- 5-HT2Cセロトニン受容体 は、5-HT2C受容体作動薬lorcaserin (Belviq)の例にあるように肥満症治療の標的であるが、うつ病、統合失調症 、薬物依存症などの疾患の治療標的でもありえる。5-HT2C受容体作動薬の開発は極めて困難であり、また、5-HT2Cと密接に相関している 5-HT2Aと5-HT2B受容体に対するオフターゲット作用を介して、それぞれ幻覚や心弁膜症を引き起こす。5-HT2C受容体にはRNA編集を介して数種類のアイソフォームが存在し、編集を受けなかったアイソフォーム (INI: non-edited isoform)は恒常的な高活性を示す。
- セロトニン受容体の構造についてはこれまでに、 5-HT1Bおよび 5-HT2B受容体とエルゴタミンとの複合体構造と、 5-HT2B受容体とLSDの複合体構造が解かれている。エルゴタミンは、LSDを含む多彩な薬剤に共通のエルゴリン骨格をコアとし、各種セロトニン受容体に加えてアドレナリン受容体、ドーパミン受容体、ヒスタミン受容体、ムスカリン受容体およびオピオイド受容体にも作用し (promicuous)、 5-HT2Bセロトニン受容体に作用して心弁膜症を誘導するなど重篤な副作用を伴う。エルゴタミンに対して、定型抗精神病薬リタンセリンは5-HT2C受容体選択的逆作動薬 (インバースアゴニスト)であり、promiscuousなクロザピンにも見られる4‐ベンジリデンピペリジン骨格をコアとしている。
参考図
- ERGの多重薬理をもたらすプロファイル:[原論文] Figure 4 Polypharmacological Profile of ERG
- 4‐ベンジリデンピペリジン骨格の多重薬理をもたらすプロファイル:[原論文] Figure 5. Polypharmacology of the 4-Benzylidenepiperidine Privileged Structure
- リタセリンの選択性をもたらすプロファイル:[原論文] Figure 6. Ritanserin’s Selectivity on 5-HT2CReceptors
- 参考図 :選択性と多重薬理のバランス [Preview] Figure 1 Toward a Structural Understanding of the Balance between Selectivity and Polypharmacology
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