crisp_bio

論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

1.ゲノムワイドCRISPR-Cas9スクリーンとin vivoスクリーンにより、急性骨髄性白血病(AML)の新たな治療標的を同定
  • "Genome-wide CRISPR-Cas9 Screen Identifies Leukemia-Specific Dependence on a Pre-mRNA Metabolic Pathway Regulated by DCPS" Yamauchi T, ~ Maeda T. Cancer Cell. 2018 Feb 8.
  • スクリーンにより癌抑制遺伝子Trp53が機能しているマウスAML細胞において、mRNA脱キャッピング・スカベンジャー(mRNA decapping enzyme scavenger; DCPS)遺伝子がAML細胞生存に必須であることを同定。DCPS阻害剤RG3039はAML細胞に毒性を示すが、正常血液細胞を障害せず、DCPSの機能喪失β両アレル変異を帯びたヒトには血液学的異常が見られないことから、DCPSはAMLの治療標的。
2.[レビュー]CRISPR/Cas9によるアピコンプレクサ類寄生虫遺伝子編集の進展
  • "New and emerging uses of CRISPR/Cas9 to genetically manipulate apicomplexan parasites" Di Cristina M, Carruthers VB. Parasitology. 2018 Feb 21:1-8
  • 主としてPlasmodium sppとToxoplasma gondii研究への応用、T. gondiiCryptosporidium sppのノックアウトスクリーニング、およびアピコンプレクサ類寄生虫への応用例がまだないCRISPR/Cas9新技術をレビュー
3.Shugoshin-like 1(SGOL1)は、ソラフェニブを処方した肝細胞癌(HCC)における創薬(ドラッガブル)標的である
  • "Genome-wide CRISPR screen reveals SGOL1 as a druggable target of sorafenib-treated hepatocellular carcinoma" Sun W, ~ Zheng S. Lab Invest. 2018 Feb 21.
  • その機能損失がHCCにソラフェニブ耐性をもたらす遺伝子をゲノムワイドCRISPRスクリーンにより同定;210人のHCC患者の予後などとも整合
4.SgRNAと標的サイトのペアワイズ・ライブラリー・スクリーンによりヒト細胞におけるStaphylococcus aureus Cas9の特異性を体系的に分析
  • ”Pairwise library screen systematically interrogates Staphylococcus aureus Cas9 specificity in human cells” Tycko J, ~ Hsu PD. bioRxiv. Posted February 22, 2018.
  • スペーサー、sgRNA、ランダム化バーコード、標的配列および誤り訂正ハミング符号用配列のコンストラクとからなるライブラリーを設計;73のsgRNA グループについて、88,692組のsgRNAと標的配列のペアによるHKE293FT細胞におけるゲノム編集結果を分析;ランダム化バーコード は正しく合成されたコンストラクトの選別に利用
5.CRISPR関連タンパク質の網羅的探索
  • "Towards comprehensive characterization of CRISPR-linked genes" Shmaov SA, ~ Koonin EV. bioRxiv. Posted February 22, 2018.
  • CRISPR-Casシステムのコアになるタンパク質に加えて、バクテリアやアーケアのゲノム上にCRISPR-Casと共存するタンパク質遺伝子が散在する。NCBIのEV Kooninらは今回、新たに定義した'CRISPRicity'の計算から、これまで知られていなかった80種類のCRISPR-Cas相関遺伝子を同定した。
6.CRISPRスクリーニングにより多能性細胞から生殖細胞への細胞運命制御を追跡
  • "Tracing the Transitions from Pluripotency to Germ Cell Fate with CRISPR Screening" Hackett JA, ~ Surani AM. bioRxiv. Posted February 22, 2018.
  •  低分子のレポーターシステムとCRISPRゲノムワードスクリーニングにより、多能性細胞から始原生殖細胞様細胞(primordial germ cells(PGC)-like cells; PGCLC)への遷移の鍵を握る遺伝子(Zfp296とNr5a2)を同定
7.CRISPR-DT:CRISPR-Cpf1の編集効率と特異性を高めるgRNAsの設計
8.RNAガイド・シチジンデアミナーゼにより、カイコの一塩基/多重塩基編集(BE)を実現
  • "Programmable single and multiplex base-editing in Bombyx mori using RNA-guided cytidine deaminases" Xin Q, ~ Zhao P. bioRxiv. Posted February 22, 2018
  • DNA二本鎖切断を回避したBE技術(関連crisp-bioブログ記事)が開発されてきた。西南大学の研究チームは今回BE3を利用して、無脊椎動物のカイコにおいてC->Tの高効率変換を実現し、塩基編集を介してナンセンス変異誘導効率66.2%を達成。また、B. Mori遺伝子の96.5%にBE3の標的サイトが存在し、14箇所に対して14箇所までのBE3同時適用が可能なことも確認した。
9.CRISPR-Cas9遺伝子編集に基づきインテグリンに依存しないカポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)感染機構を同定
  • "An Integrin-Independent Kaposi's Sarcoma-Associated Herpesvirus Infection Mechanism" TerBush AA, ~ Coscoy L. bioRxiv. Posted February 22, 2018.
  • KSHV感染に関与する受容体複合体をCRISPR-Cas9により遺伝子レベルで解析
10.[Editorial]CRISPR/Cas9によるヒト胚の遺伝子編集:大きな期待と重大な懸念
11.淡水シアノバクテリアはファージの攻撃を生き延びる
  • "Incomplete selective sweeps of Microcystis population detected by the leader-end CRISPR fragment analysis in a natural pond" Kimura S, ~ Yoshida T. Front Microbiol. Accepted 22 Feb 2018
  • 有害な藻類ブルームを形成する淡水シアノバクテリアM. aeruginosaはファージに対する免疫応答システムCRISPR-Casを備えている。このM. AeruginosaのCRISPRジェノタイピング(CT: スペーサーを含むleader-end CRISPR配列の解析)の経年変化から。
12.[OPINION] CRISPR/Cas9によって、p53欠損腫瘍脂肪においてp53の'守護者'機能を回復する
  • "Restoring the p53 ‘Guardian’ Phenotype in p53-Deficient Tumor Cells with CRISPR/Cas9" Sergiu C, Diana G, Amin H, Ioana BN. Trends Biotechnol. Available online 22 February 2018.
  • CRISPR/Cas9により変異TP53遺伝子を正常遺伝子に置換し、p53タンパク質の持続的発現と 腫瘍退縮を実現する
13.エンハンサーのRNA(eRNA)が、神経遺伝子転写に必要十分である
  • "Enhancer RNAs are necessary and sufficient for activity-dependent neuronal gene transcription" Gallus NVN, ~ Day JJ. bioRixv. Posted February 23, 2018.
  • 最初期遺伝子群に属する転写因子Fosを対象とする解析:アンチセンス法によるeRNAノックダウンはFos mRNA発現を低減するが、Fos mRNAのノックダウンはeRNAレベルに影響を与えない;CRISPR-dCas9によるeRNA合成によってFos mRNA発現が更新
14.CRISPR/Cas9 RNPによるゲノム編集を介して、抗腫瘍性を高めた腫瘍抗原特異的マウスCD8陽性T細胞を樹立
  • "Generation of tumor antigen-specific murine CD8+ T cells with enhanced anti-tumor activity via highly efficient CRISPR/Cas9 genome editing" Ouchi Y, ~ Uematsu S. Int Immunol. Published 23 February 2018.
  • ゲノム編集とTCR/MHC複合体の立体構造モデリングを組み合わせて、メラノーマ腫瘍抗原gp100特異的に標的とするPD-1(-)CD8陽性T細胞を樹立
15.CRISPR/Casによる植物ゲノム編集の精度向上
  • "Potential high-frequency off-target mutagenesis induced by CRISPR/Cas9 in Arabidopsis and its prevention" Zhang Q, ~ Chen QJ. Plant Mol Biol. 2018 Feb 23
  • 中国农业大学の研究チームは、シロイヌナズナにおいて高特異性が想定されるsgRNAを使用しても、T1世代さらにT2世代で想定以上のオフターゲット編集が発生することを見出し、2種類のオフターゲット編集抑制手法を導入した:(1) mCherryカセットをCRISPR/Cas9システムに挿入することでCas9フリーの変異体を選択可能とし、T1世代以後におけるオフターゲット編集を抑制;(2) 特異性を高めたSpCas9変異体(eSPCas9; SpCas9-HF1;HF1)の利用とsgRNAにtRNAを融合することで、オフターゲット編集を抑制
16.非組み込み型レンチウイルスを利用してCas9が誘導する免疫拒絶を回避することで、免疫応答性マウスにおける形質転換細胞の増殖を実現

