[crispr_bio注]ブログ記事の文字数制限のため、本記事は多重薬理に基づくGPCR創薬の構造基盤(2/2)に続きます。
出典
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- " 5-HT2C Receptor Structures Reveal the Structural Basis of GPCR Polypharmacology" Peng Y, ~ Liu ZJ. Cell. 2018 Feb 8;172(4):719-730.e14. Published online 2018 Feb 1.;[結晶構造] 6BQG - Crystal structure of 5-HT2C in complex with ergotamine (分解能 3Å);6BQH - Crystal structure of 5-HT2C in complex with ritanserin (分解能 2.7Å)
- [PREVIEW]"To Bind or Not to Bind: Unravelling GPCR Polypharmacology" Sexton PM, Christopoulos A. Cell. 2018 Feb 8;172(4):636-638.
背景
- 市販薬を含む単独の薬剤が複数種類の標的に作用することも知られており、副作用を抑制する観点から、これまでの創薬では、単一の標的に選択的に作用する低分子や手法が探索研究されてきた。しかし、ヒト疾患は多因子性であり、高血圧や癌などの療法として、複数の薬剤を併用する療法が研究開発されその臨床応用も広がりつつある。一方で、これまで副作用抑制の観点から専ら回避すべきとされてきた当初標的以外の因子群への作用 (多重薬理/polypharmacology)を、新たな適応症の治療へと展開するドラッグリポジショニング (ブログ関連記事2017/04/22)の手法も広がりつつある。これら併用療法と多重薬理の臨床応用を加速していくためには、それらの分子機構を詳らかにしていく必要がある。
- 肥満、薬物乱用および統合失調症の治療には、GPCRsの一種である 5-HT2C受容体を含むセロトニン受容体群 (PDBj「今月の分子」; 一覧)を標的とする薬剤が有用であるが、 5-HT2C受容体に選択的な薬剤 ("magic bullets") 開発と、一群のGPCRsを標的とする明確な多重薬理プロファイルを備えた薬剤 ("magic shotguns") 開発のいずれについても、薬剤のGPCRsに対する作用機序の情報が必須である。
GPCRを標的とする創薬
- 病因が多因子・多遺伝子性の中枢神経系障害では、特定の標的に選択的に作用する効果的薬剤 ("magic bullets")の開発は困難であり成功率も低く、多重薬理に基づいて開発された薬剤 ("magic shotguns") がより効果的である。例えば、多くのGPCRsに作用する非定型抗精神病薬クロザピン (クロザリル)とアリピプラゾール (エビリファイ)、それぞれ多重なアドレナリン受容体と多重なムスカリン性アセチルコリン受容体に作用するカラゾロールとチオトロピウムである。多重薬理性を生かした理論的薬剤設計を実現すれば、多因子のヒト疾患を対象とする創薬がさらに前進する。
- 最近のμ-オピオイド受容体選択的Gタンパク質バイアス化アゴニスト作出の例にあるように、分子構造に基く薬剤設計 (SBDD: Structure-Based Drug Design)の手法によって選択的GPCR標的薬剤の薬理プロファイルが改善されてきた。SBDDによる選択的薬剤の開発では高分解能の結晶構造を基盤としてリガンド結合ポケットを同定していくが、SBDDによる多重薬理薬剤開発には、多くのGPCRsについて多様な低分子との複合体の高分解能構造を明らかにしていく必要がある。
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