されていたいが、 George M. Churchらは今回、E. coli in vivoで、Cas1-Cas2がスペーサを標準的CRISPRアレイに似た領域(オフターゲット)に挿入するが起こることを見出した。さらに、CRISPRデータベースとゲノムデータベースの解析から、Yersinia pestisSulfolobus islandicusにおいてオフターゲット・スペーサ挿入が推定される事例を同定した。
3.[特許]プレボテーラ属 とフランシセラ属由来Cpf1の改変と応用
  • "Variants of CRISPR from Prevotella and Francisella 1 (Cpf1)" US20180030425A1. 2018-02-01;Inventors J. Keith Joung, Benjamin Kleinstiver;Assignee General Hospital Corp
  • 変異導入により標的選択性を高めたLachnospiraceae bacterium ND2006 (LbCpf1)とAcidaminococcus sp. BV3L6 (AsCpf1)によるゲノム工学、エピゲノム工学、ゲノム・ターゲッティング、ゲノム編集およびin vitro診断
4.熱帯樹Parasponia andersoniiの推定共生遺伝子4種類のCRISPR/Cas9変異導入がもたらす新奇表現型
  • "CRISPR/Cas9-Mediated Mutagenesis of Four Putative Symbiosis Genes of the Tropical Tree Parasponia andersonii Reveals Novel Phenotypes" Arjan van Zeijl, ~ Geurts R et al. Front Plant Sci. Accepted 19 Feb 2018.
  • 根粒菌を介して窒素固定するParasponia andersoniiの逆遺伝学の手法として、迅速で効率的なAgrobacterium tumefaciensによる形質転換とCRISPR/Cas9による変異導入のプロトコルを確立;マメ科植物において共生に関与する遺伝子4種類をノックアウトした変異体を3ヶ月で作出し、6ヶ月で表現型を分析。
5.CRISPR/Cas9による双方向分解によるDNA切断産物
  • "Bidirectional Degradation of DNA Cleavage Products Catalyzed by CRISPR/Cas9" Stephenson AA, Raper AT, Suo Z. J Am Chem Soc. 2018 Feb 20
  • SpCas9はそのHNHとRuvC活性部位によってそれぞれ標的鎖(tDNA)と非標的鎖(ntDNA)を切断する。オハイオ州立大学の研究チームは今回、Cas9が付着末端(1塩基のオーバーハング)を生成することを見出した。また、最初の切断後に、RuvCが3'から5'に向かって、PAMから遠位の-10塩基の位置まで分解を継続すると共に、5'から3'に向かって分解し平滑末端を生成することを見出した。
6.CRISPR/Cas9により新たなタウタンパク質ノックアウトマウスを作出
  • "Generation of a New Tau Knockout (tau Δex1) Line Using CRISPR/Cas9 Genome Editing in Mice" Tan DCS et alJ Alzheimers Dis. 2018;62(2)571-578.
  • CRISPR/Cas9によって、C57Bl/6JマウスのMapt(microtubule-associated protein tau)遺伝子のイントロン-1/エクソン1を欠損させたTauΔex1モデルマウスを作出
7.In planta遺伝子ターゲッティング 
  • "True gene-targeting events by CRISPR/Cas-induced DSB repair of the PPO locus with an ectopically integrated repair template" de Pater S, Klemann BJPM, Hooykaas PJJ. Sci Rep. 2018 Feb 20;8(1):3338.
  • ライデン大学の研究チームは、CRISPR/Cas9による局所的なDSBに、あらかじめゲノムに異所的に組み込んだ修復テンプレートを組み合わせるin planta遺伝子ターゲッティングを試み、修復テンプレートをゲノムから切り出することなく遺伝子ターゲッティングが実現されることを見出した。
8.条件付きリコンビニアリングとCRISPR/Cas9を介したカウンターセレクションによるStaphylococcus aureusの効率的でスケーラブルな精密ゲノム編集
  • "Efficient and Scalable Precision Genome Editing in Staphylococcus aureus through Conditional Recombineering and CRISPR/Cas9-Mediated Counterselection" Penewit K, ~ Salipante SJ. mBio. 2018 Feb 20;9(1):e00067-18.
  • University of Washington, Seattleの研究グループが今回、S. aureusの簡便でハイスループットなゲノム操作法を、ssODNのリコンビニアリング (Recombineering: recombination-mediated genetic engineering)とCRISPR/Cas9のカウンターセレクションを組み合わせることで、実現した。
  • はじめに、Enterococcus faecalis由来のリコンビナーゼEF2132S. aureusの3種類の菌株と臨床分離株6株に効率よくssDNAオリゴヌクレオチドを相同組み換え挿入することを同定した。また驚くべきことに、S. aureusでは、リコンビナーゼを伴わないssODNのエレクトロポレーションでも組み換えが発生した。
  • 次に、温度感受性の2ベクターシステムにより条件付きリコンビニアリングとCas9カウンターセレクションを実現した。
  • この手法によって、S. aureusゲノムに点変異の導入と大規模な遺伝子欠失を帯びた組み換え体の大量生産に成功した。
  • リコンビナーゼEF2132の性能について、原論文FIG 1引用下図左参照;実験手法について、原論文FIG 2引用下図右参照
Fig. 1 Fig. 2
9.CRISPR-TRiM:CRISPR/Cas9によるショウジョウバエにおける高効率な組織特異的変異導入
  • "Highly efficient CRISPR/Cas9-mediated tissue specific mutagenesis in Drosophila" Poe AR, ~ Han C. bioRxiv. Posted February 20, 2018
  • 組織特異的エンハンサーでCas9発現をドライブ。
10.オートファジーを阻害するとフォトフリンによる光線力学的治療(PDT)に対する癌細胞の感受性が高まる
  • "Inhibition of autophagy sensitizes cancer cells to Photofrin-based photodynamic therapy" Domagala A, ~  Firczuk M. BMC Cancer. 2018 Feb 20;18(1):210.
  • PDTが誘導するオートファジーが癌細胞に細胞死をもたらすとする報告と、細胞生存が維持されるとする報告が相半ばしている(原著参考文献18)。ワルシャワ大学の研究チームは今回、単独ではオートファージの初期段階を阻害するフォトフリンが、フォトフリンPDTでは、オートファジーを活性化することを見出し、CRISPR/Cas9でATG5をノックアウトすると、HeLa細胞のPDT細胞毒性に対する感受性が高まり、細胞死が亢進し、カルボニル化タンパク質が蓄積する。
11.[コメンタリー]体細胞ゲノム編集の機が熟す
12.[レビュー]CRISPR-Cas9やオルガノイドなどの新技術による大腸癌の転移マウスモデル作出への道
  • ”The path to metastatic mouse models of colorectal caner” Romano G, Chagani S, Kwong LN. Oncogene. 2018 Feb 21
13.網膜芽細胞腫モデル作出:Xenopus tropicalisにおけるCRISPR/Cas9によるRb1ノックアウト