17.CRISPR/Cas9によるJAM-AノックアウトがGrass Carpにレトロウイルス (GCRV)感染に対する耐性をもたらす
  • "Efficient resistance to grass carp reovirus infection in JAM-A knockout cells using CRISPR/Cas9" Ma J, ~ Feng L. Fish Shellfish Immunol. Available online 23 February 2018.
  • GCRVに起因する出血性疾患はGrass Carp(Ctenopharyngodon idellusソウギョ)は中国において大きな経済的損失をもたらしている。JAM-AがGCRV感染の必須遺伝子であることを同定。
18.In vivoでのオフターゲット作用を同定可能とするVIVO法
  • "In vivo CRISPR-Cas gene editing with no detectable genome-wide off-target mutations" Akcakaya P, ~ Maresca M, Joung JK. bioRxiv. Posted February 27, 2018.
  • CRISPR-Casゲノム編集の臨床応用にはオフターゲット変異の同定が必須である。Ex vivoでの臨床応用については、GUIDE-seq(関連crisp-bioブログ記事)をはじめとする細胞アッセイにより、オフターゲット変異サイトの同定と定量化が実現しているが、in vivoでのオフターゲット同定法は実現されていない。GUIDE-seqを開発したJ. Keith Joungらは今回、in vivoでのオフターゲット作用をゲノムワイドで高感度で偏りなく同定可能とするVerification of In Vivo Off-targets (VIVO)法を開発した。VIVO法により任意のgRNAがin vivoで相当なオフターゲット変異を誘導することを確認した上で、適切にgRNAを設計することで検出可能なオフターゲット変異の誘導を抑止することが可能なことを示した。
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